■2007年7月15日号 <vol.86> 書評 ─────────────
・書評 今村 該吉 『バッテリー 6巻』 ・書評 片山 恒雄 『すばらしい昔の日本人』 【私の一言】佐藤 広宣 『連想検索エンジン』
2007年7月15日 VOL.86
『バッテリー 6巻』 著者:あさのあつこ 出版社:角川文庫
「バッテリー6巻」を読み終え、ホッとしている。「1」〜「5」についてはすでにこの欄で書いた(06年3月)。「6」はシリーズの完結編である。 中学1年生で天才投手である原田巧と、同様に天才バッター、中学3年生の門脇とがいよいよグラウンドで対決す日が来た。結果はどうなるか。 早く結末を知りたいと、ページを繰る手がもどかしい。しかし急いではいけない。あさのあつこは2人だけに焦点を当て、勝負の結果だけを書いているのではない。中学生同士の友情、中国地方の小都市の自然の美しさをていねいに書き込んでいる。そこにこの青春小説の良さ、さわやかさがある。 はたして2人の対決の結果はどうだったのか。読者は一部肩透かしを食らった思いをするかもしれない。しかし私はこれでよかった、と思っている。 いま読み終えて、いい物語を読み終えた後の幸福感を感じている。私にもまだ少年時代のわくわくする熱いようなものが残っていたのか。 「バッテリー」は映画化され、現在上映中である。はたして原作の味が活かされているのか、それとも多くの小説の映画化と同じように、幻滅してしまうのだろうか。心配ではあるもののやはり映画も観たい。
『すばらしい昔の日本人』 著者:神田 淳 出版社:文芸社
昨今の眼を覆いたくなる乱れた世相と道義心の退廃振りを、武士道と儒教思想に鎧われた昔の日本人が見たらなんと言うだろうか。「違う。これはわれわれの子孫である筈がない。」と。日本人一人ひとりが現下になすべきことは、昔の偉大な日本人の事跡をたどり、大きな感化を受けて精神の刷新をはかり、それを実行に移すことではないだろうか。書籍との出会いは人との出会いに似ている。本書を偶然の機会から手にしたとき、読まねばならないと思った。 驚くべき広範な文献を渉猟して、それぞれの思想の真髄を余すところなく描き出し、それでいて著者の記述の姿勢はきわめて謙虚である。本書で紹介している偉人は7名。 唐に渡り、3代にわたる皇帝の国師を勤めた当時最高の指導者であった恵果から正嫡に指名され、密教の真髄を授けられた空海。 ひたすら衆生を救済すべく仏道を実践する生涯を通じて、その門弟から、法然、栄西、親鸞、道元、日蓮、一遍などほとんど網羅する日本の高僧を輩出した最澄。 ケネディ大統領の就任時に、日本で最も尊敬すべき人物は上杉鷹山であると言わしめたものは、深い人間愛と藩主機関説とでもいうべき彼の政治哲学が、近代民主主義に通底していることを大統領が見抜いたことによるものである。 その名声を伝え聞いて訪れた藩主池田光政候を玄関先で待たせて、村の子供たちに「孝経」を講義し続けた陽明学の中江藤樹。 西欧列強によるアジア侵略の脅威の中で、一身の独立なくして一国の独立なしとして、独立不羈の精神を説いた福沢諭吉。 そのほか、親鸞と聖徳太子が挙げられているが、紙幅の関係で割愛する。 著者は、職業的文筆家ではなく、通商産業省(現経済産業省)を経て現在京葉ガス(株)常務の要職にある。私事ながら、著者が関東通産局公益事業部長時代、NTT研究所に案内した際、シンクロトロン(粒子加速器)を前にして、専門的質問を連発して説明員をうろたえさせていたのを思い出す。秀でた眉を持つ長身で物静かな紳士が、今をときめくマルチタレント神田うのの尊父であることを知る人は少ない。
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