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■2012年12月15日号 <vol.216>

書評 ─────────────


・ 書 評    前川 彬  「小沢征爾氏へのインタビュー」の本を読む
              『小沢征爾さんと音楽の話をする』  
                (小沢征爾・村上春樹  新潮社)
              『小沢征爾指揮者を語る─音楽と表現─』
                (語り:小沢征爾、インタビュー:有働由美子 PHP研究所)

・ 映画評   船渡尚男  『本年鑑賞した名作映画の数々』

・ 私の一言  幸前成隆  『眸子を観る』

 

 


2012年12月15日 VOL.216

 『小沢征爾さんと音楽の話をする』  
(小沢征爾・村上春樹  新潮社)
 『小沢征爾指揮者を語る─音楽と表現─』
(語り:小沢征爾、インタビュー:有働由美子 PHP研究所) 

前川 彬   

2011年11月と2012年3月に、小沢征爾氏へのインタビューをまとめた本が
出版され、この日本の生んだ大指揮者の素顔や歩いてきた軌跡を知るよい
機会となった。

小沢征爾・村上春樹『小沢征爾さんと音楽の話をする』(新潮社)は、作
家の村上氏が小沢氏と対談した内容をまとめたもので、病気休養中である
小沢氏の最近の生活やリラックスした姿がわかり貴重である。村上氏はク
ラシック音楽にも造詣が深く、作曲家とその作品、指揮者とその演奏内容
などマニアックな知識を生かして対談を進めている。

第1回「ベートーベンのピアノ協奏曲第3番をめぐって」から始まり、
第2回「カーネギーホールのブラームス」、
第4回「グフタフ・マーラー音楽をめぐって」
など全6回の対談は、内容は相当専門的であるが、二人は対等に話をしてお
り、場合によっては小沢氏が聞き役になっているところもある。
したがって、本書はクラシック音楽に相当通じていないと読んでもあまり面
白くないように思われ、これは一冊の音楽に関する書籍と考えても良さそう
である。ただし、本書の中で小沢氏が語るエピソードは氏を知る上でたいへ
ん興味深く、その意味では、もう少し本人に自由に話させる部分を増やせば
もっと楽しい本になったのではなかろうか。

100年インタビュー制作班編『小沢征爾指揮者を語る━音楽と表現━』(PHP
研究所)は、2009年、NHKアナウンサーの有働由美子氏がウイーン国立歌劇
場を訪ねて、当時歌劇場の音楽監督であった小沢征爾氏にインタビューした内
容を単行本にしたものである。クラシック音楽に詳しくない(本人談)有働氏
が、音楽の指揮についていろいろな角度から質問をしてそれに対して小沢氏が
自らの経験を踏まえて答えてゆく形をとっている。

話題は、音楽監督の仕事の内容から始まり、小沢氏のこの半世紀にわたる挑戦
やサイトウキネン・オーケストラの話に移り、最後は指揮者による音楽の表現
方法で終わっており、たいへん幅広い。質問が的確なこともあるが、現役でま
だ元気であった小沢氏が熱っぽく話をしており、氏の魅力を余すところなく引
き出している。
したがって、本書の場合は、クラシック音楽に通暁していない人でも気楽に読
めるし、小沢氏の人となりを知ることができる好著である。
小沢征爾氏は現在77歳、日本人として世界的に最も活躍してきた指揮者である
が、2009年12月に食道がんが発見され、切除手術を受けて今は休養中である。
一日も早く活動を再開されることを祈りたい。

 


映画評 
『本年鑑賞した名作映画の数々』  

船渡尚男    
今年は映画館で13本、TVで13本の映画をみた。印象に残ったのは、以下
の通り。
1:ロードショウは「戦場の馬」「アーテイスト」「あなたへ」「天地明
 察」の4本。このうち「戦場の馬」におけるイギリス人のサラブレッド馬へ
 の思い入れ、愛着に心をうたれた。
 「天地明察」は原作のほうが面白い。将軍出入りの囲碁安井家の長男が、
 苦労の末に日本初の大和暦をつくりあげる。江戸期における天文観測と算
 法のレベルの高さはすごい。関考和も登場。
2:NFC(京橋にある東京近代美術館の映画保存組織)で8本。
 「ここに泉あり」は今井正監督の名作。群馬交響楽団誕生前後の苦労話。
  なかでもハンセン氏病棟での演奏にたいして無音の拍手が送られたこ とに感動。
 「老兵は死なず」はボ―ア戦争から第二次大戦にいたるイギリス人将校の気 まじまな生き方、ドイツ将校との友情、その妻となったデボラカ―への主人 公の思慕、主人公は妻に似た女性を選びさらに退役前後の専属運転手は妻に 似た女性を採用(デボラカ―の3役)。
 「幕末太陽伝」は川島雄吉監督、フランキ―堺主演。落語の「品川心中」と 「居残り平治」を下敷にした名作。廓の内情、そこに生きる人々を活写、な かを駆け巡るフランキ―、小生にとって今年1番の作品。
 なお、NFCは通常入場料500円、シニアは350円。日本映画、洋画を月ごとに 特集して上映している。3:TVの再映
 「カサブランカ」は10回以上みている。ハンフリーボガートの何とも言えない 味、そして洒落た結末。
 「拝啓天皇陛下様」は渥美清主演。一兵卒の戦中戦後の可笑しくも懸命な生き ざまを描く。
 「豚と軍艦」は今村昌平監督、長門裕之主演。戦後の横須賀米軍基地に寄生し て生きるちんぴら等のたくましさ。
 「馬鹿まるだし」は山田洋次監督、はなはじめ主演の帰還兵の物悲しくも面白 い姿。
 「アラバマ物語」は、主演グレゴリーペックのしみじみした演技が印象的。
 「12人の怒れる男」ヘンリーフォンダ主演。陪審員制度の生々しい姿を描く。 白黒。  
 「チャイナ・シンドローム」ジャックレモン主演。原発での重大事故発生。現 場責任者の訴えを上層部が隠そうとし、テレビクルーがなんとか報道しようとす る。福島を思い起こさせる。白黒映画。

 

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『眸子を観る』
幸前成隆

  
 眸子を観る 心情は、目に現れる。

「五尺六尺の人の身に宿る魂も、一尺の顔の中に現れ、一尺の顔に宿る魂も、 一寸の目の中に収まる(日蓮)」。目は、心の鏡。人は目を細くし、円くし、 目の色を変え、目を輝かせる。竹林の七賢の一人、阮籍は、好意のある人は青 眼で迎え、嫌な人には白眼で対した(晋書)」。

人の正邪、精神は、眸子に現れる。
「眸子は、その悪を掩う能わず。胸中正しければ眸子瞭かに、胸中正しからざ れば眸子?し(孟子・離?章句上)」。「人の精神は、目にあり(講孟箚記)」。

だから、孟子は、人を見るには眸子を観ろといい、吉田松陰は、目を見ろという。
「人を存るには、眸子より良きはなし。……その言を聴きて、その眸子を観れば、 人いずくんぞ痩さんや(孟子・離?章句上)」。「人を見るには、目に於てす (講孟箚記)」。

佐藤一斎も、「人を観るには、徒らに外その容止に拘わることなかれ。すべから く言語せしめ、就きてその心術を相すべくば、可なり。まずその眸子を観、また、 その言語を聴かば、大抵痩す能わじ(言志耋録)」といわれる。
貝原益軒も、詳細に眸子を観ろという。

「人を知ること、甚だ難し。その天資、聡明通悟に非ずんば、よくし難し。学び 得難しといえども、また術あり。その眸子を視、その言語を聞き、その好悪を試 み、その威儀を観、その誠偽を察するにあるのみ。その眸子を視、その言を察す るは、孟子のかつて説く所、これ、人を知る術なり。最も人心の邪正と才不才と を察すべし。久しく心を用いて熟習すれば、謬らざるに無からん(慎忠録)」。

 

 


今年も本号で終わりとなります。1年間ご寄稿.ご愛読有難うございました。
来年も宜しくご支援のほどお願い申し上げます。
さて、明日はいよいよ選挙です。誰を選ぶか、どの政党に
するのか、本日現在でも迷います。皆様方は、いかがでしょうか。
過日、子供が母親に一番儲かる職業はなにかと
いう質問をしたところ、母親は医者か弁護士だろうと
答えていたのが聞こえました。
現在はそうでしょうが、20年後、30年後も
そうでしょうか。ロシアでは医者は余っているそうですし、
アメリカでは弁護士は余っているようです。
我々は、ともすれば目先で考え長期的視点に欠けることが少なく
ありませんが、今回の選挙は、従来以上に日本のあり方を長期的に
考えて、人、政党を選ぶ必要があると思っています。
今号も貴重なご寄稿をいただきありがとうございました。(H.O)


 





 
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