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2005年6月1日 VOL.35

■書評
・『検証日本の組織ジャーナリズム NHKと朝日新聞』― 阿部 和義 
・『化石』― 今村 該吉
【私の一言】『音楽日記(2)─ 脱皮のリスク』 風雅こまち

 

 

『検証日本の組織ジャーナリズム NHKと朝日新聞』
著者:川崎泰資・柴田鉄治  出版社:岩波書店

阿部 和義  
 朝日新聞で社会部長や論説委員を務めた柴田鉄治氏とNHKで政治部記者やボン支局長をした川崎泰資氏が朝日新聞とNHKの危機的な状況を書いている。両氏とも都立日比谷高校で同期生であり、同じマスコミで仕事をしてきたことから情報交換を頻繁にしており、9年前に共著で「ジャーナリズムの原点―体験的新聞・放送論」(岩波書店)を出版している。その延長で現在置かれている朝日新聞とNHKの問題点を指摘している。朝日新聞とNHKが女性国際戦犯法廷の報道をめぐり論争する今年1月の前の昨年12月に出版された。タイミングの良い時期に出た。
 朝日新聞に付いては「萎縮するリーディングペーパー」ということでイラクへの自衛隊の派遣や憲法改正問題についてはっきり反対の姿勢を打ち出せないことに不満を示している。特にイラクへの自衛隊派遣について、米国の要請に唯々諾々と従っていることを批判すべきだ、としている。さらに北朝鮮や中国の報道についてもトラウマがあり及び腰になっている、と指摘している。
 一方、NHKに付いては海老沢勝二会長(05年2月に辞任)の三選で独裁体制に蝕まれるNHKは不祥事が続発している。さらに森・前首相の神の国発言で官邸の記者クラブで指南書がコピー機に残された問題で、NHKの大木記者が書いたことがはっきりしている、と書いている。しかし、NHKはこの問題に一切回答しないどころか大木記者を副部長に昇格させた。
 さらに「何故番組を改鼠したか」として4年前の女性国際戦犯法廷のニュースがトップや幹部の意向で改鼠改変された。これについて川崎氏は「海老沢会長、松尾放送総局長が介入して変えた」と書いている。この問題は今年1月に再び問題になった。朝日新聞社はこの問題で政治家の介入があったとして安倍晋三、中川昭一氏の名前をあげた。当時のプロデューサーも記者会見をしてこの事実を認めた。ところが取材を受けた松尾総局長が「政治家の圧力があったとは言っていない」と朝日の記事を否定した。このため朝日とNHKは争っている。
 こうした意味からするとこの本はタイミングの良い時に出版された。朝日とNHKの論争はいまだに決着がついていない。朝日の読売新聞化、NHKの国営化は困ると言うのが、両者の結論である。




『化石』
著者:井上靖  出版社:角川文庫[絶版]

今村 該吉

 知人がガンと聞き、急にこの本を読みたくなった。30年ぶりの再読である。ガンに侵され、余命一年と突然宣告されたとき、人は何を考え、如何に行動するだろうか。
 一鬼太冶平は一代で大会社を築いたいわば立志伝の人物である。世間からも尊敬され、何の不足もない生活である。ヨーロッパ旅行の途次パリで、ふとした電話の手違いから秘書と間違えられ、自分がガンに犯されていること、手術が難しく、余命一年であることを知ってしまう。気丈にもこの事実は誰にも打ち明けず、旅行中いつもどおりに振舞う。しかし絶えず心の中では死と向き合わなければならない。カネ、カネのこれまでの人生とは何であったのか、仕事とはなんと空しいものなのだろう。
 フランス人の富豪に嫁いだ日本人と偶然知り合い、古城巡りを共にする。一鬼はそのマルセラン夫人の神秘的、不思議な魅力に心を引かれる。「もう一度信州高遠の桜を見たい、来年の春ご一緒しませんか」と誘われる。
 帰国後、病気のことは誰にも一切告白しないし、病院にさえも行かない。しかしながら仕事には興味を失ってしまった。自分の周りのすべてが変わってしまった。体内に巣くっているガンと絶えず生き方、死に方について対話をする。「ああ、来年の春までは生きていたい。夫人と高遠の桜を見たい」。いまではこのことが唯一の生き甲斐でさえある。
 ところが運命とは定められたとおりにはいかない。突然、会社存亡の危機に見舞われ、否応なしに仕事に引き戻され、一鬼は生気を取り戻す。あんなに情熱が失せたはずの仕事であったのに。仕事とは魔性なのか。それに引きかえあれほど憧れた思慕の人はこんなにもはかないものだったのか。初老の男に突然突きつけられた課題は極めて重い。しかし読み終えた後、爽やかさが残った。
 余談・・・この本は絶版であるので、書評で取り上げるのはルール違反かもしれない。しかしインターネット上「日本の古本市」でいとも容易に、しかも安価で入手出来る。このサイトはまことにありがたい






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音楽日記(2)─ 脱皮のリスク』
風雅こまち

 先日、珍しいクモの脱皮の映像を見ました。柔らかな肉体は外敵に襲われるかもしれない。それでも与えられた生命のプログラムにより脱皮をくり返して成長する。脱皮したばかりの白い体は神々しく感じられました。ヒトの成長も見えない脱皮の繰り返しだと思います。その殻をいつ、どうやって破り、新しい姿で生きていくのか。生き物としてDNAに刻まれた信号も再認識すべきでしょう。生き物としてのヒトの為すべきこと、この頃、就学前のスキンシップが疎かなことが気掛かりです。
 子供の体力低下は深刻な問題。子供の日のイベントではジョギング中にすぐに座り込んでしまう父と子。息はゼイゼイ、本当に苦しそう。「ご一緒にと言われて娘の通うテコンドーをやったら、準備運動だけでへばっちゃった〜」と語る30代の女性。大人は運動不足を解消すれば改善できますが、体を形成すべき時期にチャンスが無かった子供は、大人になってからは取り戻せません。基本的な運動能力は就学前、義務教育時代には必要な筋肉が形成されます。年老いて 細った筋肉も運動により活性化できます。養殖魚のような現代人の身体。口当たりは美味しいが、歯ごたえが無い。噛み締める歯ぐきも弱い。肉体に伴って気力や精神ももろくなるわけです。
 目の中に入れても痛く無い我が子に旅をさせよう。実行には深い愛情が必要。がまんを教えるために親は大変な努力をしますが憎まれる。だからと言ってその役目を学校の教師や外部教育機関に頼るだけではダメです。人として最初の人間関係を学ぶ親子という関係。真剣に取り組んでみませんか。生涯出産数が1を割った東京。親になることも難しい時代です。私もたった一人の娘のおかげで親という大きな課題も授かりました。親子で悩み、笑い、慈しむ。それが大事だと思います。
 叱ったら嫌われるのでは?と恐れずに、心の脱皮の時が来たと考えてみましょう。親子がその殻を破って羽を拡げた時、新しいステージが待っています。互いの声を聴き、身体を動かせば、五感のアンテナが輝きますよ。





 
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