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■2009年6月15日号 <vol.132>
書評 ─────────────

・書評  桜田薫 『淀川長治の映画人生』(岡田嘉一郎著 中公新書)  
・書評  渡辺 仁『難儀でござる』   (岩井三四二著  光文社)
 
・【私の一言】幸前成隆 『利によりて行えば、怨み多し』




2009年6月15日 VOL.132


『淀川長治の映画人生』
著者岡田嘉一郎   出版社:中公新書

桜田 薫    
 10年前に89歳で亡くなった映画の伝道師について彼と親しかった友人が書いた伝記である。私たちの世代は、淀川長治の名前に特別のノスタルジアを覚える。終戦とともに入り始めた映画‐なかでもアメリカ映画で始めて知る異国の豊かなライフスタイルや輝く美女たちの姿に胸おどらせた。それは思春期の若者を矯正できないほど西洋かぶれにさせたが、淀川はその旗振り役であり、彼の編集する「映画の友」は夢見る映画少年のバイブルだった。
淀川はハイカラな神戸に育って4歳の時から映画に親しみ、戦前から米国の映画社で働いた。敗戦で軍国主義時代が終わり、この映画狂にとって最高に幸せな人生が始まった。いつも「今ほど面白い時代はない」と言い、死ぬまで現役で映画のすばらしさを語った。

 本書は、彼の複雑な家族環境や生い立ちを紹介するが、映画の見方について彼の考えが窺がえる。彼によれば、映画は「人生の教科書」であり、特にチャップリンの作品(彼のナンバーワンは「黄金狂時代」)は、愛すること、働くこと、食べること、夢を見ることを教えるものだった。いっぽう、映画というのは頭で理屈っぽく見るものではなく感覚で観るもので、素直に感激し、涙を流し、びっくりすればよいので難しい説明はいらないと言う。そのためにいろいろな舞台や芸術作品に接して美的感覚を磨くことを勧めたが、これは我々凡人には簡単でない。しかし彼の好きな映画の一つがジョン・フォードの「駅馬車」というのは、私も同意見で嬉しい。テレビの「日曜映画劇場」の解説は印象が薄いが、彼の講演は内容があって面白く聴衆は熱列に感動したらしい。青山葬儀所で行われた葬式には3千人が参列したという。本書の中で黒澤や小津が代表する邦画を含む東西の名作が言及されていて、改めてもう一度見たい気になる。



『難儀でござる』
著者岩井三四二  出版社:光文社

渡辺 仁    
 本屋さんの時代小説コーナーで「いつの時代にも、無理難題をふっかける「上役」がいるものです。難儀でござるなあ・・・。」という帯のついた本書を見つけた。
〜読書欲をそそるセリフ・・・迷わずに購入した。
 凋落した時代の公家/大納言 山科言継(やましなときつぐ)が、先帝の十三回忌の費用集めに三河の徳川家康へお願いにゆく途中、天下人への道を着実に歩んでいる織田信長に面談し、口説くものなど短編8集よりなっている。
 特に大金持ちも少なく、どの職業・階層にも貧乏人がほとんど(庶民)の世の中で、権力の中枢にいた者の栄華衰退・・・いつの世も同じ・・・。
 決断の時、このやり方では、会社(組織)がつぶれますよと時の権力者にささやいてみたくなる。箱の大小はあれ、現代の政治家・官僚・役人・経営者・サラリーマン・・・皆同じ。
 どの作品も期待通りで、臨場感をもって楽しめる秀逸なものでした。
(雑感) なお、今回は改めて人名・地名の読み方の難しさを感じました。
文章を読むスピードはかなり早くなっているが、前述の山科言継(ときつぐ)の文字でハタと考える。コトツグ・・・いや違う・・・戻ってフリガナを見る・・・慣れるまで繰り返す。(文字でイメージをつくる)これは、私だけか・・・。

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『利によりて行えば、怨み多し』
幸前成隆

 「利によりて行えば、怨み多し」(論語・里仁)。利益至上主義で行なえば、敵を作ることが多い。孔子の言葉である。
 また、利益至上主義は、とめどがない。行きつく所まで行ってしまう。
孟子が、梁の恵王に、戒められている。「苟くも、義を後にして利を先にすることをなさば、奪わざればあかず」(孟子・梁恵王章句上)。義を後にして利を求めることを先にすれば、奪い尽さないと満足しない。
 また、荀子も、「義を先にして利を後にする者は、栄あり。利を先にして義を後にする者は、辱あり」(荀子・栄辱篇)と教える。

 「利を見ては義を思い、危うきを見ては命を授け、久要平生の言を忘れずんば、もって成人となすべし」孔子の言葉である。(論語・憲問)。利によりて行うことは、心したいものである。

 

 

 最近、竹村亜希子女史が“易経1日1言”を出版(致知出版社)されました。この中に“器量と度量”という一言があります。
 引用させていただくと、“器量とは高い地位に相応しい対処能力であり、度量とは自分に対する批判でも聞くべきものは受け入れるという心の広さである。陰陽に分けるとすれば、器量は陽の力で、度量は陰の力になる。現代では、能力や実績主義になり、会社組織のリーダーは器量形が多いといわれる。勿論器量も大切である。しかし、リーダーの真価が問われるのは、人の能力を活かし、人を育てる度量である。リーダーは、度量という陰の力を育てることを忘れてならない。”

 この時期は株主総会も多く、また、各種選挙も近い時期でもあります。これを機会に、日本の政財界に度量のある本格派リーダーが生まれることを期待したいと思います。

 ご多忙の中 、大変有意義な書評、一言のご寄稿有難う御座いました。
(HO)

 

 

 




 
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