■2008年5月15日号 <vol.106> 書評 ───────────── ・書評 横山 彬 『ベートーベンの交響曲』 金聖響+玉木正之著 講談社現代新書 ・【私の一言】幸前成隆 『約束を守る』 ・【私の一言】佐藤広宣 書評サイト 『千夜千冊』
2008年5月15日 VOL.106
『ベートーベンの交響曲』 著者:金聖響+玉木正之 出版社:講談社現代新書
最近、クラシックの名曲・名盤と言われるCDを買い漁っている。リタイア後に備え、今のうちに買っておこうという算段だ。つい衝動買いもしてしまう。それは、インターネット、なかんずく“AMAZON”のせいである。何故ならば、そこで、ミュージック(クラシック)を選択すれば、作曲家別・演奏家別・作曲目別等々で検索できるし、国内盤・輸入盤のどちらでも捜せる。つまり、購入が手軽にできるのだ。そして、名盤と思われるものには、結構、マニアがコメントと評価を書き込んでいる。これが、本命以外の衝動買いを誘う。さらに輸入盤の方が安いことが結構ある。これが、また「お買い得感」を与え、余分な購入を促す。かくて、体験から、IT化と経済のグローバル化は庶民の消費行動をも左右させるし、内外価格差をも打ち壊す、と痛感した。 ところで、この本は、ベートーベンの全交響曲についてその構成とどこが凄いのかを楽しく書いたものである。もともと、ベートーベンは好きな作曲家四人のうちの一人だ。ベートーベンの、そのがっしりした交響曲(たとえるならパルテノン神殿の如きか)に圧倒されていたが、最近、第7番を聴きまくり、改めてその美しさに惚れなおしていた。 そんな折、この本を書店で手に取ったのである。どういう本かは、まえがきに玉木氏が書いているのに言い尽くされているので引用しよう。 「そしてもちろん現在も、暇さえあればいろんな音楽に耳を傾けているなかで、ベートーベンの交響曲は常にわたしの傍らにあり、衝撃を与え続けてくれています。 どんな音楽に心をふるわせられても、いつか必ずベートーベンの交響曲に帰ってしまう。聴きたくなってしまう。聴くたびに新しい驚きと発見に興奮させられる。そして、よくこれほど完成された素晴らしい音楽を残してくれたものだと、繰り返しため息をつく・・・・・・。 本書は、そんなベートーベンの交響曲を、もっと楽しみたい、もっと深く味わいたい、もっとたくさん驚きたいと思った私が、そのきっかけを与えてくれるのに最もふさわしい人物である指揮者(金聖響さん)にお願いして、解説してもらったなかから生まれた一冊です。」と。 ここにも書かれているように、この本を読み「新しい発見」をするし、「完成された素晴らしさ」を再認識させられた。ベートーベンの交響曲と言えば、第3番(英雄)、第5番(運命)、第6番(田園)、第9番(合唱付)が有名であるが、それ以外の総てがこれらに勝るとも劣らぬ傑作であることを知らされる。リストが「リズムの神格化」と賞賛した第7番、ベートーベンが最も好きであったといわれる第8番を聴くと、その素晴らしさに圧倒させられる。で、いろいろな指揮者による「交響曲集」も買っている今日この頃である。 『クラシック名盤 この一枚』(知恵の森文庫 光文社)は、40名のクラシック好きが、自分の愛盤・名盤を語ったもので、クラシック音楽の深さと惚れることの美しさ(惚れた弱み)を教えてくれる。これまた、お薦めだ。
「社会生活は、約束の上に成り立っている。それがなくなったら、社会は崩壊する」(松下幸之助)。手形が不渡りになったら、その影響は大きい。「約束を守らない人間は、ゼロに等しい。」(同) 約束は、守らなければならない。 「どんなことがあっても」(釣谷又右衛門)。 「どのような理由であれ、天災地変などの不可抗力が原因でない限りは、約束を守らなかったという事実は、たとえ一つでもそれだけ自分の信用を落したことになる」(山崎武也)。 「季布に二諾なく、候贏(こうえい)は一言を重んず」(魏徴)は、有名なる古事の例。「男子は然諾を重んず」。 従って、「たやすく約束するな」(良寛自戒)。 「喜びに乗じて諾を軽くすべからず」(菜根譚)。 「軽諾は、必ず信寡(すく)なし」(老子)。 問題は、小さな約束を守れるかどうか。 「小さな約束は守らねばならない。大きな約束は、ひとりでに守らされる。」(扇谷正造)。 特に、約束の時間を守るかどうか。時間に遅れて、 「時間を無駄にさせるのは、時間を盗むにも等しい」(山崎武也)。 交通渋滞は、理由にならない。早く出ればよい。時間泥棒の常習犯は、そのうち相手にされなくなる。 言行一致は、信用の基。「言必ず信あり。行い必ず果たす」(論語)。 「その言を恥じて、その行いを過す」(同)。 「信なれば、則ち人任ず」(同)。 「人にして信なくんば、その可なるを知らざるなり」(同)。 約束は、守らなければならない。 「約束を守れない者は、辞表を出せ」(樋口廣太郎)。 余談だがソ連崩壊後あの極寒の国で半年、一年も給料不払いが続いたのに市民が持ちこたえたのは農産物を自留地で自給できたからだという。これに反しておびただしい餓死者がでた北朝鮮では自留地が極端に小さく、しかも作物を選ぶことまで干渉されている。 日本で似たことが起こるとは思わないが、失業で追い詰め窮地に陥ったときに食べ物を自給できるか否かがどのぐらい大事かが判る。
編集者松岡正剛の書評サイト「千夜千冊」を紹介します。 出色の書評集であるとともに、インターネットの世界の素晴らしさを 知らしめる業績です。 まずは、1000冊達成記念の目次である「千夜千冊目次」の アドレス http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/toc.html をクリックして、松岡正剛の書評の世界をのぞいてみて下さい。 インターネット上の書評サイト「千夜千冊」は2000年2月から執筆が開始され、 同じ著者の本は2冊以上取り上げない、同じジャンルは続けない、最新の書物も 取り上げる、などのルールで執筆されています。 松岡正剛の書評サイト「千夜千冊」は、現在も「千夜千冊遊蕩篇」というタイトルで 書き継がれていて、3月6日現在1226夜(冊)に達しています。 二週間に一冊くらいのペースで新しい本の書評が出ます。 下記アドレスをクリックして、最新の書評をお読み下さい。 http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya.html 最後に松岡正剛の略歴を掲げます。 松岡正剛(まつおかせいごう、1944年1月25日 生れ)は、日本の編集者、著述家。 京都府出身。 東京都立九段高等学校、早稲田大学文学部フランス文学科中退。 東京大学客員教授、帝塚山学院大学教授を歴任。 現在、編集工学研究所所長、ISIS編集学校校長。
世界でサイクロンや大型の地震による被害が続出しており、一方関東でも地震が頻繁に発生し、また、東京では、梅雨寒ならぬ皐月寒が続いて体調を崩す人も増えているようです。健康には一段とご留意のうえご活躍ください。 最近のわが国の政治、経済、社会いろいろな面で多くの問題や課題が発生し、何かとご意見がある方も多いと思います。書評と同様に私の一言にもどんどんご寄稿くださるようお願い申し上げます。今号のご寄稿有難う御座いました。 (HO)
2005/03/01
2004/12/01