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■2008年11月15日号 <vol.118>
書評 ─────────────

・書評  前川 彬 『わが心のホームコース』
             夏坂 健著(ゴルフダイジェスト新書)

・【私の一言】 川井 利久『ジレンマの時代』
・【私の一言】 矢野 清一『働く事の楽しさと有難さ』






2008年11月15日 VOL.118


『わが心のホームコース』
著者夏坂 健    出版社:ゴルフダイジェスト新書
 

前川 彬  

 ゴルフ愛好者で本の好きな人なら、ゴルフ随筆家であった夏坂健の名前をご存知の方も多いと思うが、私もフアンの一人として氏の著作は随分読んでいる。氏は、惜しくも8年前65歳で亡くなられたのであるが、昨年、90〜91年にゴルフ雑誌に連載された随筆が本にまとめられて刊行された。

 10数年経ったいま読んでも決して光を失っていないのは、ゴルフに関する該博な知識と読者を惹きつける見事な文章によるものであるが、全篇を通じて著者のゴルフをこよなく愛する心が感じられるのもまた大きな魅力であろう。あるときはゴルフの歴史や記録をひも解き、あるときはゴルフのロマンチシズムに浸り、またあるときはコミカルな小咄で笑いを誘うのである。

 もっとも印象に残った一篇をあげれば、アマチュアでありながら世界の4大タイトルを1年で手にした偉大なボビー・ジョーンズ(米、1902〜1971)が、奇病で車椅子の生活となり、後年英国のセントアンドリュース市で名誉市民の称号を受ける場面を画いた「われらが煌めきのボビー・ジョーンズ」である。そこでは、ボビーの人間性に対する市民の尊敬と愛惜の気持ちを詩情豊かに綴っているのであるが、著者もまた、ボビーに対して市民と同じ敬愛の情を共有しながら書いているのが読む人によく伝わってくるのである。

 この本とその続編の「スコアは天使の匙加減」を読み終わって、ゴルフとはなんと奥が深くすばらしいスポーツでありゴルフを趣味として楽しむことのできる幸せをつくづく感じる。ついでながら、この著者の別の著作で知ったアマチュアゴルファーに対する箴言を紹介させていただくが、熟年になれば少なくとも中学生ぐらいにはなっていたいと思うのである。

「スコットランドの戯れ歌」
「飛距離が自慢の幼稚園、スコアにこだわる小学生、
景色が見えて中学生、マナーに厳しい高校生、
歴史が分かって大学生、友群れ集う卒業式」





ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『ジレンマの時代』
川井 利久

 地球温暖化の問題、世界的な金融危機、イラク、アフガンの行き詰まり、世界各地域での民族紛争、国内では格差社会のひずみ拡大、政治の混迷、少子高齢化問題と対策の採りにくい迷路に世界も日本も入りこんでしまった。
この暗い時代を続けると、過去の歴史のように世界的規模でのフラストレーションが拡大して世界大戦の危機が予測される。

 世界のグローバル化によって、国家規模ではもはや対策が採りにくい状態に陥っている。

 欧州のEU化が今後の世界の行くべき方向を示している。交通、通信の迅速化、大量化によって人、物、情報の移動が容易になってもはや国家単位、民族単位の運営では行き詰まりを多発しており、対策も解決もむずかしくなって来ている。

 しかし、EUの運営もなかなか一筋縄では行っていない。歴史的にローマ帝国やハプスブルグ帝国によって統一を経験している地域ですらこうである。他の地域での統一はもっと困難であろう。だが東アジアでも、南、北アメリカ、中東、アフリカと見ていくと現実に人間の移動、物の移動、文化そしてばい菌まで早い速度で行われている。政治機構が現実に追いついていない。

 共産主義の崩壊もグローバル化によって引き金を引かれた。今回のサブプライム問題に端を発した金融危機のグローバル化はまたたく間に世界を席巻した。共産主義に勝ったと驕った資本主義も此処え来て大きな欠陥を露呈した。

 人間の自由を標榜して冷戦構造に終止符を打たせたアメリカも行き過ぎた金融資本主義の暴走をゆるしてしまった。

 第一次、第二次産業で生み出す価値をかけ離れて信用と言う欲望を肥大させてブレーキが効かなくなってしまった金融資本主義の破綻である。
自由には必ず規律が必要である。マックス・ウエーバーの名著”プロテスタンチズムと資本主義の理念”にはストイックなまでの資本主義の良心があった。

 アメリカも清教徒が国創りを始めてからは宗教的な良心のある政治が育ち、それによって日本の復興も大きな恩恵を受けた。

 それが変質し始めたのが製造業の競争力低下にともなった金融資本主義の台頭からであろう。

 アメリカ主導の世界構造は此処へきて徐々に変わって行くであろう。G8〜11などの集団指導がぎくしゃくしながら続くのだろう。

 日本はアメリカの二の舞をしないようにしなければならない。製造業の国際競争力に翳りがみえる現在日本の先行きはジレンマの時代であろう。しかしもはや戦争で解決出来る時代ではない。

 これからの50年、日本はどこに活路を見いだして進むのか、しっかりとしたビジョンを議論し、忍耐強く且つ柔軟に歩んでいかねばならない。





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『働く事の楽しさと有難さ』
矢野 清一

 私は、生来、不勉強な為に、学問的なことや理論的なことは、全く分らないし、敢えて今から勉強する気もない。ただ、七十有余才のこの歳になってからでは、遅すぎるのかも知れないが、この歳になって始めて、働く事の楽しさと有難さに漸く気付いたようなので、この一文を認めている。

 正直な所、現役で仕事をしている間は、確かにその業務が上手く出来た時とか、計画がその通り実現できた時などには、それなりの達成感も感じていたし、やり甲斐も覚えていた。然し、今、思い返してみると、その当時、仕事をすると言う事、その事自体については、必ずしも愉しいからやっていると言う事はなかったように思う。何か、義務感とか責任感があって、それが仕事をする大きなモチベーションになっていたように思っている。

 現役を引退して、毎日が日曜日の今になって、仕事に対する対価と言うものを離れて、何でも良いから、仕事をして世の中のお役に立つ事が出来ると言う事、その事に楽しさや有難さ、それに喜びを感じるようになった。と言うのも、現役時代の仕事を通じて勉強させてもらった色々な事を題材にして、時々お声を掛けてもらって、学校の非常勤講師として若い学生さん達に話をしたり、又、中小企業の経営者の方々に海外取引の事などをお話しすると言う機会があって、この仕事を心底から愉しくやらせてもらっている。

 今までお世話になってきた産業界のことを、若い世代の人たちや、別の分野の人たちにお話する事によって、些かでも業界にお返し出来ているのかなとも考えている。

 こんな考えは、執筆者の独りよがりの思い込みかも知れないが、それでも、歳をとって「粗大ごみ」になるよりは、そう思いながら、元気で何がしかの<やり甲斐>を感じつつ、毎日が送れたら、その事自体が、世の中のお役に立っていると言う事ではないかと考えている。

 序でに、若し、若い世代の人達にも理解して戴けるなら、仕事をするのは、お金の為だけではなく、仕事をする事その事が楽しい事だと分って戴けたらと有難いものだと願っている。



 OECDの新報告書「Growing Unequal?」によれば、加盟30カ国の4分の3以上で過去20年間に富裕層と貧困層の格差は拡大し、経済成長は貧困層より富裕層に恩恵をもたらしている、としています。
 カナダ、フィンランド、ドイツ、イタリア、ノルウェー、米国などの国では、富裕層と中間階級の格差も拡大し、一方、メキシコ、ギリシャ、英国などでは縮小したそうです。
 この調査は、各国の2000年代半ば(日本は03年)のジニ係数を比べたもので、日本は0.32でOECD30カ国平均(0.31)をやや上回っていますが、1990年代半ば以降の10年間では日本では格差がやや縮まったとしています。
格差問題が色々な視点から論じられ、また、選挙の争点の一つであるとも考えられる今日、この内容はどのように受け取るのでしょうか。

今号も、色々な観点からの力作のご寄稿ありがとうございました。(HO)








 
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