このサイトでは書評、映画・演芸評から最近の出来事の批評まで幅広いジャンルのご意見をお届けしていきます。
読者の、筆者の活性化を目指す『評論の宝箱』
意見を交換し合いましょう!

 
       




■2011年1月1日号 <vol.169>

書評 ─────────────

・書評     片山恒雄 『天地明察』  
             沖方丁著  角 川 書 店

・【私の一言】 岡田桂典 『変化の兆し、デフレの終焉か』

・【私の一言】 幸前成隆 『足るを知る』


 



2011年1月1日 VOL.169


『天地明察』 
(沖方丁 著 角川書店)

片山恒雄   



正月に縁の深いものに暦がある。元旦に最初の1ページをめくるときの祈り
にも似た清新な気持ち。私は昔から暦に惹かれている。自転しながら太陽の
周りを公転する地球とその周りを常に同じ面を見せつつ公転する月。46億年
にわたり常に変わることなく悠揚迫らざる周期運動を続けてきたこれらの天
体。それはいかなる自然現象をも凌駕する壮大な営みに思える。人類はこの
精緻な円運動を暦として定着させて文明の礎とした。

驚くべきことは、江戸時代それも17世 紀に2〜3年先の日食・月食の発生時
期をかなり正確に予測し、公表していたことである。しかし、どんなに精密
な暦でも年数の経つうちに少しずつ狂いが生ず る。本書の主人公渋川春海は、 早くからその点に気づいて、幕命を受けて数人の仲間とともに日本中を巡り 天体観測を続け、永年にわたる苦心の結果、貞享暦 (じょうきょうれき)と 呼ばれる暦を完成させた。

そ もそも彼の家は代々殿様の前でお城碁を打つ家柄であった。従って多忙な
中にも絶え間ない碁の研鑽を続けなければならない宿命にあった。囲碁ファンのなかに は安井算哲という彼の本名を識っている方は多いであろう。また当時自ら創作した和算の問題を神社に算額(絵馬)として奉納し天下に挑戦する習俗が広く流行 しており、彼はそれにも全霊をもって打ち込む。そこに和算 家として知られる関孝和が登場する。幾多の難問を瞬時にして正解に導き、出題者から「明察!」の 賛辞をほしいままにしていたのである。その関もひそかに暦の研究をしていて、 その膨大な研究成果を渋川に渡して蔭ながら協力している。

暦が完成するとその発刊事業には頒布の過程でかなりの利潤が当事者に齎される。それだけに朝廷周辺の既存勢力との利権争いが激しかったが、渋川は次々に奇策を打ち出して仲間とともに独占的な権利を掌中に収める。こうして見る と全編無味乾燥な内容を想像しがちであるが、主人公が複雑な過程を経て初恋 の女性と結ばれるまでのロマンを織り込んで潤いを持たせている。本書が2010 年の本屋大賞(書店員が一番売りたい本)にノミネートされたのも頷ける。

古来より暦の制定は天下びと(最高権力者)たることを世に示す証しであった。
かつて小渕官房長官が「平成」の額を掲げて新たな年号を国民に示したこ
とは記憶に新しい。明治以前には年号がたびたび変わった。当時の人々は年号がもつ言霊の様なものがその時代の吉凶を映し出すと考えたのであろうか。
西欧にはない年号という時代区分。
「平成」の年号を後世の人はどのような時代として意義づけるのであろうか。

 

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『変化の兆し、デフレの終焉か』
岡田桂典

菅政権は“応仁の乱”を引き起こすと申し上げましたが、政権発足後6ヶ月、 稚拙な外交・内政の混乱で日本国運営は危機的状態に直面しています。それ なのに民主党は党内抗争激化、野党も連立工作等に蠢き、“乱の深化”に没 頭しだしているようですから困ったものです。
過去20年間に16人 の首相がいたという異常な政治状況で歴代の政権が曲がり なりにも国家運営が可能だったのは長年の「デフレ」のおかげだと思います。

国は財政危機が深まりつ つあっても「低金利」で国債頼りの予算が組めて、
国民も「物価の低下、安定」でどうにか日常の暮らしが出来たのではないで
しょうか。しかしこのような“好 条件”は歴史的には奇跡というべきでしょ
う。

どうもいやな風が吹き始めたようです。10月ころより海外の論調では「イン
フレ」と「債権バブル崩壊」が危惧され始めました。08年の金融危機後も
BRICsと呼ばれる新興国の30億人とアセアン6億人が経済発展をより加速 させており、その結果エネルギー・資源・農産物価格は08年末を底に急騰を 続けています。日経国際商品市況(日経で毎月曜発表)を見ると12月中旬に は昨年度比1.5倍になっています。ここ連日新聞には値上げのニュース(12月 18日は配合飼料6-7%上げ)が出ており次第に消費者物価を押し上げていく のは必然だと心配されます。

一方金融危機克服ために各国が大量に発行したおカネはまず安全と思われる
債権、特に国債市場に流れ込み「債権バブル」を起こしました。このおカネ
が10月以降に債券市場から動き出しもっと有利な株式市場、資源、新興国へ
と流れ、債権バブルの崩壊(価格低下、金利上昇)が危惧されています。
FRBが金融の量的緩和を打ち出した11月4日からアメリカの10年債金利が 2.5%から上昇し12月中旬には3.5%になっています。この傾向は日本、ドイ ツも同じです。債権バブルが反転し始めたとみて良いと思われます。
その要因の第一はアメリカの中間選挙で共和等が圧勝したため投資家達がオ
バマ政権の「反ビジネス政策」が転換されるという確信です(既にブッシュ
減税が延長されました)。第二にアメリカのFRBの金融緩和第2段がとに
かく経済の回復を目指すという強い意思を市場に送ったことです。第三にEU ではギリシャ、アイルランドに次いで南欧諸国の財政・金融危機不安が取り 沙汰され、支援のための国債増発が投資家の国債離れ、金利上昇を招ききつ つあることです。財政危機解決の“妙薬はインフレ”だそうですから、案外 この動きは理にかなっているのかもしれません。

この流れが日本へ与える影響は重大です。日銀によると金利上昇による国債
価格の低下は1%でも銀行に6兆円の損失を与えるそうですし、国債費(金利)
上昇は増税なき予算編成を不可能にします。国際市況上昇の国内価格への反
映は円の価値が重要なファクターですが、金利高と資源高では円安となり国
内物価は燃料、食品価格を先頭に上昇し始めるでしょう。日本の政治・国民
生活の基盤が揺るぎだしそうです。どうしたらよいのか。政治・行政のムダ
の削減はもとより国民も現実を直視し、国(公費で)に給付やサービスを求め
るならば費用は負担する、簡素な生活に戻すということではないでしょうか。

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『足るを知る』
幸前成隆

世の中、人は様々。
「水を飲みて楽しむ者あり。錦を着て悲しむ者あり(中根東里)。」
人の欲には限りがない。「隴(ろう)を得て、蜀を望む(後漢書)。」
「思うこと一つかなえてまた二つ三つ四つ五つ六つかしの身や
(後水尾院御集)」

欲の深いは禍いのもと。
「禍いは、足るを知らざるより大なるはなし。足るを知れば、辱しめられず」 (老子)。
「欲深き人の心と降る雪は、つもるにつれて道を失う(高橋泥舟)。」
「欲は縦(ほしいまま)にすべからず(礼記)。」
「欲に従えばこれ危うし(近思録)。」
「心を奪うは寡欲よりも善きはなし(孟子)」

足るを知れば、心豊か。
「足るを知る者は、富めり(老子)。」
「足るを知るは福の神、二匹釣るえびすなければ(仙)。」
「あるがままにて満足するもの万歳(武者小路実篤)。」
「裸にて生まれ来たのに、なに不足(一茶)。」
「知足の人は地上に臥すといえども、なお安楽なりとす。不知足の者は天堂
に処すといえどもまた意に称わず(遺教経)。」

「名声やお金にこだわりすぎたら、もっとずっと大切なものを失う。物を無
理して蓄めこんだとしたら、とても大きなものを亡くすんだよ。なにを失い、 なにを亡くすかだって?静けさと平和さ。このふたつを得るには、いま自分 の持つものに満足すること。人になにかを求めないで、これでまあ十分だと思 う人は、ゆったり世の中を眺めて、自分の人生を、長く保ってゆけるのさ (加島祥造)。」
 
「足ることを知って内なる平安と充実のために生きよ(中野孝次)。」
 

 

 

明けましておめでとうございます。
昨年の日本は経済・政治等あらゆる面で多難でありましたが、今年は、この
状況が打破できるでしょうか。新しい人材と新しい理念が待たれるところで
す。
本年も宜しくご指導・ご鞭撻のほどお願い申し上げます。(HO)






 
バックナンバー
2012/12/15
2012/12/01
2012/11/15
2012/11/01
2012/10/15
2012/10/01
2012/09/15
2012/09/01
2012/08/15
2012/08/01
2012/07/15
2012/07/01
2012/06/15
2012/06/01
2012/05/15
2012/05/01
2012/04/15
2012/04/01
2012/03/15
2012/03/01
2012/02/15
2012/02/01
2012/01/15
2012/01/01
2011/12/15
2011/12/01
2011/11/15
2011/11/01
2011/10/15
2011/10/01
2011/09/15
2011/09/01
2011/08/15
2011/08/01
2011/07/15
2011/07/01
2011/06/15
2011/06/01
2011/05/15
2011/05/01
2011/04/15
2011/04/01
2011/03/15

2005/03/01

2004/12/01

 
 
 
 
 
Copyright(c)2001-2009 H.I.S.U.I. Corp. All right reserved.
□動作確認はMac OS9.2 + IE5.1にて行ってます。
□当サイト内コンテンツおよび画像の無断転載・流用を禁じます。










SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送