著者は慶応大学商学部教授 専門:生産性分析 これまでに「大相撲の経済学」「お寺の経済学」を上梓、経済的インセンティブがどのような社会でも働いていることを実証。
脳性マヒの子供を持つ著者は、障害者を弱者と見る当事者意識から脱し、経済学者としての冷静な視点から、関係者にしか情報のない障害者の世界を取り上げ、社会現象にひとつとして分析。
障害者も消費者=お客様であるはずだが、行政がサービスの中身を定め、無料で提供する従来型福祉の枠組みでは、様々なひずみ・非効率が生ずる。市場経済の仕組みを導入するのが効果的で、これは障害者以外の社会的弱者に対する対応策にも通ずるものだと主張する。
親離れ、子離れができないのは障害者、少子化家庭の子供と共通であるし、虐待事件に見られる親が子供を支配するという関係も同様である。
障害者には種々のカテゴリー、障害の程度があり、養護学校に通わせ、まとめて一定学習レベルの内容を教えると言う教育方法はすでに限界に達している。普通校での「落ちこぼれ」と同様、それぞれの子供の学習意欲を引き出し、特性を伸ばす教育方法が必要である。
社会保障制度、税制など「従来型会社人間」中心の柔軟性に乏しい制度は、障害者のみならずフリーター、出産育児期の女性にもマッチしていない。
日本の「駐車禁止除外指定車証」は、健常者による悪用を防ぐため、「車」を除外指定している(評者注:最近制度改正の動きあり)のに対し、アメリカでは「障害者本人」を除外指定しているので、友人の車を利用した場合など利便性が高い。多様化する社会にはあらかじめ悪用を防止する「転ばぬ先の杖」的なシステムは、そぐわないと指摘する一方、アメリカ型をスムースに運用するには、悪用を防ぐ事後的な監視機能が重要であると述べるなど首肯すべき記述が多い。
「宅急便」の生みの親、故小倉昌男氏の創業した障害者が自立して働く「スワンベーカリー」の精神と共通点が多い。
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