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■2008年4月1日号 <vol.103>
書評 ─────────────

・書評 板井 敬之  『我、拗ね者そして生涯を閉ず』上下  本田靖春著 講談社文庫
・書評 後藤田紘二 『なげださない』           鎌田 實著 集英社

・【私の一言】岡田桂典 『シンガポール便り(15)ー政府系ファンド』


2008年4月1日 VOL.103


『我、拗ね者そして生涯を閉ず』上・下 
著者本田靖春    出版社:講談社文庫
    

板井 敬之  


 読後感を一言で言うなら、世の中には凄い人がいる、というもの。
 著者は読売新聞の社会部記者で、昭和39年から「黄色い血追放、100%献血」を目指すキャンペーンを開始、“売血”から“献血制度”への切り替えを実現させた功労者の一人である。
 上記キャンペーンの過程で山谷のドヤ街に潜入、実態調査のため自ら何度も売血した結果、使いまわしの採血針でC型肝炎に感染、これが肝ガンに進行、著者はこのガンを社会部記者だった“記念メダル”としている。キャンペーン開始後2年で献血が50%を超え、以後制度として定着するが、その抜け道により後に薬害エイズ・C型肝炎禍が発生。「“献血の鬼”こと日本赤十字/村上博士の助言を容れ、東大血清学教室に通って、血液に関して勉強しておけば良かった」と悔いている。ミドリ十字の出自とその経営、同社の内藤良一氏の経歴と人となり、厚生省をはじめとする役所の思考法についても言及、薬害エイズ・C型肝炎禍が何故起こったのかが明らかにされている。
 昭和46年に読売を退社、以後ノンフィクションライターとして数々の著作を発表、平成年12月多臓器不全により死去した。 
 闘病記と貧乏物語は嫌いとして極めて抑制的に書かれているが、最初の結婚と離婚のいきさつや病気との闘いを見ても、常人には“及びも着かない人”との思いを深くした。
以上




『なげださない』
著者鎌田 實    出版社:集英社
    

後藤田紘二  


 本書は、長野県の諏訪中央病院院長をしていたヒゲの鎌田医師の作品である。作者が、これまで出会った何人かの、さまざまな苦難に遭遇している人物の、生き様に関する感動の物語を描いたものである。
 入院中の末期癌患者に結婚を申し入れ、二人で力を合わせて癌を克服、社会復帰を果たし、転移再発しても諦めずに頑張っていく素晴らしいカップルの物語を描いたり、アルコール依存症でボロボロになった人が、どん底から這い上がっていく生き様など、人の命を、人生を決して投げ出さない生き方など、10例を、10章で著したものである。
 終末癌の強烈な痛み、苦しみを乗り越えて、コンサートを開く若き女流ジャズシンガーの実話物語などには、読者のほうが力を貰って、勇気つけられてしまう。
 チェルノブイリ原発事故後の無人村で一人、教会を建築している老人の話に驚愕しつつページをめくっていると、天下泰平下の日本での、今の自分のノホホンとした有り様を、これでよいのかと、つい反省してしまう。
 気取らない文章で中高年でも読みやすい書物であるが、若い中学・高校生向けの徳育教科書、副読本として、推薦したい本である。
                                  以上

 
 
  

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『シンガポール便り(15)ー政府系ファンド』
岡田桂典

政府系ファンドが注目を浴びています。シンガポールには外貨準備と年金資金等を運用する[GIC],政府企業を民営化してできた資金を運用する[テマセック]があります。前者の資産は約23兆円で、政府の発表によると過去25年間平均して毎年9.2%の利益を計上、後者は11兆円位を動かし、ここ2−3年の利益率は20%を越えるそうです。双方の運用の儲けが毎年2−3兆円とすると、国籍を持つ人口は日本が40倍ですから、日本が約100兆円くらい儲けているのと同じです。ため息が出ますね。国民にも各人の年金口座に毎年2.5%の利子を無税で加えてくれますから充分に恩恵が及ぶのです。
日本でも外貨準備、年金基金を使って基金を作ろうという声がありますが、まず無理でしょう。おカネの運用には世界中からプロを雇い、成功報酬は何億円でも出す、損したらクビというシビアなシステムが必要です。GICには20カ国の人がいるそうです。日本流の皆で協議、年齢序列のシステムではおカネの運用はまず不可能です。
GICはすでに日本のあちこちで不動産を買っていますが、私の実家がある福岡市のヤフードームと隣接の1000室のホテルとショッピングモールを昨年春に1000億円で買いました。何で福岡の資産かなと思っていました。
今年の2月末、阿蘇の噴火口に行くと100人位観光客がいましたが日本語が聞こえませんでした。有名温泉地の湯布院では2月の旧正月の頃は一泊5万円の宿から中級まで半分以上が韓国・中国のお客だったそうです。そして3月の新聞に由ると、ここ2年、九州へ直接来た外国人は毎年5−60%増で去年は100万人を越えたそうです。その玄関口、福岡の観光施設に目をつけたシンガポールのプロどもの読みには脱帽です。
おそらく彼等は自分のおカネは使っていません。円を借りれば利子は1%くらいでしょう。ドームにはパリーグのソフトバンクだけで年間60億円くらい払うとか。儲かりますね。何故日本の年金基金が買わないのでしょうか。たぶん、頭の中身が違うのでしょう。
今年の正月6日、日曜日、福岡のタクシーの運転手さんが怒っていました。“今日の消防の出初め式、明日の警察の観閲式はドームでやるんですよ。一回1000万円はかかるでしょう。外でやればタダなのに税金のムダ使いしやがって”私はシンガポールの所得税、福岡の固定資産税のタックスペイヤーとして、なんともこそばゆい気持ちでした。



自然界では、4月下旬は”霜止出苗”(しもやみてなえいずる)時期と言い、新たな展開ガ行われる時期を迎えます。われわれも、新年度を迎え、新たな発展を期待したいところでありますが、政治・経済・社会の現状は、いずれを見ても問題山積です。”強弩の末魯稿に入る能わず"(きょうどのすえ、ろこうにいるあたわず)と言われないように、日本社会が再度上昇機運に乗るためには、世界に視野を広げ、旧弊を打破し、理想を持ってあきらめずに努力することが必要だと思われます。今号は、こういう観点からも参考になるご寄稿を頂きました。
ご多忙中ご寄稿有難う御座いました。(HO)








 
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