現職の勤務医が執筆した医療娯楽小説で、懸賞応募によって見事“ミステリー大賞”を獲得した作品である。とても素人が初めて書いたとは思えないほどの出来栄えで、読後感を一口で言えば“傑作”。
物語はアメリカ帰りの優秀な心臓外科医を 大学病院で招聘し、その道で輝かしい実績を積み重ねるところから始まる。ところが、ある時から手術中の患者死亡、即ち術中死の症例が3件も立て続けに発生する。
病院長は、急遽リスクマネージャーを特命し、医療事故か否かの内部調査を開始するが、やがて外部の調査官も加わり本格的に原因の究明に乗り出す。関係者への聞き取り、手術現場への立会いなど、スピード感のある調査が展開し、最後に術中死した患者の遺体を最新鋭の検査機械(MRI)によって、その原因が殺人であったことを突き止め、同時にその犯人を確保する。
あらすじは以上の通りだが、作者が現役医者であるがゆえに医療現場の裏側などの描写には迫真力がある。登場人物のキャラクターが面白みを出して味がよく、絶妙に描かれており、また筋書きを進めるテンポがはやくて小気味よい。随所に小ギャグを織り交ぜているため退屈する間がない。一気に読んでしまった。次の作品が待たれる。
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