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ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ
ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。
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『シンガポール便り−特別基金の創設提案』
岡田
桂典 |
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ジェンキンスさん騒動、このところ報道がぴたりと止まりましたが、流石に政府もやり過ぎたと思ったのかも知れません。重大犯罪人を超法規で入国させる、外務大臣が訴追免除の交渉に乗り出す、深刻な財政危機の最中に一家を“特別扱い”にして莫大な出費を続けるのを見れば、“国家の軽さ”に飄然とする思いです。
私が特に心配するのは曽我さん一家の将来です。一家の大黒柱がいわば職場放棄して闊歩しているのを見れば、国民の“同情”も“何故我々の税金で”と“憎しみ”に変り、政治の“思惑”が結果的には一家に強烈なストレスを与えかねません。
それではどうすれば良いのでしょうか。私が住むシンガポールでは、特別の支援の為には“国費”は使わず、「基金」を作って国民に募金を呼びかけます。昨年のSARS(新型肺炎)が発生した際には、献身的に働き犠牲になった医療関係者を含め、多くの被害者救済の為の基金募集が行なわれました。募金は電話でも行なえ翌月の料金に加算されます。初日でしたか、テレビの画面で募金額がみるみるうちに増えていくのを見たのは感激でした。
日本でも政治的な思惑、不透明な国庫支出を避ける為には特別NGOを設立してあらゆる支援対象に基金を作るべきだと思います。国単位、県・市町村単位で募金テーマを決め,NHKは公共放送ですから、全国・地方ニュースの時間の一部で、テーマと各募金の集計額を毎日伝えたら良いと思います。電話も使えれば送金料、出かける手間も省けます。日本の人口は多いので、一人当たりは小額でも集まる金額は大きくなるはずです。
曽我さんには今後、生活費、教育費と大変な金銭的苦労が待っています。数奇な運命で苦労された曽我さんを助ける事には異論がないと思います。“曽我さん基金”からまず始めて欲しいと希望します。ボランティアと同様に、他人の苦しみを理解し、“助け合い”に皆で協力すれば、多くの人々の“愛の輪”が確認され、拡がっていくでしょう。
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日本が史上最多の金メダルを獲得したことはおめでたいし、この期間、久しぶりにテレビの前で興奮した毎日を過ごさせてもらったことも幸せだった。年金生活者としての感想はこれに尽きるが、追加すれば、ブラジルのデリマ選手のことも忘れられない。
最終日のマラソンでトップを走っていた同選手は暴漢に襲われて銅メダルで終わったが、私が感銘を受けたのは、朝日新聞天声人語も賞賛した「それを気にしていない」と銅メダルを喜んで受取ったすがすがしい姿だけではない。インタビューで「すばらしい大会を開いてくれたキリシャに有難う」と言ったことである。不祥事に主催者が困惑している状況を察したこともあるだろうが、私には、このブラジル人マラソン選手の国際感覚がすばらしいと思う。優勝の気持ちを聞かれて日本の選手は、一様に、応援してくれた人々やコーチに感謝の言葉を述べている。メダルのために必死で頑張ってきたことからそれを支えてくれた周囲に感謝するのは当然であろうが、(テレビで聞く以外のコメントは分からないが)、日本の多くの選手は、特に金メダルを逃したら悔しくて(少なくとも最初に)ギリシャに感謝の言葉など思わないのではないだろうか?
20年ほど前イギリスに居た頃、スペインのバレステロス選手が全英オープンに若干19歳で初めて優勝したことがある。キャディあがりの彼が優勝の弁で「このようなすばらしいゲームを発明してくれたイギリス人に感謝したい」と述べた。日本の運動選手も、いつもインタビューの用意をしているだろうが、多少は国際感覚のあるスピーチをしてもらいたいものだ。
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