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■2012年9月15日号 <vol.210>

書評 ─────────────

・ 書 評   石川勝敏 『痛快!憲法学 』 
        (小室 直樹著  集英社インターナショナル)

・ 随 想   片山恒雄 『すれちがい』

・ 私の一言  幸前成隆『 君子に三戒あり』

 


2012年9月15日 VOL.210

『快!憲法学』
(小室 直樹著  集英社インターナショナル) 

石川勝敏    

著者は幅広い政治学者である。私が大学法学部の学生であった時から何回
か憲法の著書を読んだ事があるが、こんなに平易で面白い憲法の著書を読
んだのは、初めてである。
著書はローマ帝国の崩壊以来の封建制の社会から民主主義、自由平等の社
会に至る歴史、事実を解説し、日本人の理解の浅いキリスト教の本質につ
いて解説している。
西欧の憲法は神の前の平等という前提があるが、日本にはない。明治憲法
は天皇の前の平等という建前になっている。現在の象徴天皇の前に平等と
いう考えを日本人が持っているか。憲法の重大問題だと著者は指摘する。
私は木村凌二著「ローマ人に学ぶ」集英社新書と当書を通読したが、西洋
史を再度通読した感じで気分爽快であった。痛快憲法学に戻りトピックス
を拾い上げてゆきます。
「世界で最も進んだ憲法」といわれたワイマール憲法は内閣に立法権を与
える法律でヒットラー独裁政権になり、憲法は死んだ。アメリカ独立宣言
や合衆国憲法下で奴隷制度が活用されていた。もともと憲法は成文法でな
く慣習法である事を示してます。
刑法は裁判官を縛り、刑事訴訟法は行政権力を縛り、憲法に違反できるの
は国家だけである事を確認してください。
ヨーロッパで最初に作られた憲法は1215年のイギリスのマグナカルタです
が、王と貴族の対立を契約で守るために作られたものだが、民主主義の原
点になっていきます。
ヨーロッパの議会は、1265年にイギリスで開かれたものが最初で、王が領
主に課税するために開かれた。多数決の方法はローマ法王の選出の際のコ
ンクラーベの時に適用された。
南北戦争で多数決は定着した。
腐敗したローマ教会を改革したのはルターとジャン.カルバンである。カル
バンはキリスト教の予定説を発案した。予定説以後熱烈な信者が増えプロ
テスタントキリスト教は広まった。
予定説は近代民主主義も近代資本主義も生みだした。
「代表なくして課税なし」としてアメリカの独立戦争(ロックの思想)が
行われた。
日本人は律義な民族といわれますが、契約を守る事は別である。契約は言葉
に依って明確にされた約束である。ユダヤ教もキリスト教も神との契約教で
ある。イスラム教の創始者マホメットは最後の預言者とされ、人間に新しい
契約を与えた。それがコーランである。
日本の政治家が約束を守らないのは、契約の概念が無いからだ。
フランス革命はブルジョワジー主導で始まり、周辺各国が警戒し圧力をかけ
始めた。ここで急進派のロベスピエールが実権を握り、恐怖政治を行った。
彼はフランスから身分制を無くしようとした。民主主義の敵を一掃しようと
した。今から見れば共産革命でした。
現在の民主主義は法の前の平等を大事にします。この根底にキリスト教の
予定説があります。アメリカの平等は機会の平等です。ロベスピエールや
マルクスは結果の平等を求めます。アテネの自由主義、民主主義は奴隷制
に支えられていました。
18世紀になって、民主主義が花を開きますが、民主主義の脆さでナポレオ
ンが生まれます。共和国の皇帝です。ナポレオン3世も出ました。ナポレ
オン3世はナポレオン法典を作り、契約や所有権を守り経済は発展しました。
アメリカの大統領が独裁者にならない理由は、選挙期間の長さと選挙方法
にあります。
1791年に出来たフランスの憲法には武力行使の禁止が定められ、何らかの
平和主義条項を持つ憲法は現在185ケ国あります。国際紛争解決の手段
として戦争を放棄している国は8ケ国です。日本憲法9条はケロッグブリ
アン条約を元にしたものです。
1929年発の大恐慌で古典経済学はなすべきことは無かったが、ケインズや
サムエルソンが現れ需要が供給を生む理論が出て、アメリカのニューデイ
ール政策に結び付いていく。しかし景気回復は第二次世界大戦までかかった。
明治憲法は天皇と皇祖皇宗皇考との契約である事は明治憲法の告文で明ら
かである。拒否権が立憲民主制の分かれ道で日清戦争は天皇は反対であっ
たが、結果的に採択した。ロッキード事件でコーチャンの刑事免責を認め
たから現在の憲法は死んでいる。
今や日本の司法、行政、立法の3権は官僚たちの私有物になっている。
日本はパイロットなき巨船であり、早く改革しないと沈没してしまう。
第2の明治維新が必要である。民主主義を求めて行動的禁欲で進む事が必
要である。
A5版271ページの本で内容は豊富である。
もう一度憲法を考え世界史を考えてみてはいかがですか。一読をお薦め
します。

 

・随想


『すれちがい』

片山恒雄    

「伊勢物語」を拾い読みした。この物語は平安中期に書かれた小話集(こば
なししゅう)であり、全部で125話ある。そのなかの第24話「あらたまの年
の三とせ」が私の心にしばらく残った。片田舎に住む一人の男が宮仕えを
するために都に行くと言って女と別れを惜しんで出かけた。当時3年間音
信が不通であると妻の再婚は法律的に認められていた。女は待ちわびた末
にかねてから熱心に求婚していた別の男性の申し出を受け入れ、男と別れ
てから満3年目の夜に結婚することにした。しかし奇しくもその夜に男が
帰ってきた。女は戸を開けず和歌を詠んで男に差し出した。

 あらたまの年の三とせを待ちわびてただ今宵こそ新枕(にいまくら)すれ
(3年の間あなたを待ちわびて今夜という今夜ほかの男とはじめて枕を交
わすこととなりました)
男は次の和歌を詠んでこれに応えた。

 梓(あずさ)弓ま弓つき弓年を経てわがせしがごとうるはしみせよ
(長い間私があなたを愛してむつまじくして来たように、新しい夫とむ
つまじく暮らして下さい)女は男の去っていく足音を聞き、激しい後悔の念に襲われた。自分が本当
に好きなのはあの人なのだ。女は決意を新たにして家を飛び出して男の跡
を追った。しかし、道を間違えたのかいくら走っても男は見つからない。
しかし、なんとしても自分の愛する気持ちを伝えたい。女は近くにある岩
に指からにじみ出た血で歌を書き付けた。

 あひ思はで離(か)れぬる人をとどめかねわが身は今ぞ消えはてぬめる
(昔から私の心はあなたに寄りそっておりましたものを、いまさら捨てて
行っておしまいになるあなたを引き留められなかった私の身は今こそ消え
果ててしまいます)女は書き終えるとその場で息絶えた。

  私はこの話を読んで昔を思い出し何か心当たりを感じた。それは戦後
間もない中学生の頃に家族で見た、あれはたしか「戦争と平和」という東
宝映画であった。娯楽の少ない当時、映画は家族で見るのが慣わしであっ
た。主演の池部良が戦争から帰ってみると妻の岸旗江はすでにほかの男と
結婚している。
その男は小学校の教諭で伊豆肇が演じていた。青空教室のもとで熱心に生
徒に教えているのを垣間見た元の夫はその真摯な教師の姿に感銘を受け、
新しい夫婦の幸せを念じながらいずこともなく姿を消すのである。
ひょっとしたらあの映画は伊勢物語にヒントを得たのかもしれないと今あ
らためて思うのである。

 もうひとつこれに似たドラマがある。菊池寛の「父帰る」である。
「戦争と平和」を見たほぼ同じ頃ラジオにかじりついて聴いた記憶がある。
むかし、家を飛び出したきり長いあいだ帰ってこなかった父が突然帰って
くる。そしてやつれ果てた姿で遠慮がちに玄関に立っている。母や弟妹は
すぐに父を許し、いたわりの声をかけて家に中に招じ入れようとする。し
かし長男だけは頑なに父を拒絶する。父がいないために母を始め家族がど
れほどの苦しみを味わったか。今頃になってノホホンと帰ってきても到底
許すわけにはいかない。父は、黙って家族の前から姿を消す。しばらくた
って長男は突如として立ち上がり父を探しに家を飛び出すのであった。
 これら3つの話は時代が変わっても、また夫婦あるいは父子という設定が
変わっても、家族における情愛の深さと行き交う運命のすれ違いが物語の
主題であることに変わりはない。

それにしても人間の営みのなんとも言いようのない悲哀。人間とはなんと
いじらしい存在なのか。そしてその根底にある人間愛に古今を通じて読者
や観衆や聴衆は等しく心を打たれるのであろう。
(注)伊勢物語については、日本古典文学全集「竹取物語・伊勢物語・落
窪物語」(河出書房刊)を参考にした。

 

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『 君子に三戒あり』
幸前成隆

  
 
 
曰く。「君子に三戒あり。小(わか)き時は、血気未だ定まらず。これを
戒むること、色に在り。その壮なるに及んでは、血気まさに剛なり。これ
を戒むること、闘に在り。
その老いたるに及んでは、血気既に衰う。これを戒むること、得に在り(論語)」。
闘争欲を、老年の時は物欲を、抑えるように気を付けるということである。
孔子の言葉である君子は3つのことを注意しなければいけない。若い時は
色欲を、血気盛んな壮年期は、闘争欲に気をつけなさい。血気衰えた老年
季は、物欲に気をつけなさい、という教えである。
「止まることを知る」「足るを知る」ことの重要性のおしえである。 

 

 


男の体の変化の節目は、8の倍数、女は7の倍数だそうです。
この節目に、男は次のようなことが起こるそうです。
8歳:乳歯が生え変わる。16歳;精通を迎える。24歳;骨格が形成される。
32歳;体が最も充実する。40歳;体力に陰りが見える。48歳;白髪が見える。
56歳;精気が落ちる。64歳;歯,髪抜け落ちる。72歳;白内障等。80歳;腰痛 膝痛、物忘れ、食が細る等。(「黄帝内経」養命酒広告より)
年齢の節目もさることながら、今は季節の変わり目です。皆様におかれましては 一段と健康に、ご留意ください。この面でも日頃の生活で、「止まることを知る」、 「足るを知る」ことが大切なようです。
今号も貴重なご寄稿をいただきありがとうございました。(H.O)


 





 
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