■2009年7月15日号 <vol.134> 書評 ───────────── ・ 書評 片山恒雄 『朗読者』 ベルンハルト シュリンク著 松永美穂訳 新潮社 ・ 書評 矢野寛市 『画にもかけない』中川一政著 講談社 ・【私の一言】クレア恭子 『英国式革命』
2009年7月15日 VOL.134
『朗読者』 著者:ベルンハルト シュリンク 訳者:松永美穂 出版社:新潮社
『画にもかけない』 著者:中川一政 出版社:講談社
英国には成文化された憲法がない。 何事にも時間をかける‘民主主義’を生み育てたこの国で '変革‘の激震が政治面を襲い 無血大改革が実現しそうである。 発端は 5月8日から数週間にわたって日刊紙のデイリー・テレグラフが国会議員の経費請求内容を報道、これが有権者の逆鱗に触れた。 昨秋以来英国史上初の一部銀行の国有化始め金融システム維持の為多額の税金が費やされた。日本を見習った諸政策である。ブラウン首相はいち早く欧米各国へ協調を呼びかけ“英国主導’で危機回避を図った。一時 就任以来一貫して低かった支持率が上昇したものの、政策効果は一般庶民へまだまだ 届いていない。倒産・解雇・賃金凍結が続き、不動産もポンド価も下落、多くの人々には 将来の展望がつかめない暗い毎日が続いている。 そんな時 一部議員とはいえ自分達で決めた規則を都合良く解釈し 私腹を肥やしている実態が暴露された。税金は‘我々のお金’である。 微々たる年金にも容赦なく課税され、脱税には重い罰則付き。 庶民の怒りは測り知れない。 政治音痴の主人まで怒っている。 300年以上続いている不文律:コンベンションに反して野党下院議員が議長辞任要求に成功:3週間足らずで与野党を問わず、大臣の一部まで多くの議員が辞任に追い込まれた。‘規則に違反していない’‘有権者の妬みにすぎない’と反論したり、‘単なる間違いだった。’とあわてて払い戻しをする議員連。国民は議員更迭の署名集めを展開、各地で抗議集会を開催して、公僕にあるまじき行為を厳しく追及した。 各報道機関は徹底した取材を続け、テレビ・ラジオでは終日庶民を交えた討論が行われる。 政府は内閣改造、経費の取り扱いはもとより、下院の選挙体制、上院も投票式にする、憲法の成文化等変革を約束した。いつ実現するのか‘総選挙’という大鉈を光らせながら、庶民は政府と議会の動きを見つめている。
ご多忙の中 、多岐に亘る書評・一言のご寄稿をいただき大変有難うございました。 矢野さんの書評の中の中川さんの、”大切なことは画をかく時の姿勢です。”という言葉が印象的でした。 所で、陰暦五月の五月雨の頃のどんよりと暗い昼や月の出ない闇夜を五月闇というようです。梅雨時期のじっとりと湿気を帯びた重い闇というイメージですが、現在の日本の政治社会情勢も、この五月闇の状況のように思えます。 この打開には、改革が必要であり、今度の選挙は、我々選挙民の真摯な姿勢が問われるものになりそうです。(HO)
2005/03/01
2004/12/01