首相の靖国神社参拝問題が起きるたびに、なんともいえぬ違和感を覚える。
かねてより、一度この問題を正確に捉えて、理解したいものと考えていた。
新聞報道では各紙面によって政治的に偏っていたりして、正しい判断が得られまいと思っていたところ、昨年 筑摩新書からこの本が出て、読んでみた。
複雑微妙な問題ではあるが、著者は実に平明に、淡々と問題の所在を明らかにして、論理的に靖国問題を取り上げており、説明がまことに丁寧である。
テーマを1.感情の問題、2.歴史認識の問題、3.宗教の問題、4.文化の問題、5.国立追悼施設の問題に割って整理している。
著者は東京大学で哲学を専門とする教授で歴史家ではないが、この問題の歴史的な取り組み方に共感することが多い。靖国問題へのわれわれ国民の対処の仕方に、貴重な指針を示していると思った。
憲法違反という地裁等の司法判断を、まるで軽視している一国の総理の行動を、ただ漫然と眺めていた自分の“目からうろこが落ちた”、というのが読後感である。貴重な靖国問題参考書といえる。
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