このサイトでは書評、映画・演芸評から最近の出来事の批評まで幅広いジャンルのご意見をお届けしていきます。
読者の、筆者の活性化を目指す『評論の宝箱』
意見を交換し合いましょう!

 
       

 

 

■2009年3月1日号 <vol.125>
書評 ─────────────

・書評    亀山 国彦  『この金融政策が日本を救う』 
              高橋洋一著 光文社新書
・書評    森岡 義久  『炎の森へ』            
              砂原和雄著 日経出版

・【私の一言】 岡本 弘昭  『高齢ということ』






2009年3月1日 VOL.125


 

『この金融政策が日本経済を救う』
著者高橋洋一    出版社:光文社新書

亀山 国彦    

 著者は数学と経済学を専攻した元財務官僚、財政投融資にALM(資産負債の総合管理システム)を初めて導入。竹中平蔵元経済財政担当大臣の下で小泉構造改革推進のブレーンとして活躍、「埋蔵金」「政府通貨発行」論議の口火を切って注目を浴びている。米国留学時クルーグマン(ノーベル経済学賞受賞)やバーナンキ(FRB議長)に師事した。

 この本では、日本の景気が悪化し始めたのは、サブプライム・ローンが問題となる以前の2007年秋からで、その要因は2006年3月以降の量的緩和政策解除の影響がタイムラグをおいて出たことにあると指摘、日銀の政策を厳しく批判する、いわば、「金融緩和ノススメ」の書である。ゼロ金利下では、物価上昇率の予想に働きかけ、実質金利(名目金利−物価上昇率)をマイナスにすることにより投資を刺激すべきだと「インフレ目標」導入を重視している、昔、学んだ「流動性の罠」に対抗する方策である。

 円高については、世界の主要国が物価上昇率1−3%を中心に経済運営しているのに、日本だけが物価下落を続けていた結果であり、物価上昇で各国と足並みをそろえれば問題は解消すると主張している。

 非常時の緊急経済対策として、25兆円の量的緩和と、25兆円の政府通貨発行によって得た歳入を2年間の社会保険料免除に充てることを提案しているが、後者は革命的な提案であるだけに、日銀出身の経済学者等各方面の反対論も強い。通貨価値の安定を損なう、インフレをコントロールするのは難しいというのが論拠である。

 また、日銀は経済運営の目標設定について独立性を持っているのではなく、政府の設定した目標を達成手段についてのみ独立性を有しているはずであるにもかかわらず、独立した目標を有しているかのように行動し、しかも責任を問われていないと厳しく批判している。

 論旨明快、首肯するところは多いが、金融政策万能との印象を受けるのは、テーマの選択によるものだろうか。例えば、一昨年秋からの景気後退は、構造改革のペースが鈍り、わが国の予想成長率が低くなったために、もたらされた面が大きいように思う。

 国会では、金融政策についてはあまり論議が交わされているようには思えない。方策・手順を誤ると取り返しのつかない事態に陥ることもありうる重大な情勢であるだけに、経済学者も交えた、政策の妥当性が後に検証できるような形での公開のきちんとした議論がまず必要であると感じる。

 なお、元日銀審議委員中原伸之氏が同様の主張をしている。 


 

『炎の森へ』
著者砂原和雄  出版社:日経出版社

森岡 義久  

 長銀破綻を機に陶芸の世界に進んだ渡部佳文氏をモデルにしたもので、50年入行の彼とはかつて同じ部にいたこともあり個展の案内を貰うたびに顔を出してきたから、興味を持って読んだ。

 主人公の山川晃司は日本産業銀行の陶芸倶楽部に属し、「いずれ50歳になったら銀行を辞めて陶芸家になろうかな」という漠たる夢を持っており、それが47歳の時に銀行が破綻、去る者残る者、行員の間に動揺が走るなか、過労による先輩の死に会って「死んだら何もかもおしまい、生きているうちに好きなことをやろう」と、前に美術館で見た黄瀬戸に憧れ陶芸家への道を決断、妻の後押しもあって笠間の県営窯業指導所に入所する。

 以後生活は一変、本も新聞もテレビも何もない6畳間暮らしで、残された人生の時間と戦うように早朝から夜半までひたすら土を捏ねろくろを回す。「作品で食べていける人はほんの一握り」の恐怖にとらわれながら、20歳前後の生徒仲間に交じって、悪戦苦闘の日々が続き、ようやく地元の陶炎祭への出品、個展の開催、伝統工芸展に入選と、陶芸家としての一歩を進めるに至るまでの姿を描いている。

 窯業指導所は、ろくろの技術を身につける成形科が2年、釉薬科が1年、さらに希望者は色付けや焼成技術を習得できる。入所者は地元の窯元の推薦の形をとるそうで、その窯元の親父さんの言、「教えること教えることは何もねえ。土揉み3年、ろくろ7年とか言いよる。職人の仕事ば見て覚えろ。技は見て盗むもんだ」。

 また、「土に話しかけるのじゃ。通じれば、土の方で動いてくれ、手の言う通りに伸びてくれっぺ」。

 あるいは水引き後の高台削り出しにおける指導技師の言葉、「慣れると底の厚さの具合は音でわかります。音は心で聞くのです」。さらに焼成の「窯の中の温度は色を見、音を聞いて測る。温度計やゼーゲル錐は目安で、窯の中を知るには人間の目が一番確かです」。

 著者は元産経新聞社の記者、初めての小説と聞くが綿密な取材があったのであろう、工程が多く自然相手の一発勝負という陶芸の奥深さがよく伝わってくる。どうやら塗り直しのきく油彩画はその





ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『高齢化について』
岡本 弘昭

 高齢化社会では、生産年齢人口の減少による経済成長率の低下や、社会保障負担額の増加と負担の不公平性等が課題であるといわれている。
 しかし日本の現実は、高齢者は増加の一途で、厚労省の推計では、現在は総人口に占める65歳以上の人口いわゆる高齢者率は22%で、5人の働き手が1人の老人を支えているが、2055年にはこれが40.5%となり、ほぼ2人で1人を支えねばならない事態になる。このような流れであるから、高齢者を年金制度でカバーするとか養護や介護等を社会保障に頼ることができなくなる時代が到来するし、現在も既にそれに近い。これに対応するには、日本の社会のシステムそのものを変え、個人なり家族は、自分のことは自分で守る、自分の健康は自分で守るということを原理原則とせざるを得なくなるといえる。

 このためには、今後高齢者になる層は勿論、現在すでに高齢者になっている層も、自身の抜本的な意識改革を行い将来に備えておく必要がある。
 その一つは、常に自立独立をモットーに、年齢相応に生涯現役を目指すことである。これは、興味や好奇心を持って仕事やボランティア活動をすることは、脳の活性化につながり、肉体的にも精神的にもボケルことを回避することにもなるからである。 
 二つ目は、ともすれば自尊心が高く思考が偏狭な性格から社会的に不快な存在となる高齢者独特の性格を是正し、一方的、支配的な人間関係となることを避け、信頼と平和な人間関係を持つように心がけ社会と共生することが肝要である。
 三つ目は、肉体的な衰えを遅らせ、強くて若い高齢者を目指し、財団法人ぼけ予防協会が提唱している次の10カ条を守り、健康保持に努める必要がある。

1深酒とタバコはやめて規則正しい生活
2考えをまとめて表現する習慣
3生活習慣病(高血圧、肥満など)の予防、早期発見、治療
4細やかな気配りをした良い付き合い
5塩分と動物性脂肪を控えたバランスの良い食事
6転倒に気をつける
7いつも若々しくおしゃれ心を失わない
8適度に運動を行い足腰を丈夫に
9興味と関心を持つ
10くよくよせず、明るい気分で生活する

すべての物事は終わりが難しい。
人生も健康長寿で全うすることは大変なことであるが、ますますの努力を必要とする時代が到来しているといえる。






 10年一昔といいますが、前回の金融危機から10年を経た昨今、またまた金融危機が発生し景気の悪化、雇用問題等の社会問題が生じています。この時期に金融危機に絡む話題作の書評を2編頂きました。興味深く御覧いただけると思います。
 ご寄稿を有難う御座いました。(HO)








 
バックナンバー
2012/12/15
2012/12/01
2012/11/15
2012/11/01
2012/10/15
2012/10/01
2012/09/15
2012/09/01
2012/08/15
2012/08/01
2012/07/15
2012/07/01
2012/06/15
2012/06/01
2012/05/15
2012/05/01
2012/04/15
2012/04/01
2012/03/15
2012/03/01
2012/02/15
2012/02/01
2012/01/15
2012/01/01
2011/12/15
2011/12/01
2011/11/15
2011/11/01
2011/10/15
2011/10/01
2011/09/15
2011/09/01
2011/08/15
2011/08/01
2011/07/15
2011/07/01
2011/06/15
2011/06/01
2011/05/15
2011/05/01
2011/04/15
2011/04/01
2011/03/15

2005/03/01

2004/12/01

 
 
 
 
 
Copyright(c)2001-2009 H.I.S.U.I. Corp. All right reserved.
□動作確認はMac OS9.2 + IE5.1にて行ってます。
□当サイト内コンテンツおよび画像の無断転載・流用を禁じます。










SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送