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2006年11月1日 VOL.69

 

 

『晩年の美学を求めて』 
著者:曽野綾子   出版社:朝日新聞社

片山 恒雄 

 著者は37歳を迎えたとき、「戒老録」を執筆し、壮年期であればこそ気のつく老人に向けての戒めを数多く示された。いま当時の2倍の年齢に達し、晩年にいかなる美学を求めようとしているのか。
例えば「人の世にあることはすべて自分の上に起こり、人の中にある思いはすべて私の中にある。」といった人生の美学としての数々の言葉を記している。
しかし、私にとって一番印象深かったのはある一人の患者がニューヨーク大学の壁に書き付けた次の『病者の祈り』と著者のコメントである。
  大事をなそうとして力を与えてほしいと神に求めたのに
   慎み深く従順であるようにと弱さを授かった
  より偉大なことができるように健康を求めたのに
   より良きことができるようにと病弱を与えられた
  幸せになろうとして富を求めたのに
   賢明であるようにと貧困を授かった
  世の人々の賞賛を得ようとして権力を求めたのに
   神の前にひざまずくようにと弱さを授かった
  人生を享受しようとあらゆるものを求めたのに
   あらゆることを喜べるようにといのちを授かった
  求めたものはひとつとして与えられなかったが
   願いはすべて聞きとどけられた
  神のみこころに添わぬ者であるにもかかわらず
   心の中の言い表せない祈りはすべてかなえられた
  私はあらゆる人の中でもっとも豊かに祝福されたのだ
コメントは“大切なことは、この詩に多くの人が深く共鳴し、そこに人生の意味を発見し、納得し、希望や目的が与えられたということだ。”
この詩のようにあらゆる人生は、重層的・複合的に考え行動することが重要であるが、現実は難しい。
著者は「老人になると幸・不幸まで均(なら)して考えることができるようになる。」ということで、老人こそ、経験を生かしすべてを均して考えることを美学の真髄とすべきと考えている。同感である。




 
『浮草みれん/お不動さん絹蔵捕物帖』
著者:笹沢佐保原案/小葉誠吾   出版社:光文社 
渡辺  仁 

 本書は、木枯し紋次郎などの著書で一世を風靡した笹沢佐保の「お不動さん絹蔵捕物帖」を原案として、小葉誠吾氏(晩年の笹沢氏に薫陶を受け、現在、本名で活躍中の時代小説作家の別ペンネームである由)が新展開しているもの。
 時代設定は、文政年間/加賀前田家百万石の上屋敷に赤門が完成した頃の話。
駒込目赤不動南谷寺近在を縄張りにしている岡っ引の絹蔵が繰り広げる捕物劇。嫌われ者の多い岡っ引には珍しく、町内の人々からモお不動さんの親分モと呼ばれて親しまれている。本編で挑んでいるのは、自身の過去(少年時代の一時、盗賊団の首領に育てられた・・・/小葉氏の新設定)も絡んだ連続殺人という難事件。
 笹沢氏の原作を読んでいないため新旧の比較は出来ませんが、殺人鬼との対決・意外な黒幕の正体など、時代推理小説としてなかなかの作品でミステリー通にも、お薦めです。 なお、当時の「奉行所の組織」について本書のイントロ部分に、興味深い記載がありましたので、現在の行政組織との比較等々はさて置き、ご参考までに、以下、原文のまま紹介いたします。
〜〜〜 江戸市中の警察は、実は民営である。町奉行所の業務は行政・立法・民事訴訟の受付および刑事訴訟と裁判、刑の執行と、多岐にわたっている。南町と北町の二つが設置されているが、これは地域別ではなく、月番で業務を受け持つシステムになっている。
 ほかの役務については、江戸の規模が拡大するにつれて増員されていったが、警察業務だけは、創設当時以来、百万都市となったこのころでさえ、南北両奉行所に定町廻方同心各6名、臨時廻方同心各6名の、合計24名だけで増員がなかった。必要に応じて岡っ引を増減して処理したからである。
 かれらは「廻方同心」という名のとおり、主たる役務は、受け持ち地域の番屋や自身番などを巡回し、異変の有無を確認することである。いってみれば現代警察の方面本部長だと思えばいい。
 御目見得(おめみえ)なし、一代抱(ただし事実上の世襲)30俵2人扶持とはいった低い身分ではあるものの、れっきとした幕臣である。
この下に位置する、いわば警察署長が岡っ引である。
これらは同心の手札があるのみなので、巡査といえる手下の給与などはすべて自前で調達するのが原則であった。縄張り(所轄)内での捜査・運営資金の調達方法はそれぞれの岡っ引に一任されていた。
最も多いのが「御用聞き」である。十手を持って商店に顔を出し、「何か用はあるかい」とたずねる。
すると手代なり番頭なりが「何かあったらよろしくたのみます」とそれなりの金銭を渡す。  〜〜〜





 

 

 

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『靖国問題雑感』
河西 孝紀
靖国問題では、A級戦犯の分祀がよく議論されるが、小手先の議論だけでは何の解決にもならない。靖国問題は「歴史認識及び戦争責任」の解明なしに根本的な解決はあり得ない。東京裁判は国際法上疑問があり、また、戦勝国が検事と裁判官を兼ねた問題の裁判であった事は多くが認める処である。従って、東京裁判を政治決着により受諾したいきさつはあるが、戦後から今日迄避けて来た日本人自身による「歴史認識と戦争責任」の結論を出すべき時期に来ている」と思う。もう一つ大切な事は隣国の文化や思想をよく理解する事だ。中国は三世紀の魏志「倭人伝」の時代から既に倭国を中国の属国と見做しており中華思想によって来るプライドから「日本ガ如キニ」侵略された恨みは簡単に消えるものではない。また某大学の韓国人教授に聞いた話だが 「韓国の人々の植民地支配、売春問題、靖国、竹島に関 わる「怨」の感情は簡単には無くならない。これを解決するには日本がもう一度戦争をして勝つしかない」 という程現実離れして難しいと云う。従って、先方に振り回される事なく、安易な打開策に走らないことだ。



 

 
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