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2007年1月1日 VOL.73

 

 

『バッテリー 1〜5巻』 
著者:あさのあつこ   出版社:角川文庫

今村 該吉 

 若い友人から「これ面白いですよ」と薦められ、「まあ、ともかく騙されたと思って1冊読んでみてくださいよ」 と念押しされたのが読書の始まりである。
 読む前は、少年少女向けの青春友情物語か、血と涙のスポーツ根性ものか、と決めてかかっていたがそうではない。
わかりやすく、すらすら読めるが、単なる児童文学の領域を超え、大人が読んでも面白い。舞台となる地方小都市の自然の描写もいいし、子供たちの会話のやり取りも含蓄があり、人生の酸いも辛いも経験した者の吐く警句さえところどころにある。
 主人公、原田巧は中学校1年生。投手としての才能は異常であり、一種の天才である。何のために野球をやるのか。チームのためでも、学校のためでもない。自分を磨くための手段でもないし、名声を得るためでもない。ただ投げたいのだ。納得できる投球をしたいのだ。
「そうだ、本気になれよ。本気で向かってこい。関係ないこと全部捨てて、おれの球だけを見ろよ」
 この態度のためにジコチュウだ、と非難され、チームメイト、監督、学校教師ともぶつかる。読者である私でさえ、「巧!。ひとこと『済みませんでした』。『これからもよろしくお願いします』と言ってしまえばいいじゃないか」 とトンと背中を押したくなる。
 読んでいるうちにイチローや中田の若い頃を思い出した。彼らも天才である。周囲に合わせて、妥協することができず、いつも摩擦を起こした。天才はストイックであり、孤独であることが宿命なのだろう。
 巧のただ一人の理解者は弟、青波だけである。病弱で繊細な弟は兄を崇拝し、いつか自分も兄のような強い投手になりたいと願っている。この弟は実に可愛く、作中の清涼剤である。
 物語は5巻、中学1年生を終えたところまでである。作者、あさのあつこは第6巻を執筆中らしい。原田巧がその後どんな変貌を遂げるか、早く知りたいし、楽しみである。ここでもWBCのときのイチローやワールドカップの中田と2重写しになる。
 若い友人から教えられなかったら、多分永久にこの本に出合えなかった。定年後は同年輩の者とばかりではなく、自分より若い人とのつきあいも大事なことだと思う




 
『死顔』
著者:吉村昭   出版社:新潮社  
板井 敬之 

吉村昭は、私にとって忘れられない作家である。初めて故郷を離れ東京勤務となった昭和47年、生活でも仕事でもやっていけるかとの不安に駆られていた頃だったが、「戦艦武蔵」を読み、綿密な取材と調査に裏づけられた著作態度に励まされる思いがした。以来この作家の戦記、医学、歴史等に関する小説やエッセイに随分と親しんだ。「死顔」は、単行本として4篇の小説と、「遺作について」と題する夫人・津村節子による著者の発病から死に至るまでの経過および「死顔」執筆の事情を記した文章から成る。それによると、「死顔」は著者の舌癌と膵臓癌発病後・手術前の時期に書かれたもので、手術後から死の直前まで、念入りに推敲を重ねていたとある。
「死顔」は次兄の肺癌による死を題材とした私小説で、病と死の経過やこれに纏わるもう1人の兄との交流が淡々と描かれている。
作中、幕末の蘭方医佐藤泰然が自らの死期が近いことを知って、高価な薬と食物をも絶って死を迎えた事実も記されている。手術前に克明な遺書を書き「延命治療を望まない」とした著者が、臨終に際し家族に「もう死ぬ」と告げ、首の下に埋め込まれている点滴の針を抜いて、自らの死を迎えた事実と重なり合う。
司馬遼太郎とは違った意味で、歴史小説に新境地を開いた吉村昭の見事な生き方と覚悟の死に、大いなる尊敬の念を覚える。





 

 

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『シンガポール便り(10)──品格ある美しい日本へ』
岡田 桂典
シンガポール政府は経済の更なる活性化と国際競争力を強めるために法人税、所得税等の直接税を下げる予定です。現在20%の法人税は来年度にはまず香港の17%に並ぶと予想されます。国富を増やす為の最上策はアダムスミス以来「減税」と「規制緩和」です。グローバル化の中で企業と有能な経営者、優秀な個人を優遇する、海外からもどんどん会社も個人も招きいれて、もっと国民の為に稼いでもらおうという考えなのです。
実は日本ほど“おカネが必要”な国はありません。財政危機は進む一方です。その為、老人は急増するのに老人病院の療養病棟35万床を6年以内に15万床にするとか、障害児の教育費負担を月額4500円から32000円にあげるとか信じられないほどの猛烈な弱者いじめが既に始まっており、年金・健康保険・介護制度は崩壊し始めています。
かくて、日本にとっての急務はもっと国も国民も儲けよ(使った金額以上の価値を生みだせ)と言う事になります。ところが経済の活性化、国民生活の向上の為に税制を使って企業の活力を高めるという政策は欧米・アジアでは当然視されますが日本ではまだ理解されません。誠に残念ながら日本人は儲けるという観念が足りなさ過ぎるのです。民間企業の利益率は欧米の半分くらい,官業は絶望的です。日本には個人貯蓄が1500兆円もありますが、その70%を儲けを考えないお役人が特別会計(特殊法人はその一つ)等で使い、儲けるどころか200兆円は蕩尽されているといわれます。
シンガポールでは株価指数は史上最高ですから民間は充分儲かっています(日本はピークの4割)。政府も外貨準備、政府出資企業、年金基金等の運用利益は莫大で、日本との人口比に換算すると年間100兆円以上儲けています。世界NO.1のハーバード大学の基金は約3兆円あり、過去10年の毎年の平均利益率は16%です。このようにやれば出来るのです。但し、会社経営も、おカネの運用も世界中からプロを集めてやってもらわねばなりません。「改革」はこれだけで充分です。日本人の貯蓄の運用利益があと5%増えただけでも75兆円の新たな所得が生まれます。福祉の維持に半分を国に差し上げます。人間誰でも“老後”が来るのです。余生を保証された時、国民は真に“品格”ある、“美しい日本”を感じることが出来ましょう。
シンガポールは日本にとって先駆者です。その政策が正しい証拠に、日本の一人当たり国民所得はシンガポールに昨年中に追い抜かれました。




 

 
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