このサイトでは書評、映画・演芸評から最近の出来事の批評まで幅広いジャンルのご意見をお届けしていきます。
読者の、筆者の活性化を目指す『評論の宝箱』
意見を交換し合いましょう!

 
       


2004年1月1日 VOL.1【創刊号】

■書評
・『司馬遼太郎全講演』 板井敬之
・『一票のラブレター』『少女の髪どめ』ほか 大木泰子 
・『まともな人』 片山恒雄
・『武富士対山口組』 佐藤孝靖

 

 

 

『司馬遼太郎全講演』1〜3巻を読んで
  

板井 敬之 

平成12年に、朝日新聞社から『司馬遼太郎全講演』1巻〜3巻が出版された。定価は2,800円×3=8,400円で、決して安くはない。ただ、本の中身は“値段相当”と言うか、“値段以上”である。昭和39年から平成7年までの講演が収められていて、小説執筆のために行った膨大な文献渉猟、関係者への取材、現地調査等に裏打ちされている著者の“超人的”な知識と、あたかも鳥瞰図を見るが如き歴史観に基づいた内容である。
テーマも、歴史は勿論、医学・仏教を中心とする宗教・地誌・人物月旦・文明論等と多岐に亘っている。
ここ数年、読書と言えばこの『講演集』をはじめ『この国のかたち』、『風塵抄』、『街道をゆく』、中公文庫収録の歴史に関する評論、対談、エッセイ類を繰り返し読んでいて、正しく“司馬遼”に尽きる状態にある。
これらを読んで言えるのは、私が我国の戦国期から江戸時代ついて何も知らなかったということであり、明治という時代が如何に江戸時代に支えられていたか、更には我国がなぜ昭和になって失敗したのか等が、分かり易く説明されている、ということである。
今年の10月から、『講演集』が朝日文庫として刊行されている。660円×5冊=3,300円で、ハードカバーの約3分の1の値段である。
“司馬遼”の真髄は、膨大な小説類にではなく、講演・対談・歴史エッセイにこそあるというのが、私の実感である。



2003年の映画
『一票のラブレター』『少女の髪どめ』ほか

大木 泰子 
 手帳を操ると2003年に35本の映画を見たことになっています。タイトルだけではどんな映画だったのか全く覚えていないものがあるなかで、印象の強いものをご紹介します。
 『一票のラブレター』
イランの小さな島に渡り点在する住民に総選挙の投票を呼びかける一人の女性と、彼女の運転手をつとめる島駐在の兵士との一日を淡々と描いたもの。
 もう一つは『少女の髪どめ』
アフガニスタンからの難民の少女とイラン人の男の子との話です。けがをした父親に代り、口のきけない男の子になりすましてつらい労働に励む女の子。お茶汲みの仕事を奪われて邪険にしていたが、偶然女の子と見破ってから、なんとか役に立とうとする男の子。彼は自分の身分証明書をヤミ市で売ってお金を作り、そのアフガニスタン人一家を助けようとする。女の子とは最後まで話をすることはできず、一家は突然アフガニスタンに帰国してしまいます。
 2本の映画とも画面はなんとなくざらついていて映画作りの環境など整っていないにちがいないでしょう。しかし違った世界の、はるかに困難な状況にある人達の日常の営みを静かに訴え、深く心にしみわたってくるものがあります。----この2本のイランの映画が記憶に残っています。
 
 本年一番の映画を選ぶとしたら『永遠のマリア・カラス』でしょうか。ファニーアルダンがなんとも美しく、相手役のジェレミー・アイアンズも素敵。その他には『僕の好きな先生』『鯨にのる少女』『めぐりあう時間たち』も。
 これからは『ロード・オブ・ザ・リングス』の第三部が楽しみです。





『まともな人』
著者養老孟司 出版社:中央公論新社刊 700円

片山 恒雄 
 中央公論に連載された時評を集めた本。この人の著書は、昔「脳のはなし」を読んだが、内容はともかくとして、文章が晦渋で途中で投げ出した。しかし「バカの壁」以来ことごとくあたっているので、1冊買ってみた。読み終えて印象に残ったことが2つある。1つは、著者は小学生の頃から、小さな昆虫の標本を作り続けている。そのなかにマイマイカブリというオサムシの一種の収集がある。この虫は、採集した地域によって、少しずつ特徴がある。さらにそのミトコンドリアのDNAを調べると、その昔東北地方は三つの島に分かれていたことがわかったという。小さな虫の観察から導かれる事実の大きさに驚かされる。
 もうひとつは、おなじみ教科書検定の問題である。文部科学省は、中国や韓国などに気兼ねしてか日本の近現代史について、必要以上に、自虐的な表現を強いている。むかし国定教科書に墨を塗った記憶があるが、あれとても、文部省としてまだ総括は済んでいないはずである。いったい誰が検定しているのかもわからない。次代の日本を担う子供が使う教科書の検定をお役所の誰ともわからない数人に任せて良いのか。考えようによっては、最高裁の判事の信認よりも与える影響の広汎さから考えて重いことだと思うがどうか。
 ここで字数がつきた。




武富士対山口組
著者木村勝美  出版社:イースト・プレス刊

佐藤 孝靖 
この本の発刊後まもなく、東証第一部上場の消費者金融最大手、武富士の武井会長が 警視庁に逮捕された。フリー・ジャーナリストの自宅に電話を盗聴する仕掛けを施し た容疑である。しかしこの本はその今日的話題の事件を扱ったものではない。 この本が対象としている時期は、主として1985年(昭60年)から1997年 (平成9年)までの12年間で、バブル胎動期に武富士に持ち込まれた京都駅前の崇 仁地区の再開発話に端を発した裏世界の中での暗闘である。裏世界との関係を断ち切 らないまま株式を公開しようとする武富士、それを絶好のビジネスチャンスとして襲 い掛かる闇勢力、武富士の私設用心棒と化した高級官僚OBの反社会的利己行為が、 東京地裁の公判資料を中心にして、事実のみに即して淡々と記述されている。興味本 位だけの読者を寄せ付けない重みがある。 バブル経済によって闇勢力が表の企業社会を支配下におさめ、警察OB、大蔵OB、OB政治家によって、対峙すべき公権力までが侵食されかかったという現実に、多くの国民が目を向ける必要がある。









 
バックナンバー
2012/12/15
2012/12/01
2012/11/15
2012/11/01
2012/10/15
2012/10/01
2012/09/15
2012/09/01
2012/08/15
2012/08/01
2012/07/15
2012/07/01
2012/06/15
2012/06/01
2012/05/15
2012/05/01
2012/04/15
2012/04/01
2012/03/15
2012/03/01
2012/02/15
2012/02/01
2012/01/15
2012/01/01
2011/12/15
2011/12/01
2011/11/15
2011/11/01
2011/10/15
2011/10/01
2011/09/15
2011/09/01
2011/08/15
2011/08/01
2011/07/15
2011/07/01
2011/06/15
2011/06/01
2011/05/15
2011/05/01
2011/04/15
2011/04/01
2011/03/15

2005/03/01

2004/12/01

 
 
 
 
 

Copyright(c)2001-2007 H.I.S.U.I. Corp. All right reserved.
□動作確認はMac OS9.2 + IE5.1にて行ってます。
□当サイト内コンテンツおよび画像の無断転載・流用を禁じます。





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送