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■2008年2月1日号 <vol.99>
書評 ─────────────


・書評 亀山 国彦   『沖縄戦・渡嘉敷島集団自決の真実』
 
・【私の一言】川井 利久 『魂の浄化』
・【私の一言】新田 恭隆 『ドトール考』


2008年2月1日 VOL.99


『沖縄戦・渡嘉敷島集団自決の真実』
著者曽野 綾子    出版社:ワック
    

亀山 国彦  


  本書は、旧日本軍の命令によって沖縄住民が集団自決を強いられたと語り継がれた悲劇を、渡嘉敷島に絞って徹底的に事実を聞き集めたノンフィクションで、「ある神話の背景」(73年、文芸春秋)を改訂したものである。
通説では、「大戦末期、渡嘉敷島に船舶特攻隊が駐屯したが、隊長赤松大尉(当時25歳)は船の出撃を中止し、地上作戦をとると称して、舟艇を自ら破壊し、住民約300名に手榴弾を渡して集団自決を命じた。“持久戦を行うため、非戦闘員を自決させ、軍人が全ての食料を確保し、自給体制を整える”前提であった」というものである。
 著者は、自決命令を最初に記したのは50年沖縄タイムス社企画出版の「沖縄戦紀・鉄の暴風」であること、その後に発表された資料はいずれもこれを引き写したものであること、これを執筆した人物は直接体験者でない二人からの伝聞証拠を元に書いていることを知り、赤松隊長・その部下、村長、隊と村との連絡役であった巡査、自決の場にいて生き残った人たちとのインタビューと資料の分析を進め、その場の状況、住民心理を克明に再現する。
その結果、集まった避難住民の周辺に米軍艦砲射撃弾が落下し、住民が恐怖のため異常な雰囲気の中で、自発的に、ばらばらに自分の家族を殺害したことが浮かび上がった。さらに部外者から、軍命令であったことにしないと、島民で死んだ人たちの遺族に年金が下りなかったという説も得ており、70年に慰霊祭出席のため沖縄を訪れた赤松は、記者会見で「自決命令」を明確には否定せず、「そっとしておいて欲しい」といったことと符合していると考える。
 しかし、著者は「赤松氏が自決命令を出した」と直接の体験から証言した当事者に一人も出会わなかった」いう結論に止め、「多くの部分が推測で断罪され、しかも推測の部分ほど断罪の度合いも激しくなっている」と厳しく断罪を戒めている。
 集団自決については、教科書検定にパスし、その後外され、再び復活されようとして政治問題化し、裁判でも争われているが、その前提としての本書に見られるような綿密な事実調査は行われているようには思えない。南京大虐殺、従軍慰安婦も事実とは別な推測による記述から断罪されているとすれば、問題は大きい。

 
 
 
 
  

 

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『魂の浄化』
川井 利久

   歳をとって来ると、年々お正月の感激が少なくなってくるようだ。
過ぎた歳をご破算にして、新年こそはと気持ちや目標を新しく切り替える事はマンネリを防止して,リフレッシュする意味深い事である。
 しかし社会体制や時代の流れはそう簡単に切り替えが出来ないし、悪化や劣化が進んでも制御不可能になる場合が多い。
敗戦後の日本社会の体制は今矛盾や閉塞感が強くなって、国民の幸福度を低下させている。その原因となるものの最大の点は日本人のモラルの劣化ではないだろうか。
 資本主義社会の競争や効率至上主義によって、良心や正直、思いやり、やさしさといった人間のモラルが損なわれて、野獣のような人間が増えてきた。
その結果勝ち組と称する少数と多くの負け組を発生させて、ワーキング・プアーという何とも悲惨な階級を生じさせている。
 人間の歴史は社会の歩みの中での行き詰まりには戦争や革命によってリフレッシュを実現してきた。しかし現代の科学技術では人類滅亡になるか、流血の規模が大きすぎる。何とか知恵と努力で平和裡に世の中を変えて行く方法はないだろうか。
 時間はかかってもやはり教育ではなかろうか。良心を最高の価値において、欲望を制御して、他人を思いやるバランス感覚のとれた教育を幼児期から植え付けることが大切だ。そして自分の能力に応じて努力すれば誰でも安らぎと夢のある生活が容易に手に入る世の中にしないとよい社会とは言えない。少子化を言う前に生まれてきてよかったと感じられる社会にするのが先であろう。


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『ドトール考』
新田 恭隆

   この頃時々ドトールに行く。私の乗り降りする駅の2階にあるドトールが3、4年前にリニューアルして入りやすく過ごしやすい喫茶空間になったからである。
 喫茶店といえば、著名な英文学者が朝から夕方まで喫茶店にいてそこで仕事をしていると以前本人から聞いて驚いたことがある。私は喫茶店には友達と入るか一人で入って一寸気分転換をするかであった。今は、新聞の長い解説記事などを切り抜いてためておきそれをドトールに持ち込んで読むことが多い。不思議に喫茶店では集中力が高まるからだが、最近電車に毎日は乗らなくなり電車以外の新しい読書空間を求めた結果かも知れない。
 こうしてドトールに入って少し周りを眺めていると、時間帯によって入店客が変化することに気がつく。朝はビジネスパーソンが朝食をとったり早起きの年寄りが新聞を拡げていたりする。朝から本とノートを開いて勉強している若い人も既にいる。午前中はいわゆる中年婦人は少ない。朝の家事が忙しいのだろう。
 午後になると中年婦人が増えてくる。ビジネスマンが息抜きに入ってくる。次第に学生も多くなって、店は入店客であふれる。150席位(うち喫煙席50席位)が一杯になって、どうかするとコーヒーを抱えてうろうろすることになる。夜は10時までだが結構夜は夜で忙しいようだ。
結局、学生、若い女性、ビジネスパーソン、中年女性、高齢者などあらゆる人達が入っているのを見ると、昔の喫茶店とは違うものだと思う。特に、中年女性や高齢者の姿に社会構造の変化を感ずる。勉強(資格試験勉強も多い)をしている若い人もよく見かける。それから砂糖の袋(シュガースティックというのか)がどんどん小さくなる。ドトールは社会動態の観察にも適している。
 それにしても、最近は細かいことが見えるようになってきたものだと思う。少し前までは喫茶店に入っても町を歩いていてもなにも見ていなかった。今では落ち葉の一片にもなにかを感ずる。心が豊かになり物質的な豊かさとは違った心境を得ることが出来る。誰もがそのような気持ちになって余裕を持った暮らしを目指すようになれば、世の中ももっと住みやすくなるだろう。政治や政策で文化は変らない。この頃つくづく思うのは、私たちの生活改善は政治や政府(お金)の問題ではない、私たち自身の問題なのだということである。「ああそうか そういうものか 秋の風」という句(多田道太郎)があるそうだ。
 さて、ドトールが身近になってから気がついたのであるが、ドトールは年商700億円の一部上場企業であることだ。学生時代から慣れ親しんだ個人経営の喫茶店がなくなるはずである。それはさみしいことなのだが、安いのは有難い。
 なにしろブレンドが180円で、しかもドトールのブレンドはやや酸味があり私の好みにぴったりであるからだ。
 ところで30年以上前、福岡にいた時、職場の若い人が出張しても最近はどこでもロイヤルがあるから安心して食事ができると云うのを聞いて、そんなものかなと思っていたものだが、今、知らない駅前でドトールを探している私がいる。


  前号では、私の手違いから、私信を掲載しご寄稿者、読者の皆様ご迷惑をおかけいたしました。こころからお詫び申し上げます。

 さて、本日から2月。間もなく節分・立春となります。「ドトール考」の新田さんではありませんが、季節にも匂いがあり、2月は、東風に乗って磯の香りをはじめ春の匂いがしてきます。この香りで元気がでるものです。

 また、最近、日本及び日本人は世界の中で小さくなってきていると言われていますが、このままでは世界においていかれるかもしれません。その対応には、川井氏のご指摘のように欲望を肥大化させて際限なく不幸に向かって行こうとする魂を浄化する必要があるかも知れません。
 春の香りを思い切り吸いこみ、気分を新たに日本人の基礎的精神である忘己利他による魂の浄化を行ない、再度、日本を大きくしたいものです。
(HO)








 
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