このサイトでは書評、映画・演芸評から最近の出来事の批評まで幅広いジャンルのご意見をお届けしていきます。
読者の、筆者の活性化を目指す『評論の宝箱』
意見を交換し合いましょう!

 
       

 

 

■2009年10月1日号 <vol.139>

書評 ─────────────
 
・ 書評    福島 和雄 『ニッポンの大学』
              小林哲夫著(講談社現代新書)
                        
・ 書評    石川 勝敏 『格差はつくられた』
              ポール クルーグマン著 三上 義一訳 早川書房

・【私の一言】 岡田 桂典 『政府』




2009年10月1日 VOL.139


『ニッポンの大学』
著者小林哲夫  出版社:講談社現代新書

福島 和雄    


 著者は偏差値以外のモノサシで大学を評価したいという考えでこの本を書いた。著者は1994年に「大学ランキング」(朝日新聞社)を発刊した。その当時は「興味本位なランキング」は大学の序列を助長するだけで、有害無益と批判されて悲しい思いをした。あれから10数年経過した現在、1990年代後半から大学設置基準大綱化、国公立大学の統合・再編と法人化、私立大学の定員割れや倒産、法科大学院の設置など、日本の大学では改革が大きなテーマとなり、大学側も競争を強く意識し始めた。今や国の政策レベルでも、ランキングが重要視されるようになった。文部科学省ばかりでなく、経済産業省もノーベル賞クラスの研究者を増やし、産学連携や特許取得を推進するため大学に関心を持つようになった。さらに「世界の大学ランキング」というのが話題になるようになった。参考に2007年イギリスの新聞「タイムズ」の調査によると、第1位ハーバード、第2位ケンブリッジ、第3位オックスホード、第4位エールで日本の大学では17位に東大、29位に京大、46位に阪大、90位に東京工業大、102位に東北大、112位に名古屋大、136位に九州大、151位に北大、161位に慶応大、180位に早稲田大となっている。昨年日本はノーベル賞を4人が受賞した。特に名古屋大学出身が多かったので、09年のランキングでは名古屋大が上位に進出すると思う。

 この本の主な項目を挙げると次の通りである。
1、 日本の大学は世界で何番目であるか
2、 入試倍率と偏差値の虚像
3、 女子大学生という名の商品
4、 就職は難しい
5、 大学教員、職場の群像
6、 世界を目指す研究者
7、 タレント教員の功罪
8、 社会に役立つ人材を送り出しているか
9、 スポーツ選手が大学の名を上げる
10、大学の新しい展開

 など日本の大学の現状をわかり易く分析しているので、受験生ばかりでなく親たちにも参考になると思う。
著者は1960年の生まれの教育ジャーナリストで、現在成蹊大学国際教育センター非常勤講師で、主な著書に「飛び入学」(日本経済新聞社)「理系就職・転職白書」(丸善)などがある。


『格差はつくられた』
著者ポール クルーグマン  訳:三上義一  出版社:早川書房

石川 勝敏   


 著者はプリンストン大学教授、ニューヨークタイムズ レギュラーコラムニスト。 2008年ノーベル経済学賞受賞 。

 日本人にはアメリカ合衆国に好意を持つひとが多い。私もそうそうだが、ただアメリカの社会構造や人々の意識について、不可解な事も多い。

例えば国民皆医療保険がないこと。保険が無いか不十分な人が4500万人もいること。
CEOの巨額な報酬と所得格差が広がっていること。格差は4000対1にもなること。
銃犯罪が多いが銃の所持規制が進まないこと。
目に見えない人種差別の実態。白人と黒人の統合教会は10%にも満たないこと。
黒人がはじめて大統領に就任したこと。

 著者はアメリカのかかえる諸問題の根底に人種差別があるという。著書は現在のアメリカを明確に解析している。著者が本図書を脱稿したのは07年夏であるが、今読めば何故オバマなのかも理解でき、著者の将来予測が正しかったことは明らかである。

 何故アメリカが60年代の大圧縮で格差の小さい総中流の繁栄の時代から現在の格差社会に変貌したのか。原因はグロ−バリゼーションや技術革新などの、市場や経済の趨勢ではない。
 原因は政治、政策によるものである。現在共和、民主両党に猛烈な対立があるのは、70年代初めに共和党が超党的政策から富裕者の利益の党に方針転換しその目的のためにいかなる事でも断行する政党になったからである。レーガン大統領が福祉削減を訴え、小さな政府を提唱し、白人の稼いだ金の税金を黒人が食いものにしているという白人の意識をうごかし、その根底にある人種差別意識を刺戟し、人気を得て以来である。共和党が過激化し、急進派が勢力を増し、シンクタンクと政治資金で富裕層が共和党を牛耳った。
 アメリカでは60年代半ばまで黒人は法律、制度であらゆる差別をうけてきた。人種差別で白人が社会で優位に立ち発展してきた国であった。60年代の公民権運動、黒人解放運動以来、法律、制度的な差別は撤廃されたが社会的な差別が消え去ったわけではなかった。

 その差別感覚を巧みに利用し政治を操り政権を取ってきたのが共和党であった。
 イラクで失敗しサブプライム問題で混乱し格差社会の中にあるのが現状である。オバマ大統領の出現でアメリカ社会は大きくリベラルな方向に向かうのであろう。
 共和党の失政とアメリカの白人の人口減少と多くの白人が人種差別的でなくなり、若い世代には肌の色はそれほど問題でなくなってきている事がオバマ大統領就任の原因であろう。

 この図書を読んで私のアメリカ理解は、大いに進んだことを感じた。

 

 

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『政府』
岡田 桂典

 鳩山新政権の脱官僚、政治主導体制は革命的な大転換だと言われます。確かに日本は奈良時代の律令制以来の官僚主導国家です。更に鎌倉幕府成立以来敗戦まで800年間世界最長の軍事政権が続きました。明治以降も敗戦まで首相の大部分は元武士か軍人なのです。軍事国家は官僚国家です。国が法律を決め、国が税金を集め、使い方は官僚が決めるというスタイルで、経済に疎く、商売を馬鹿にします。昨年の官僚不況などはこの典型でしょう。

 それでは政治家は官僚支配を打破するような主体性を持っているのでしょうか。戦後歴代の首相をみてもは角栄さんを例外として、殆どが官僚、地方議員の出身、議員世襲の人達です。政治家も官僚的世界の出身者で、自分で御カネを稼いだことが無い経済オンチ、経済不況でも国民の御カネを税金や国債と称して勝手に使うという点では官僚と同じだと思います。ですから民主党が政治主導だといっても、我々政治家がカネの使い方を決める、官僚が勝手に使っていたカネも自分らによこせという、いわば政治家である後醍醐天皇が天皇親政を唱え、足利幕府(官僚)と戦った“建武の中興”のようなものではないかとしか感じられません。

 800年の官僚支配の間、戦争や経済混乱のツケは全部国民に回してきました。私は日本の財政破綻は間近で、国民はまた大変なツケを払わされると恐れています。国の負債が既に860兆円あるのに、今年度の税収が40兆円、新規国債発行が43兆円と、始めて借金が収入を超える惨状です。今後、税収は企業の海外進出が加速していますから増えるはずがありません。国民の貯蓄は既に860兆円は“国に使われてなくなっており”、国民の30%は無収入、全体の貯蓄もまもなくマイナスになりますから国債の増額はもう限界です。

 国民はたまったものではありません。このまま財政を借金に頼ると、ある日突然、国債が売れなくなって金利が上がり、円安になり、インフレは必至だと心配されています。いやな話ですが、時間の問題とされる大型地震は一回起これば110兆円以上必要だそうです。これまた大インフレ要因です。インフレは貯蓄・社会保障給付の価値を減少させ国民の生活を破壊するのです。

 国民のために政治を行うのであれば、新政権は財政の健全化以外はやる必要は無いと考えます。時間がないのです。真の弱者救済以外はあらゆる支出をカットする。政治家・官僚の費用は半分にする。一方、国民は消費税20−25%を甘受する。とにかく財政破綻によるインフレを防がなければなりません。次に災害による大インフレを招かないために、特別基金150兆円を確保してほしいと思います。民主党が官僚ではない,真の政治家であればそうすべきです。

 

 

 

 

 国立環境研究所の2030年までの近未来地球温暖化予測では、2011〜2030年の地球の平均気温は、1951〜70年と比べ約1度上昇。2030年の東京は、最低気温が27度以上の熱帯夜が現在の3倍になると予想され、最高気温が35度以上の猛暑の日が1.5倍になるとのことです。
このままでは東京が灼熱地獄となる可能性が高いということでしょうか。

 鳩山由紀夫首相が国連気候変動首脳会合(気候変動サミット)で、温暖化ガスを2020年までに1990年比で25%削減する中期目標を表明しましたが、これに関しては、国内でも様々な議論があるようです。

 しかし、この対策は一刻も争うものであり、未来を見据えての投資が必要であると同時に、出来るところから温暖化対策を進める必要があります。

 鳩山内閣には様々な議論、期待もありますが、この温暖化については、首相の強力なリーダーシップで前進することを期待したいと思います。

 今号も多方面のご寄稿有難う御座いました。
(HO)

 

 




 
バックナンバー
2012/12/15
2012/12/01
2012/11/15
2012/11/01
2012/10/15
2012/10/01
2012/09/15
2012/09/01
2012/08/15
2012/08/01
2012/07/15
2012/07/01
2012/06/15
2012/06/01
2012/05/15
2012/05/01
2012/04/15
2012/04/01
2012/03/15
2012/03/01
2012/02/15
2012/02/01
2012/01/15
2012/01/01
2011/12/15
2011/12/01
2011/11/15
2011/11/01
2011/10/15
2011/10/01
2011/09/15
2011/09/01
2011/08/15
2011/08/01
2011/07/15
2011/07/01
2011/06/15
2011/06/01
2011/05/15
2011/05/01
2011/04/15
2011/04/01
2011/03/15

2005/03/01

2004/12/01

 
 
 
 
 
Copyright(c)2001-2009 H.I.S.U.I. Corp. All right reserved.
□動作確認はMac OS9.2 + IE5.1にて行ってます。
□当サイト内コンテンツおよび画像の無断転載・流用を禁じます。










SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送