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■2010年2月15日号 <vol.148>

書評 ─────────────
 
・ 書評   福島 和雄 『夜明けあと』
            (星 新一著  新潮文庫)

・ 書評   石川 勝敏 『江戸庶民の数学(日本人と数)』  
            (佐藤健一著  東洋書店) 

・【私の一言】吉田 龍一 『責任を取る話』



2010年2月15日 VOL.148


『夜明けあと』
著者:星 新一   出版社:新潮文庫
福島 和雄   
 島崎藤村の名作「夜明け前」は明治になる前の江戸時代末期の信濃地方を描いた重厚な作品である。それに比べて星新一の作品は、ショート、ショートの作者らしく明治時代の文化、世相を安政5年から明治45年まで簡潔に短い文章で書いている。その一部分を紹介する。

明治2年  米人スネルは敗れた会津藩の住民をカリフオルニアに移住させ
      る。後世コメの大量生産となり日本をおびやかす。
 〃4年  東京・京都・大阪間に郵便開始、切手発行。
 〃8年  北海道に屯田兵をおく。農業開発をし有事には防衛や治安の行
      動。
 〃9年  日曜を休日、土曜を午後から休みとする。
 〃9年  浅草の宿に男女が泊まり、翌日女は出たまま帰らず、男は首の
      傷で死んでいた。高橋お伝の犯行と判明。
 〃17年 東大前の文房具店洋行帰り教授の勧めで大学ノートを販売。
 〃18年 からゆきさん増加。日本人の娼婦の店シンガポールだけで30
      軒。
 〃22年 東海道の鉄道がつながり、新橋から京都まで17時間で通行可
      能。
 〃26年 ラフカデイオ・ハーン小泉セツと結婚小泉八雲となる。
 〃 〃  オーストラリアに出稼ぎの日本人は外国人のなかで、勤勉と清
      潔の点で高い評価(ロンドン・タイムズ)
 〃29年 貴族議員は上流の人ばかりなので、歳費不要の提案否決される。
 〃30年 オトウサマ、オカアサマと呼ばせる家族が増える。以前はオト
      ッサン、オカッサンだった。
 〃32年 群馬県の伊勢崎織が好評。女性の収入が男の倍以上でカカア天
      下。
 〃 〃  年賀郵便の特別扱いを開始。元日に配達してくれる。
 〃34年 京浜電鉄の新線工事を、人力車の車引き200名集まって妨害。
 〃35年 青森県八甲田山で雪中行軍を強行して、将兵209名凍死。
 〃36年 モルガン財閥の息子日本の祇園でお雪を見て熱を上げ、大金を
      出して夫人とする。
 〃37年 三井呉服店、三越呉服店と改称米国式のデパートに。
 〃40年 義務教育の小学校4年から、6年制になる。
 〃43年 文部省小学校用唱歌を選定、「春が来た」「虫の声」など。
 〃44年 ペルーへの移民許可される。約800名砂糖耕作に従事。
 〃45年 7月30日明治天皇崩御。

  要するに明治時代は、先進国である西欧列強諸国に追いつくため、日本
は官民一体となって、坂の上の雲を目指した時代であった。また発展途上国
であった日本国民は海外に出稼ぎしてもその勤勉さは高く評価された。


『江戸庶民の数学  日本人と数』
 著者佐藤健一  出版社:東洋書店

石川 勝敏   


 著者は日本数学歴史学会会長。東京理科大学数学科卒。明治大学付属中野八王子高校教頭。

 江戸時代貨幣経済の浸透とともに、江戸時代には庶民も数学が日常生活上必要になり、そろばん学習を中心に、数学が盛んになった。

 この図書は江戸時代を中心に、その数学の内容を解説した図書である。

 日本に数学が輸入されたのは6世紀までさかのぼる。仏教、漢字とともに中国の完成された数学が入ってきた。為政者の中国制度模倣が数学にも及び結果として数学が入ってきた。飛鳥時代に官制度として、数学博士2名、数学生30名を置く制度が設けられた。9種類の教科書が指定されていた。代表的な九章算術の書の内容は、1方円 地積計算、2粟米 米の精白による減律、3衰分 比例、4商功 城、堤、溝等の工事に要する人数や日数、 角柱 角錐 円柱 円錐 円錐台の体積 6 均輸 戸数、道のりによる輸送の割当 7 乃不足 一次連立方程式 8 方程 多元一次方程式 9勾股 三平方の定理の諸問題である。内容的には江戸時代の数学とほぼ同じ項目である。

 日本の古代の数学は庶民の生活と結びついていなかったので、衰えていったが、数博士や数学生の家には教科書が大切に保存されていた。古代算数から九九と算木が残った。

 室町中期に中国から そろばんが伝わってきた。そろばんは我が国にとって画期的な計算道具であった。この簡単な計算機が日本の数学を一気に発達させた。

 我が国の人が真に数学を必要とし全国に広がりだすのは織田豊臣の時代からである。

 大阪堺の商人や藩政を預かる武士の間で経営管理のため必要であった。庶民は貨幣経済の浸透により寺子屋で読み書きと一緒にそろばんをまなぶ必要があった。九九と八算をもとにそろばんを使って計算した。教科書は吉田光由著塵劫記がよく使われた。その内容は前記の九章算術の範囲内のものだが、設問は全て日常生活の具体例で行われた。

 吉田光由は塵劫記に安住せず、さらに高度の数学を目指すべきとして新編塵劫記に十二問の遺題をあげた。十二問には解答を記載せず世の数学者に解答をもとめた(遺題)。

 遺題は十年以上経ってから榎並和澄の三両録で解答が発表された。榎並も八問の遺題を載せた。
 次々に遺題をとき遺題を載せることが流行し、次第に難問になり、数学は発達した。
 一次方程式,二次方程式および特殊な三次方程式、一元高次方程式まで解ける様になった。

 寺子屋へ通ったひとは誰でも三平方の定理(ピタゴラスの定理)は知っていた。ただ証明は簡単ではない。関孝和の弟子建部賢弘はじめ何人も直角三角形や断ち合わせなどの方法で挑戦している。

 円周率は塵劫記では3.16西暦1659年以降3.14になっている。

 松村重清は円周率の近似値として小数点以下12桁まで計算したが7桁までは現在のものと合致している。関孝和は楕円の面積の公式を導いた神社に算額を奉納することも流行した。数学は農家でも受け入れられた。村の寺子屋で満足しない人は旅する数学者に学んだ。旅の数学者については同 佐藤 健一著 和算を教え歩いた男 東洋書店刊 に詳しく紹介されている。関東一円は勿論東北地方は青森県恐山近辺から能代、酒田までまた近畿一円、山陽道、長崎、熊本、中津まで足跡を残している。

 遊び心の数学も好まれた。和算百話 佐藤 健一著 東洋書房刊に多数題紹介されている和算百話には 1 遊びもの 2図形を使った楽しみ 3 文字や数字の遊び 4商売計算 5 数の計算 6図形 7職人の計算 8農家の計算 9和算の計算の9章があるが問題は抽象的な設問ではなく 日常生活の問題 職場での問題として設問されている。

 (江戸庶民の数学)は和算全般を理解するのに適している。

 (和算を教え歩いた男)は歴史記録書としての価値は別にして、どこで誰が誰に会ったという記録であり和算の素人には楽しい本ではない。
 (和算百話)は和算を楽しんでみたい方にお薦めしたい図書である。

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『責任を取る話』
吉田 龍一

 指導者には責任があり、責任を取るのが指導者といえます。
しかも、指導者には、その自覚がなければならないし、これがなければ単純な傍観者といわれても仕方がないと思われます。

 一般的に責任の取り方としては、辞職、損害賠償、受刑(法的責任があれば対応の刑罰)等が考えられ、辞職も重要な責任の取り方の一つであるため、企業の経営者や政治家という地位の指導者の場合は、辞任して責任を取ったとするケースが間々あるように思われます。

 しかし、立派な経歴や実績を背景にその地位に選ばれた指導者の場合、単にその職務を辞めることが責任を取ったことになるのでしょうか。これは単に事態から逃げたということになりかねません。
本来、これ等の指導者の場合、その顛末を正しく説明し事態の正常化を図り、 最終的には自身の判断として 身を引くというのが責任の取り方ではないかと思います。

責任のとり方は、その人の全人格が現れるものです。

 昔は、自ら責任を取った人が多かったように思われますが、最近は、辞職どころか屁理屈を言ったりして逃げ廻っているように見受けられる人も少なくないように思えます。

 渦中にある総理や幹事長の今後の対応が注目される昨今です。

 

 

 今年もはや立春も終わり、梅の季節となりました 。
懸念されていた新型インフルエンザも多少収まったようですが、まだまだ油断はできない状況のようです。一方、今年は全般は暖冬のようですが場所によっては大雪で、寒暖の差が大きいように思われます。くれぐれも健康にご留意ください。

 所で、最近の日本は、いろいろな所で人材不足が指摘されており、特に政界や財界に日本を引っ張りうる大型指導者がいないという意見が多いように思われます。これは戦後の泰平の世を反映し国民全体がサラリーマン化したためではないでしょうか。
 最近の政界の動向を見るにつけ、責任の取れる指導者の出現が期待される昨今です。

 今号も多面的なご寄稿有難う御座いました。(HO)




 
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