時代は、幕府官僚体制が確立したとされる徳川四代将軍家綱の世。
主人公は仕事求むの着流し素浪人宗重・・・。実は江戸幕府最初の大老に登りつめた某藩の藩主が円熟した血気満ちる頃に商家の娘を見初めて共に想い合う仲となり、そして宗重が生まれた。(母の立場は隠し妾。)
住まいは、小さな侍屋敷と比較的裕福な町民の住いが入り組むようにして混在する一角。
元は呉服商の寮(別荘)だった。
「水野」姓の幕臣が凄腕の何者かに次々と斬殺され、老中にまで暗殺の手が伸びた。
事件を探索するのは、主人公/念流皆伝の若き剣客・宗重。
やがて紀州徳川家の影がちらつき始める。
登場人物は、十手持ちの大工、同心、町人、夜鷹・・・、老中稲葉美濃守正則、柳生飛騨守宗冬、剣聖観是慈圓・・・。
○剣の動き、体さばきなど読む者の脳裏にはっきりと浮かぶほど、斬り合いのシーンなどは、圧倒的な迫力がある。
○侍社会を後方で支えている教養ある女性層にも折目正しい強い精神力/武士道が強固に息衝いていることがわかる。
○四代将軍家綱、尾張大納言光友、紀州大納言頼宣等とのさわやかな出会いも楽しい。
○時代考証もなかなか良い・・・。
ともすれば浅草寺の酸漿市が最古と思われがちだが、実は愛宕神社の方が、うんと古い・・・。等 盛り沢山・・・。
筆者の門田泰明氏は、サスペンス・スリラー、医学サスペンス等を数多く手がけてきたが、本書が初めての時代小説とは思えない読了後の満足感、爽やか感がありました。
次回の時代モノに大いに期待しています。
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