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■2011年1月15日号 <vol.170>

書評 ─────────────

・ 書 評     青陽 道幸  『漢字は日本語である』
             (小駒勝美著 新潮新書)

・【私の一言】 濱田 克郎  『アメリカ便り(21) トラスト・ミー』 

・【私の一言】 石川 勝敏  『日本の問題
             (TTP参加問題、尖閣諸島、北方領土問題)』


 



2011年1月15日 VOL.170


『漢字は日本語である』 
(小駒勝美著 新潮新書)

青陽 道幸   



テレビで漢字クイズの番組が放送されることが多くなった。特に読み方の難しい問題が多く、私も解らないことが多い。漢字の人気が上がることは喜ばしいことだが、漢和辞典をひく人はあまりいないように思う。持っている人も少ない。

著者は、漢和辞典が古代漢語を読み解くための辞典で、日本の現代文を読み解くには適していないという。「秋桜」をどう読むか漢和辞典では秋をひいても桜をひいても出てこない。

「山車」とか「殺陣」とかも同様。日本では漢字を訓読みするが、チャイナには訓読みはない。従って訓読み熟語は漢和辞典には載らない。それで、日本人が使うための漢字辞典を作ろうとしてできたのが、「新潮日本語漢字辞典」ということで、この本は著者の自慢話から始まる。

しかしながら漢字の訓読みは、日本独特のもので、これが「漢字は日本語である」という所以というくだりは、納得性の高いものである。また、漢字の音読に複数種あるのも日本だけで、チャイナには一つの字にたいして一つの読み方しかないということも、漢字が日本語と言える根拠となるとのこと。
和製漢字というのもある。明治時代に欧米語を翻訳するに当たり、賢い先人が知恵を絞って漢字の熟語を作り、それが根付いて、立派な日本語になっているものも多い。そして、それがチャイナに逆輸入されていることもある。共産主義は和製熟語だがチャイナでも立派に通用している。

韓国では、漢字を訓読しなかったために自国語と字音語を密接に関連させることができないままに過ぎて、漢字が日常生活で使われなくなった。そして、1970年、普通教育で漢字教育を全廃したから、40代を境目にしてそれ以降の世代は漢字を使いこなせないとのこと。

また、漢文を送り仮名や返り点や一字再読の方法で日本語に変換することを発明したのも日本人で、これが漢字は日本語と言わしめることにもなる。
そのほか、漢字の成り立ちの話(象形だの形声だの)とか、部首の話とか常用漢字の話とか、漢字のJIS規格のことなど、改めてそうだったのかときづかされることの多かった書物である。

 

 

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『アメリカ便り(21) ー トラスト・ミー』
濱田 克郎

その男と会ったのはその日が初めてだった。
ある投資案件についての運用実績の説明を受けるために面談する機会があった。

一通りの説明を受けた後、納得がいかない点や補充説明が必要な点につき質問してみる。すると、判で押したような、或はのらりくらりとした答えが返ってくる。私の腑に落ちる説明ではない。おそらく、私がした質問は彼の頭の中にある”想定問答集”の範囲内であったのだろう。それならと、ズバッと本質に迫るような質問をしてみた。

すると、たちまちにして彼の顔色と態度が変わった。最初に出てきた言葉は、” To be honest with you (正直言いますと、実は)”であった。” 実はかくかくしかじかなのです。あなたはずいぶんお詳しいですね。” といわれてもちっともうれしくはない。むしろ、この御仁が宣うことはあまり信用できないかもしれないから用心しよう、という気になった。更に今後の方針を聞くと、これまた心もとない答えしか帰ってこない。私がわかるように説明してくれないか、本当にこれで良いのかと懸念を表明したあとに帰ってきた答えは、” Trust me. “ だった。

 上述のいきさつと、この言葉は、彼に対する私の信頼を失わせるに充分であった。なぜなら、信頼というのは瞬時に成立するものではなく、相互に時間をかけて醸成していくものと私は考えているからである。その後の言動と実績は更に信頼を失わせるに充分であった。(やっぱりな)

” Trust me. “ といえばマジックのように信頼が得られると考えていること自体、彼を象徴しているようにも思えた。よく、信用を築くのには長い時間がかかるが、失うのは一瞬でできる、といわれるが、彼の場合信頼を築き上げる以前にぶちこわしてしまったようなものである。

 どこかの国の首脳がある国の首脳との数回めの会談で、” Please trust me. “ と宣わったと報道されたことがある。その後の言動や実績も含め、どのように受け止められたのかわかるような気がする。

 ひとが他人を信じるとか信じないとかいうことは必ずしも論理的な帰結ではなく、むしろ情緒的な要因の方が強いのではなかろうか。信頼を得るためには、言うだけではなく約束を必ず実行することなど、日頃のたゆまぬ努力と行動の実績の積み重ねが必要であろう。

 

 

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『日本の危機1
(TPP参加問題、尖閣諸島問題、北方領土問題)』

石川 勝敏

毎朝新聞を読む度に日本の国策は危機に瀕していると感じ、苛立ちをおぼえる。

国会は選挙対策と政局ばかりで、小沢問題一つ片づかない。
私は読売と日経新聞を購読しているが日経新聞はこのところ一般紙面の実力を落としている様にみえる。両紙とも社説は一応の論説を張っているが長期の国益を考えた論説は少なく、当日の紙面にかかわる問題の方向づけを示すのに精一杯で、議論すべき問題の核心なり構想に触れることはない。不満である。やはり日本には官僚組織以外のシンクタンクに実力が無いからであろう。

20年から30年の先の日本のおかれる状況、日本を取り巻く諸外国の状況を考え、日本の国益を考え速やかに方針を決定すべき事柄は数多くある。
今回はTPP参加問題、尖閣諸島問題、北方領土問題にふれてみたい。
TPP会合にオブザーバーも送れない現状は正に危機である。就業人口200万人平均年齢65歳の農業問題で人口1億2000万人の日本の基幹産業の貿易に制約を受ける事には反対である。日本の国益は自由貿易である。日本全体の産業興隆のなかで、農業への補助は十分に実施すれば良いし、農地法の改革も事後に解決してゆけば良い。

EUやロシア、南北アメリカ等の諸外国とのFTAも立ち遅れている。
日本は今第2の開国を迫られている。再び言う日本の国益は自由貿易である。
この基本的な国益をまず第一に考え派生する問題は事後解決していけばよい。
年金、介護、デフレの克服も自由貿易による経済成長なしには解決できないであろう。
尖閣諸島、北方領土問題は、政治が選挙と政争に明け暮れている間にロシア、中国との外交を棚上げにしてきたツケである。冷戦崩壊で倒れたロシアもエネルギーの高騰で力をつけ帝国主義的になってきた。中国は経済発展と軍備強化で対日強硬路線を強化してきている。
冷戦崩壊以後、平和の配当が得られると考えてきた日本は対応が甘かったのではないか。

小泉内閣以後の各首相は外交らしい外交をしてこなかった。
ペリー以降、明治大正の時代も列強が覇を競う時代であったが我々の祖先は世界の5列強に入り得た。少子高齢化の進む20年30年先、尊厳をもった独立国たる道を求めなければならない。リーダーシップを持った政治家と我々の投票権で将来を見きわめた明確な国家指針を作りあげる事が求められる。

 

 

 

 旧聞ですが、2003年の自治体国際化協会北京事務所通信に次のような記事がありました。
『中国では海外留学して帰国する留学生を「海亀族」(海帰派→海亀派)と呼んでいる。
最近は北京が海亀族にとって帰国して起業するメッカとなっている。北京には 計4万人以上の海外留学からの帰国者がいるが、彼らは3,300余りの企業を興している。
 北京市人事局によれば、北京市は帰国し企業する留学生を引きつけるための特別ルートとなっている。2000年以来、中関村科技園区(IT、ハイテク産業の集積地) だけでも、帰国留学生が起業した企業は251企業から1,785企業と約7倍に増加した。 帰国留学生数も1,052人から4,900人に増加した。彼らが創業した企業の登録資本金は 既に19億元(約285億円)に達している。』

最近の日本若者は、内向化が著しく米国への留学生も激減し、まして中国の「海亀族」(のような行動を取っている人が多いとは思われません。人材教育面でも日本は大きく遅れているといえましょう。この点についても、本年こそは中長期的なヴィジョンの策定と実施が望まれます。
現政権に期待していいものでしょうか。

本号も時宜を得た、多面的なご寄稿をありがとうございました。(H.O) 






 
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