昨年まで防衛庁長官を務めた著者が、退任直後の今年の1月に防衛問題時事評論とも言うべき労作を発刊した。これまで、政治家の書いた本は、なにか執筆の動機に不純な物を感じて興味がもてなかったが、本書は、
1.長官退任直後で鮮度感があること
2.中身が北朝鮮問題など今日的な話題に富んでいること
3.文章が平明で判り易いこと
4.防衛庁長官の日常とはどういうものか、興味に引かれたこと
等の理由で大変面白く、一気に読んでしまった。
わが国の防衛問題に関しては右や左の議論があるのであろうが、われわれ庶民がこの種の難しい問題を考える手引書として、大変勉強になる。政治家が、とくに政府の立場にいた人が、所管事項などについて、その考え方や在任中の業績などについて書物を通じて詳しく国民に伝えておこうとする姿勢には、大変好感が持てる。
文中を通じて著者が充実感をもって任務を終え、満足げなのは、政治家としての使命感を自覚して、並々ならぬ努力をしてきた自信の顕れか、ともかく、防衛問題に関心ある人、ない人にも、一読をお薦めしたい。
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