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2007年4月15日 VOL.80

 

 

『カラヤンとフルトベングラー』 
著者:中川右介    出版社:幻冬舎新書

横山 彬  

 「団塊の世代」が、退職を控えオーディオとクラシック音楽へ回帰しているという。また、それをターゲットとして高級なオーディオ機器が販売され始めているし、LP時代に名演奏と言われたクラシックの名盤もCDで続々と復活している(小生もそのターゲットの生贄となってしまった)。
 クラシックの名盤と言えば、指揮者として最も偉大と言われているのがフルトベングラーであろう。そして、現代人に最も有名なのがカラヤン。フルトベングラーはベルリン・フィルの首席指揮者として、ナチの時代をヒトラーに抗して生きたが、その後任を狙ったのがナチ党員でもあったカラヤンである。どちらも音楽家ではあるが、フルトベングラーが芸術家であるとしたら、カラヤンは事業家だ。
 この二人のナチ時代から終戦後におけるベルリン・フィルの首席指揮者を巡っての闘いを描いたのが、この本である。フルトベングラーには宣伝相ゲッべルスがつき、ゲッべルスに対抗する形で空軍相ゲーリングがカラヤンを推す。権力闘争の具にされ、すぐれて「政治の世界」でもある。ヒトラーはフルトベングラーの偉大さに岡惚れするが、フルトベングラーに袖にされるものの、彼の音楽家としての価値には未練がある。そこへ出世欲に駆られたカラヤンが取り入ろうとするが、格が違う。
 ヒトラーに抗したため(と言うより、それを利用した政治闘争)により、ゲシュタポ長官のヒムラーからウィーンに滞在していたフルトベングラーの逮捕命令が出される直前(既に44年の12月には、ナチスで一番の知性派の軍需相シュペーアから亡命を勧められていた)、45年1月30日早朝、彼はスイスに亡命するためウィーンから逃亡を図る。しかし、海外渡航許可書に最終責任者のサインがない。オーストリアの検問所の若い検査官はサインがないのを知っていながら、「フルトベングラーさんですね。お元気で」と言って出国を認める(本書では、スイス側が入国を許可すると書いてあるが、最大の難関はドイツ側の検問所の通過あり、この事実‐エピソード‐にこそ語る価値がある)。
 ドイツ敗戦後に、二人の非ナチ化審査が行なわれ・・・。ファシズムとナチに徹底抵抗したトスカニーニの反フルトベングラーの言動など興味は尽きない。ナチの台頭とともに亡命した人たちは、ナチ下で演奏活動をしていた者に厳しい。しかし、ドイツで残っていた(いて苦労した)一般の人達は、逆に、それなりのポジションにいて亡命できた人、亡命した人に対して心情的な反発を懐いていた。フルトベングラーは復活するが、その期間は短く、54年にフルトベングラーの死とともに、策士カラヤンはベルリン・フィルの首席指揮者になる。その後は、派手なパフォーマンスとビジネスセンス、さらに自分を脅かす者は排除し、「帝王カラヤン」として君臨、音楽界を牛耳るのだ。名誉、地位、そしてカネの総てを手に入れる(死亡時の遺産は4億ドルとさえ言われている)。
 「棺覆いて名定まる」と言われるが、フルトベングラーが死して50年余り、カラヤンが亡くなり20年弱である。すでに「カラヤン」のCDにはかつてのようなブランド力はない。音楽家として才能の勝負は「歴史によって審判される」と思うが、もう勝負はついているのではないかと感じる。
 この本は二人の音楽家の暗闘にとどまるのではなく、ナチ時代から戦後にかけての政治の世界、政治と藝術との軋轢、それを巡る様々な人間模様を描いた好著である。そして、音楽の世界も聴くだけの楽しみではなく、読む音楽の世界も面白いことを教えてくれる。



 

映画評『最近見た映画について』 

船渡 尚男  

 1「硫黄島からの手紙」

オリンピックの馬術選手だった西男爵、 しかも有数の知米派といわれた軍人が絶望的な戦いに何を思ったか、と痛切に感じるばかり。

 2「武士の一分」
藤沢周平原作、山田洋次監督作品。まさにミクロの出来事をじっくり描いた作品だが、前作の「鷹の爪」の方がドラマとしての広がり、深みがあったように思う。この作品でデビユーした  檀 れい には参ってしまった。ふくよかさと古代的な美しさを兼ね備えた女優はいないのではないか。

 3「フラガール 」
昭和40年頃閉山方向をたどる 常磐炭鉱を舞台にした面白い映画。昨年度日本ベストワン作品。社員の娘や主婦を動員してフラダンスチームを結成。ハワイアンセンターの目玉となるべく苦労のプロセスを明るく、ほろ苦くえがいている。炭鉱の坑道、トロッコ炭住など石炭、金属鉱山を担当した営業部時代を思い出す。若手の蒼井 優がはつらつとした演技とチャーミングなフラダンスを見せてくれる。坑道に出る温泉水に着眼するところは、最近の地域掘り起こし温泉のさきがけとして、その先見性は大したもの。
               
 4「地震かみなり火事おやじ」
「ふるさときゃらばん」のミュージカル。仕事を持ちながら、地域の消防団員の在り様を賑やかにみせてくれる。そこに女性による消防団が結成されきめの細かい地域活動を展開。一人住まいの老人のケアなど。この劇団作品としては近年ナンバーワンのできと思う。地域におけるじょせいの活躍はすばらしいもの在り。これなくして地域の円滑な運営は不可能と思う。

 
 
 
  
ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『シンガポール便り(11)── 日本の今後と外国人の活用』』
岡田 桂典
日本の生産年齢人口(15-65 歳)は95年をピークに、既に約300万人位減少しているという数字に驚きました。毎年の減少数は今後確実に加速します。このことは“人手不足が激化する”、“消費者も減り続ける“ということですから、経済・社会の“現在の仕組み”が成り立たなくなるという重大な事態であると思われます。膨大な国の借金をどうやって減らすのか。福祉の要員をどう確保するのか。私は外国人の大幅な活用しかないと考えます。
外国人利用の先進国、シンガポールの人口は430万人とされますが、なんとそのうち70万人は外国人です。安い賃金の仕事,3K等で人が嫌がる仕事は外国人に委ねます。国全体が儲けるためには、税金のレベルは世界最低にして「必要なカネ・会社・人材は国境を越えて集めてくる」のです。次に「消費者、お客さんを増やす為には外国から呼んでくれば良い」のです。観光・教育・医療・金融の分野等で外国人客が続々とやってきます。
さて、日本も大いに外国人を使うべきです。目的は二つです。第一に経済の供給側のコストをぐんと下げることが必要です。第二に国の経済・福利の維持・発展のために日本の資産の利益率を上げることが急務だからです。
海外競争力の維持・発展と観光など国内産業を伸ばすためにはコスト低下が必要です。また財政逼迫の現状では、福祉の分野で特にコストを下げることが必要になります。日本で働く人の数は今後減少スピードが上がるのですから両分野とも外国人を活用すれば良いのです。もっと言えば外国人の利用なしには、今後最も人手が必要な急増する介護需要等は満たされる筈がありません。
次に、財政危機の解決、経済発展のためには資産活用の効率を上げればよいのです。日本企業の資本利益率は欧米の半分くらいです。1500兆円の個人貯蓄の大部分も死んでいます。世界中の優秀な経営者、“おカネ儲けの名人”に参集してもらい活躍の場を与えれば、利子や配当は増え、株価は上がり、税制も増えて福祉費問題も解決します。“偉いと思っている方々”は目をむくでしょうが、一般庶民は“ねずみを捕る猫は白くても黒くても構わない”のです。




∴∴∴∴《編集後記》∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴

アッというまに桜は散りましたが、気温は不安定で体調を崩す人も多いようですが、皆様方にはお元気でお過ごしでしょうか。
お蔭様で、今号でこのメルマガも第80号となりました。これも偏に皆様方のご支援の賜物と心から御礼申し上げます。
4月15日は28宿によると昴で、この日は、神仏詣で・祝い事・開店に吉だそうです。その日の今号に、新たに横山彬さん、船渡尚男さんのお二人のご寄稿を得ました。有難う御座いました。今後とも宜しくお願いいたします。(HO)  








 
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