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2006年4月15日 VOL.56

 

 

『チーム・バチスタの栄光』 
 
著者:海道 尊(かいどう たける)   出版社:宝島社

後藤田 紘二 

 現職の勤務医が執筆した医療娯楽小説で、懸賞応募によって見事“ミステリー大賞”を獲得した作品である。とても素人が初めて書いたとは思えないほどの出来栄えで、読後感を一口で言えば“傑作”。
 物語はアメリカ帰りの優秀な心臓外科医を 大学病院で招聘し、その道で輝かしい実績を積み重ねるところから始まる。ところが、ある時から手術中の患者死亡、即ち術中死の症例が3件も立て続けに発生する。
 病院長は、急遽リスクマネージャーを特命し、医療事故か否かの内部調査を開始するが、やがて外部の調査官も加わり本格的に原因の究明に乗り出す。関係者への聞き取り、手術現場への立会いなど、スピード感のある調査が展開し、最後に術中死した患者の遺体を最新鋭の検査機械(MRI)によって、その原因が殺人であったことを突き止め、同時にその犯人を確保する。
 あらすじは以上の通りだが、作者が現役医者であるがゆえに医療現場の裏側などの描写には迫真力がある。登場人物のキャラクターが面白みを出して味がよく、絶妙に描かれており、また筋書きを進めるテンポがはやくて小気味よい。随所に小ギャグを織り交ぜているため退屈する間がない。一気に読んでしまった。次の作品が待たれる。




 
『謀将 直江兼続(上・下)』
著者:南原幹雄    出版社:徳間文庫
渡辺 仁 

 今年のNHK大河ドラマ「功名が辻」は、司馬遼太郎が著した山内一豊夫婦の生涯がテーマとなっている。今回の私の視点は、一豊の隣人である堀尾忠氏との生涯の岐路となる小山評定/関が原への参戦/忠氏のアイデアを横取りしてしまう場面・・・など正にその時歴史が動いたという場面がどのように演出されるか・・で、大いに楽しみである。
 前置きはさておき、本著は、正に同時代に上杉景勝の執政として徳川家康をふるい上がらせた稀代の名参謀である「直江兼続」の偉業にスポットをあてた逸作である。物語は、いきなり太閤秀吉が没してまだ2年しかたっていないが天下はふたたび争乱激動の時代に戻ろうとしていた時期から始まる。
 豊臣政権のもとで永年、隠忍自重していた家康が、秀吉の死を機会に、ようやく天下取りの野心をあらわに専横をきわめだした。
 兼続は、太閤秀吉が太鼓判をおした天下の器量人である。
「直江状」と呼ばれる書状が有名であるが、これは、関が原の直前に家康が上杉家の軍備増強や、領内の整備、城の改築について「謀反の兆しあり」と難癖をつけてきたことに対する返書である。家康からの、いろいろな言いがかりに対する説明であるが、最後に「理不尽なことでわれらを咎めるならばそうされよ。いつでもお相手をいたそう。」と結ぶ。
 かくして上杉討伐が開始されるが、ここで、石田三成が挙兵したことにより家康は、東西に敵を受け、命運があやうくなる。家康に対して勝機をつかんだが主人である上杉景勝は、大軍がひいていく絶好の追撃の機会に、あえて追う意思がない。
【勝機さる】命ながらえるなら、将来もう一度、天下を賭けた勝負がしてみたい。今回は負けたが、次には勝てるかもしれない。(できる)家康は今年59歳。来年は六十路にいたる。長寿を実現した太閤にしてさえ63歳で世を去った。信長にしても非業ながら49歳。家康が精いっぱい長生きをしたとしてもあと10年。10年後には確実に家康はこの世にいない・・・。
 幕府の基礎を着実に固める家康を横目に、上杉家執政・直江兼続は家康打倒の時を狙っていた。兼続の胸に秘められた未曾有の謀略がいま明かされる。
 読了後の満足度合いは、非常に高いものがありました。お薦めです。




映画評「SAYURI」』 2005年
監督:ロブ・マーシャル 出演:チャン・ツィイー、渡辺謙
福島 和雄 

 日本の芸者物語をハリウッドが製作した異色の映画である。昭和の始め貧しい港町で生まれた千代(後に芸者さゆり)が芸者置屋で下働きをするようになった。先輩芸者初桃の冷たい仕打ちにも耐えた。ひとり涙を流す千代に、立派な紳士(会長)がやさしく声をかけ、ハンカチと小遣いをくれて立ち去る。
 この日から千代は芸者になりたいと思うようになり、15歳の時芸者さゆりとなる。親切な姉さん芸者豆葉の指導もあり、さゆりは以降置屋の売れっ子芸者となり、たくましく生きていく。やがてお座敷で芸者になるきっかけとなった運命の人会長に出会う。私もよく知らない花街の世界の言葉例えば襟替え、仕込み、水揚げなどの内容が理解出来る。芸者が英語をしゃべるのに、多少違和感を私は覚えたが面白かった。主役のさゆり(チャン・ツイ)ライバルの初桃(コン・リー)は中国人、豆葉はマレーシア人、会長は「ラスト・サムライ」で、今や国際俳優となった渡辺謙が扮している。中国では人気女優のチャン・ツイが日本の芸者に扮しているのに、ブーイングが起きているそうだ。そして映画「SAYURI」は現在時点中国では一般上映されていないそうだ。






 
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