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2005年11月15日 VOL.46

 

 

『貧乏物語』
著者:河上肇  出版社:岩波書店 昭和22年

後藤田 紘二 
 この書物は、大正5年に大阪朝日新聞に連続掲載された社会政策論的な随筆で、小生のごとき浅学ものの論評対象とすべきものではないが、秋深き読書の好時節となり、書物らしきものとして選んでみた。
 昨今、深刻な年金問題を考えるにあたっても、貧乏退治をテーマとする本書に何かヒントがあるのではないかと期待したが、その通り1世紀前の学者の思想が、何と今日的であることかということを発見、再認識した次第である。
 本書は上、中、下の3篇で成り立つ。上篇では 貧乏とは何かを定義した上で、如何に多くの人が貧乏しているかを、当時富国といわれたイギリスの地方都市を例にあげ述べている。中篇では何故多くの人が貧乏しているのかを語り、下篇ではどうすれば貧乏を根治できるかを議論している。
 貧乏な老人を保護するために、英国では養老年金条例が、1908年に法律として成立した。一言で言えば65歳以上の高齢者には国家に向かって一定の年金を請求する権利ありと認めたこと、これがこの法律の要領である。
“人は一定の年齢に達するまで社会に対して働いたならば、歳を取って働けなくなった後は、社会から養ってもらう権利がある、という思想が、この法律によって是認されたのである。”と著者により紹介された。このことは、大正5年当時、大阪朝日新聞の読者ばかりでなく、その後の社会思想に与えた影響が、大変大きかったと思われる。
 今日と90年前とでは経済的環境があまりに違うため、陳腐化した議論もあるが、政治の第1要件は“食を足す”ところにある、即ち肉体的精神的健康を維持するに必要なパンの確保があって初めて教育道徳も盛んにすることができる、貧乏と戦う大戦争が政治に求められるといった議論は今なおまともである。
貧乏をなくすには社会組織制度を変更しなければならない。社会組織制度の改革、その方向性はともかくも、変革の必要性を強く説いている。
 “改革を止めるな”と叫ぶ今どきの政治家の方々にも、この古典を紐解くことをお薦めする。


『ひぐらし武士道「大江戸剣花帳」上下』 
著者:門田泰明  出版社:徳間書店

渡辺 仁 
「時代小説界に新風! これぞ剣客小説の醍醐味!!」

時代は、幕府官僚体制が確立したとされる徳川四代将軍家綱の世。
主人公は仕事求むの着流し素浪人宗重・・・。実は江戸幕府最初の大老に登りつめた某藩の藩主が円熟した血気満ちる頃に商家の娘を見初めて共に想い合う仲となり、そして宗重が生まれた。(母の立場は隠し妾。)
住まいは、小さな侍屋敷と比較的裕福な町民の住いが入り組むようにして混在する一角。
元は呉服商の寮(別荘)だった。
「水野」姓の幕臣が凄腕の何者かに次々と斬殺され、老中にまで暗殺の手が伸びた。
事件を探索するのは、主人公/念流皆伝の若き剣客・宗重。
やがて紀州徳川家の影がちらつき始める。
登場人物は、十手持ちの大工、同心、町人、夜鷹・・・、老中稲葉美濃守正則、柳生飛騨守宗冬、剣聖観是慈圓・・・。
○剣の動き、体さばきなど読む者の脳裏にはっきりと浮かぶほど、斬り合いのシーンなどは、圧倒的な迫力がある。
○侍社会を後方で支えている教養ある女性層にも折目正しい強い精神力/武士道が強固に息衝いていることがわかる。
○四代将軍家綱、尾張大納言光友、紀州大納言頼宣等とのさわやかな出会いも楽しい。
○時代考証もなかなか良い・・・。
ともすれば浅草寺の酸漿市が最古と思われがちだが、実は愛宕神社の方が、うんと古い・・・。等 盛り沢山・・・。
筆者の門田泰明氏は、サスペンス・スリラー、医学サスペンス等を数多く手がけてきたが、本書が初めての時代小説とは思えない読了後の満足感、爽やか感がありました。
次回の時代モノに大いに期待しています。



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『オージー便り(4)―― ハミルトン島にて』
相川 香
息子の1才の誕生日を 記念して、ハミルトン島に行ってきました。
2泊3日のオーストラリアでの初旅行です。
グレートバリアリーフはうわさ以上に素晴らしい所で
境界線がわからないくらい澄んでいる空と海。
緑のあふれた、まさに楽園!
綺麗な海で初の海水浴に挑戦しようと、砂浜に連れていってみました。
まず白い砂に興味を持ち、眺めたり触ったり時々口に入れようとしたり。。。
そして今度は波に気づき、不思議そうに触ってパシャパシャ遊びます。
水に慣れてきたと思ったら、今度は波に向かってハイハイで突進。
顔面に直撃する波を物ともせずエメラルドグリーンの海に飛び込んで行くのです。
もともと息子は警戒心が強く、公園の地面や芝生でもこわごわですぐに抱っこしてと戻ってきます。
しかし今回は夢中になって遊び、楽しくて楽しくて仕方ないという様子。
恐れを知らず波に向かって行く姿に感動しました。
美しい自然には子供も警戒心がなくなるのでしょうか。
たくましく、のびのび遊ぶ息子を見て、自然の力を身にしみて感じました。
買い物も観光もマリンスポーツも無し、自然の中でただただのんびり。
こんな贅沢な時間の過ごし方もたまにはいかがでしょう。
私もミーハー日本人観光客、やっと卒業できそうです。



 
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