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2006年10月1日 VOL.67

 

 

『百年分を一時間で』 
著者:山本夏彦   出版社:文春新書

板井 敬之 

この本の著者山本夏彦は、インテリア専門誌「室内」を創刊、世相について数多くの批判的な書物を著し、平成14年10月に87歳で亡くなった。この本は、「室内」の発行元である工作社の女子社員の何人かを聞き手に、この百年を1時間で振り返ろうという趣旨で作られたとのこと。この本の前年に刊行された「誰か戦前を知らないか」の続編とされている。
章立ては、『流行歌』、『花柳界』、『芸人』、『文士』、『貧乏』…等15の項目から成る。
『花柳界』という言葉も今では殆ど死語になったが、芸者屋、待合、料理屋が並んでいる一郭を“三業地”と称するとか、料理屋の女中は、芸者に対して大きな力を持っているとか、昭和40年代に社会に出た我々が知らないことを説明している。『社会主義』の項では、「社会主義には正義があるが、資本主義には正義がない。その資本主義が我々には相応しいと気が付いた」との説明も秀逸である。これまで著者の本を何冊か読んで来たが、物事を相対的に見ようとする一貫した立場と、ギリギリまで削ぎ落とした文章から、魅力的な“書き手”との感を深くしている。
幸田文について触れている「最後のひと」が版元品切れで、どうしたら入手できるのか、目下思案中である。それこそ「誰か『最後のひと』を知らないか」である。




 
『カウンセリング心理学入門』
著者:国分康孝   出版社:PHP新書 
堤 貞夫 

 私が、ふとしたことからカウンセリングの道に入って13年が経つ。思えば遠く来たものという感慨もあるが、この間の世の中の変化は、「こころ」の問題について、目覚しいものがある。書店には、心理学、カウンセリングに関するコーナーが出来ており、そのほかにも性格判断、メンタルヘルスから占い、生き方指南など、さまざまな本が並んでいる。
 国分康孝先生は、元筑波大教授、日本カウンセリング学会会長、日本産業カウンセラー協会副会長で、文字通りカウンセリング学とその応用の両サイドで、最高の地位におられ、この業界、学会で知らぬ人はいないが、案外、一般社会ではそれほど知られていないような気がする。
 このことについては、「カウンセリング」についても同じで、人事部にいた私でも「企業は人なり」といいながら、「人」の心の動き、コミュニケーション・スキルの本質を理解していなかったし、なんとなく、カウンセリングという言葉や扱い方に、胡散臭い感蝕を持っていたと感じる。
 私が最初に産業カウンセラー養成講座に取り組んだとき、ようやく少し勉強が進んで、図書館で本を調べていると、軒並み国分先生のご本が並んでいて驚嘆したことを覚えている。
 「カウンセリング心理学入門」では、カウンセリングの基礎にある学問はカウンセリング心理学であり、実践をする人、カウンセラーを知識体系として支えているのだ、という明確な位置づけ、心理療法の訓練を受けた臨床心理学出身者の行うカウンセリングと人生問題の相談などをしているカウンセリングとは、病気の治療〈マイナス領域の改善〉と、人の育成〈プラス領域の開発〉という方向の違う領域での働きであることを識別すべきで、カウンセリング心理学は多様な相談活動という育成・支援に貢献しているのだ、ということを知ってほしくて書いた、とおっしゃっている。
【内容】
プロローグ/私はなぜカウンセリング心理学の道に進んだか
これが実に面白い
第1部/カウンセリング心理学とはどのようなものか
隣接領域との相違
第2部/カウンセリング心理学の実践法
職場、教育、家庭、社会生活
第3部/カウンセリング心理学を学ぶとはどういうことか
理論、技法、哲学、倫理等
エピローグ/日本におけるカウンセリング心理学の課題
200Pの新書だが内容豊富
要するに、人はなぜ成長するのか、良い人間関係を築くにはどうすればよいのかが分かる。
最後に一言、『この一冊でカウンセリング心理学のすべてが分かるというものではない。「カウンセリングというものは、意外に考えることや知っておくべことが多いものだ」というため息にも似た感慨を持ってもらうのが目的である』、と国分先生は書かれている。




 

 

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『シンガポール便り(9)  マンションの現金化』
岡田 桂典
日本ではあと5年もすると建築後30年以上のマンションが100万戸になるそうですが、そのうちにスラム化して大きな問題になるといわれます。
シンガポールでは古いアパート(マンションと呼ぶのはは気恥ずかしいので)はデベロッパーが買いに来ます。日本人は家は財産と思っていますし、様々な理由でなかなか売りませんが、シンガポールでは“現金になる”のであればアパートの持ち主は喜んで売るのです。シンガポール人の主体は中国人系で“利口な経済人”ですから、“現金を如何に回すかがオカネ儲けに最も大事”だと良く知っています。時代は変ります。現金であれば、不動産・株・債権・外貨でも今最も有利に運用できる方法を選べます。もう一つは同じように現金の価値を知っている有能な政府が作った税制です。不動産、そのほかの金融商品の儲け、利子所得等は一切無税です。動産も不動産も区別なく気楽に処分・運用出来ますからおカネが国中をどんどん回ります。
日本ではスラム化がそのまま放置されそうなのに、シンガポールではマンション団地も容易に現金になります。現金化100億円、その後に100億円で再開発されたとします。この200億円が市場をぐるぐる回って、大きな“富”を作り出すとすれば日本との経済成長の差は愕然となるほどです。
経済学の教科書には「現金の価値を知っている国民が多い国の経済成長は高くなる」とは書いてないようですが国民性の差は大きいですね。残念ながら“不動産が現金より良い”と思っている日本人は簡単に変えられませんが、東京の土地が足りない等と諦めないで、せめて税制、規制撤廃、金融、教育にうんと頭を使っていただけば、再開発が絶対必要な古いマンションも“宝の山”になると思います。




 

 
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