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2004年9月1日 VOL.17

■書評
・『補陀落幻影』― 今村 該吉
・『大東亞戦争の実相』― 後藤田 紘二

【私の一言】
『シンガポール便り−特別基金の創設提案』岡田 桂典
『アテネ・オリンピック』櫻田 薫

 

 

『補陀落幻影』
著者:東野光生  出版社:作品社

今村 該吉  
 こんな地味な、読みにくい作品名(ふだらくげんえい)で、しかも無名に近い著者の本が、大きな書店に平積みされている。静かに売れているようだ。NHKの週間ブックレビューで取り上げられ、日経新聞の書評でも好意的であったのが原因かもしれない。なにしろ作家、夫馬基彦は読みながら3度涙がこぼれたと言う。
 主人公とその友人は旧制高校の同級生であり、60歳後半である。戦争によりひとりは心に深い傷を負い、ひとりは失明した。主人公は図書館を定年退職した後、失明した友人の求めに応じて、それこそ日夜懸命に点字本を作る。それが主人公の生活の中心であり、心の張り合いでもある。また心の慰みにと、偶然入手した古楽器、笙を贈る。ふたりは情熱、野心、嫉妬、冒険、世間を語るわけでもない。交わりは静謐そのものである。
やがて友人に死の宣告が訪れる。主人公は彼のためにささやかな笙のコンサートを設営し、彼らを知る少数の聴衆に深い感動を与える。友人の死後、主人公は自らの身辺を一切整理し、暗黙のうちに世間に別れを告げる。友の散骨のために、1艘の船を買い求め、南の海(補堕落であろうか)を目指して自ら船を運ぶ。
最後に、結末で唖然とする場面が待っている。物語の面白さ、清冽な文章に引き込まれて夢中に読み進んでいると、ここで思わずはっとさせられる。
この本を読んだ方、筆者は一体なぜこんな結末にしたのか、その意味を教えてください。



『大東亞戦争の実相』
著者:瀬島龍三  出版社:PHP文庫

後藤田 紘二  
 所謂、太平洋戦争を語るとき、戦後の学校教育や殆どのマスコミ報道では、まず、この戦争を全面的に否定し、反省する事からスタートする。だが、著者はそういった世の中の風潮に一石を投じ、全く別の角度からその戦争経緯を語っている。
 日本は何故戦争への道を歩まざるを得なかったのか、当時日本人が守り抜こうとしたものは一体何であったのか、国家運営の中枢にあった人々の考えていたものはどういうものであったか、日本の陸軍最高統帥部、作戦部にいた自らの体験に基づき、さまざまな思いを綴っている。
 例えば“大東亜戦争は日本にとって自存自衛の受動戦争であった”、とか“戦争責任は日本に一方的にあるのではなく、米国にも戦争の責任がある(在外資産の全面凍結などの措置)“といったくだりなどは、その当否は別として、歴史を再認識させ、将来の日本を巡る諸問題を考えるに、格好の材料というか問題提起をしてくれる。
 多くの国際紛争のもとになる資源問題などの歴史を振り返ると、時の外交政策が国運に重大な影響をもたらす事が明白である。
 昨今のわが国の直面する諸問題、即ち<北朝鮮や平和憲法など>を考えながらこの書物を読むと、今日のわが国の国家運営能力に、不安を覚えながらも、それが限りなく優れたものであって貰いたいものだと、心底、祈らざるを得ない。






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『シンガポール便り−特別基金の創設提案』
岡田 桂典
 ジェンキンスさん騒動、このところ報道がぴたりと止まりましたが、流石に政府もやり過ぎたと思ったのかも知れません。重大犯罪人を超法規で入国させる、外務大臣が訴追免除の交渉に乗り出す、深刻な財政危機の最中に一家を“特別扱い”にして莫大な出費を続けるのを見れば、“国家の軽さ”に飄然とする思いです。
 私が特に心配するのは曽我さん一家の将来です。一家の大黒柱がいわば職場放棄して闊歩しているのを見れば、国民の“同情”も“何故我々の税金で”と“憎しみ”に変り、政治の“思惑”が結果的には一家に強烈なストレスを与えかねません。
それではどうすれば良いのでしょうか。私が住むシンガポールでは、特別の支援の為には“国費”は使わず、「基金」を作って国民に募金を呼びかけます。昨年のSARS(新型肺炎)が発生した際には、献身的に働き犠牲になった医療関係者を含め、多くの被害者救済の為の基金募集が行なわれました。募金は電話でも行なえ翌月の料金に加算されます。初日でしたか、テレビの画面で募金額がみるみるうちに増えていくのを見たのは感激でした。
 日本でも政治的な思惑、不透明な国庫支出を避ける為には特別NGOを設立してあらゆる支援対象に基金を作るべきだと思います。国単位、県・市町村単位で募金テーマを決め,NHKは公共放送ですから、全国・地方ニュースの時間の一部で、テーマと各募金の集計額を毎日伝えたら良いと思います。電話も使えれば送金料、出かける手間も省けます。日本の人口は多いので、一人当たりは小額でも集まる金額は大きくなるはずです。
 曽我さんには今後、生活費、教育費と大変な金銭的苦労が待っています。数奇な運命で苦労された曽我さんを助ける事には異論がないと思います。“曽我さん基金”からまず始めて欲しいと希望します。ボランティアと同様に、他人の苦しみを理解し、“助け合い”に皆で協力すれば、多くの人々の“愛の輪”が確認され、拡がっていくでしょう。




『アテネ・オリンピック』
櫻田 薫
 日本が史上最多の金メダルを獲得したことはおめでたいし、この期間、久しぶりにテレビの前で興奮した毎日を過ごさせてもらったことも幸せだった。年金生活者としての感想はこれに尽きるが、追加すれば、ブラジルのデリマ選手のことも忘れられない。
 最終日のマラソンでトップを走っていた同選手は暴漢に襲われて銅メダルで終わったが、私が感銘を受けたのは、朝日新聞天声人語も賞賛した「それを気にしていない」と銅メダルを喜んで受取ったすがすがしい姿だけではない。インタビューで「すばらしい大会を開いてくれたキリシャに有難う」と言ったことである。不祥事に主催者が困惑している状況を察したこともあるだろうが、私には、このブラジル人マラソン選手の国際感覚がすばらしいと思う。優勝の気持ちを聞かれて日本の選手は、一様に、応援してくれた人々やコーチに感謝の言葉を述べている。メダルのために必死で頑張ってきたことからそれを支えてくれた周囲に感謝するのは当然であろうが、(テレビで聞く以外のコメントは分からないが)、日本の多くの選手は、特に金メダルを逃したら悔しくて(少なくとも最初に)ギリシャに感謝の言葉など思わないのではないだろうか?
 20年ほど前イギリスに居た頃、スペインのバレステロス選手が全英オープンに若干19歳で初めて優勝したことがある。キャディあがりの彼が優勝の弁で「このようなすばらしいゲームを発明してくれたイギリス人に感謝したい」と述べた。日本の運動選手も、いつもインタビューの用意をしているだろうが、多少は国際感覚のあるスピーチをしてもらいたいものだ。






 
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