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2006年8月1日 VOL.63

 

 

『大地の咆哮』 
著者:杉本信行   出版社:PHP研究所

亀山 国彦 

 著者は元上海総領事で中国特務機関の脅迫で自殺に追い込まれた館員の上司であり、末期の肺がんで闘病中である。同氏は北京・瀋陽での語学留学、交流協会台北事務所、在中国大使館勤務等を歴任したチャイナスクールの外交官だが、経験に基づき極めて率直かつ整然と日中関係の背景を分析している。
中国の地方プロジェクトについて日本の資金協力を利用すべきかどうかは国家計画委員会対外経済貿易部の判断に任される。このため、不足資金割り当て決定をしてくれた貿易部とその担当者に地方政府の感謝の念が集中し、カネの出所である我が国への感謝には殆ど繋がらない。小額案件でも地方から直接要請を受け、支援することが真に感謝される援助だと力説する。
世銀総裁の「現在の中国の貧富格差は社会正義、道徳の観点から許容範囲を超えている。本来ひとつの国として公平、公正な運営がなされれば、このように差は開かない」との言を紹介し、中国政府は社会各層の負け組に募る不満の捌け口、内部矛盾の矛先を反日運動に向けさせていると解説する。
湾岸戦争におけるハイテク兵器の威力を見て資源配分の変更不可欠と判断した軍中枢が、低学歴農村出身兵士大量削減に踏み切り、これら負け組の元軍人・軍関係者の不満を「台湾統一運動」に向けさせているという。
上海の超高層ビルにはエレベーターわずか6基、ラッシュ時には15分待ち、省エネに対する配慮もなく、デザインが特殊でメンテ費用が嵩み、将来廃墟となる危険を含むバブルの産物と矛盾の典型例としている。
靖国問題では我が国特有宗教観の国際的に丁寧な説明と遊蹴館展示変更を提案している。
中国の矛盾を救うには、民主化を促進すべきで、その担い手として内部からの改革ではなく、外部の力「バチカン」の仲介に期待している点が新鮮である。
より直裁な産経新聞古森義久著「“日中友好”のまぼろし」(徳間文庫)との併読をお勧めしたい。




 
『子会社は叫ぶ』
著者:島本慈子   出版社:筑摩書房 
福島 和雄 

この数年企業の倒産には、必ずと言っていいほど「子会社」が登場している。
過去の大企業の倒産、北海道拓殖銀行、山一証券、日本長期信用銀行などの倒産の例を見ても「子会社」に損失を隠し、不良債権を移して問題を先送りしていたようだ。日本の会社は数年前から国際会計基準が導入され、親会社の赤字を子会社に移す「負債の飛ばし」ができなくなった。
 この国際会計基準とは連結決算、保有株式の時価評価、退職給付債務の計上などである。この会計基準の導入により、企業はいつも黒字にしなければ、株価が下がる。だから企業は赤字が出そうになると、原価特に人件費を削るようになった。つまりこの会計基準の導入は日本の雇用慣行を痛撃した。日本の大企業は伝統的に中高年社員を子会社や関連会社に出向・転籍させて、グループ全体として雇用を確保する方法をとってきた。この日本的なやり方が通用しなくなったのである。アメリカが規制緩和を実施した80年代は、規制下にあった産業で多くの失業者が出た時代であった。この失業者は主に「ウオールマート」「マグドナルド」など以前になかったタイプの産業に吸収された。しかしこの新産業の平均賃金は旧産業の半分以下になったそうである。規制緩和は万能薬ではない。日本では連結決算導入を目前にした1999年以降、大企業において子会社の淘汰が始まった。連結決算ではグループ全体で企業が評価される。
赤字決算でもないのに、雇用調整が行われるようになった。日本の企業もトヨタやキャノンのような「勝ち組」とそごうやダイエーのような「負け組」がはっきりしてきた。雇用の問題は現在の日本にとって、一番重要な問題である。規制緩和とは何か、種々と考えさせられる本である。





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日本の外交』
川井 利久
今回の北朝鮮のミサイル問題でまたしても、日本の外交の読みの浅さと無力さに歯ぎしりをした。中国やロシアのしたたかさ、英国やフランスの変わり身の早さに、愚直な日本の外交の単純さがもてあそばれた感が深い。
ヨーロッパや中東そして中国大陸にあって、多民族のせげみあいの中でもまれぬいた民族のしたたかさと元寇の次が第二次大戦の日本民族のうぶさ加減に情けなくなる。
国際援助額、国連分担金の国際比較を大幅に上回る負担を長年やってきて国民の借金は一人あたり600万円を超えているのに、感謝されるどころか、国連の安全保障委員会の常任理事国一つをとってもうまくいかないとは。
マッカーサーが離日の折に日本人の精神年齢は12歳だと言ったことには真実がある。
安定して平和で経済発展も順調な日本の社会では、人間はともすれば純粋培養的に育てられ、人間の持つどろどろとした動物的なしたたかさを持たなくても生きていける社会に安住しているから、こすからい大陸の諸民族のかもにされるのかもしれない。
北朝鮮を非難するのは易い、が、どうすれば平和裡に事を納め、近隣の国々も満足させられるか、アメリカ一辺倒ではもう国際社会では相手にされない時代に入っている。
金をばらまいたり、理解を求めたりばっかりの外交におさらばして、腹を据えた賢い日本外交の構築に知恵を絞りたいものである。
逆境に育った人間は相手の心の綾や痛みがわかり、複雑な人間関係にも耐えて生き抜く事が出来ると言う。アメリカ外交は単純、日本外交はさらに単純。
気狂いや泥棒にも三分の理があるという。
すぐに刀を抜いて斬りつけるのはいと易い。その後がどうなるのか、周りがどう動くのか、それを我が身にどう返ってくるのか、それを読み切って行動するのが、このこすからい国際社会をリード出来る政府と言うものではなかろうか。国連の分担金が多いだけでは世界は日本の常任理事国入りを支持してはくれない。
第二次世界大戦の敗戦国として61年、日本の外交はそろそろ12歳を脱したいものだ。





 
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