この本は、本メールマガジン「評論の宝箱」を主宰している著者が新たに刊行したものである。
著者は現在「21世紀企業経営者懇話会」を主宰しているが、この書は懇話会が50回を数えたことを機に、これまでの懇話会における講師の話と氏のコメントとを集大成したものである。
経営指南書は世に掃いて捨てるほどある。その中にあってこの書がユニークであるのは、視点を社長のあり方に絞り、しかも実際に著者自身が耳で聞いた話をベースにしていることである。
日本の株式会社は約250万社と言われ、そのうち東京証券取引所に上場されている会社は2300社である。この数字が多いか少ないかはともかくとして、それだけの数の社長がいる。この中には立派な社長もいるが、無能で親の築いた会社を潰し、従業員を泣かせる者もいる。この書のサブタイトルが「企業は社長で決まる」と言うように、会社の栄枯盛衰はまさに社長によるところ大であり、従業員とその家族の運命を担っているだけに、責任は誠に大きい。「社長は、副社長の副がとれたものではない」(本書134ページ)と言うが、私も知人の社長が「たとえ副社長の3倍給料を貰っても割に合いませんねえ」と述懐していたことを思い出した。
この本の社長あるいは社長候補者への忠告は誠に具体的である。例えば「2代目社長等が自覚すべき事項」(本書109ページ以下)の中で、2代目社長は一般的に素直で、平時は円満な常識人として経営ができるが、創業者と比較した場合、何者も恐れない強靭な心が弱くないか、と指摘し、具体的な心構えを5項目挙げているが、これらはいちいち思い当たる節が多いだろう。その意味で彼らが経営を行う際に大変参考になろう。
と同時に社長ではない私にとっても人生の師として含蓄があり、啓蒙されるところが多い本であった。多くの方に読まれることを期待する所以である。
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