この本の題名、思わず手にとってみたくなる。本書の中でも、養老孟司氏の「バカの壁」がよく売れているのはタイトルの力である、という一節がある。活字離れといわれながら、一方では出版点数は毎年記録を更新している現状では、出版社がいかに売るかにチエをしぼるのは当然の商法であろう。
ところで本書は、週刊新潮に「死に方上手」のタイトルで2003年から連載されたものを集めたもの。現在は「人間自身」と改題され、連載は続いている。スキャンダル記事が得意の週刊新潮と哲学が専門の著者とは、どうもイメージが合わない。この辺について、著者は「あとがき」にこう書いている。「まあ、この世そのもののような週刊誌上で、そんなふうなあの世からの言葉に触れるのも、ある種の人生の妙味とも言えましょうか。」
哲学というとつい身構えてしまうが、読むほどに共鳴する点が多々出てくる。ちなみに情報化社会に触れて、情報をたくさんもっていると賢くなったように思うらしいが、そんなことは大間違いである。また、情報を「知る」ことと「わかる」ということは違うことだ。携帯電話の通話料金が安くなるという広告に「その一言が、たった5円で」と書いてある。言葉は人間の価値そのもので、それを安売りする携帯電話は亡国の具である・・・。
まことに明快である。一貫しているのは、やはり人間は考えなければダメということ。しかも、「考えることに手遅れはない」。
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