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2005年7月15日 VOL.38

■書評
・『帝国としての中国 ― 覇権の論理と現実』― 稲田 優
・『定刻発車 ― 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?』― 福島 和雄
【私の一言】『オージー便り(3)― シドニー雇用情勢』相川 香

 

 

『帝国としての中国 ― 覇権の論理と現実』
著者:中西輝政  出版社:東洋経済新報社

稲田 優  
 今世紀は中国の世紀となることが予想されており、中国の歴史と中国の本質の研究が重要になっている。この書は中国の文明史を踏まえた政治史であり、現在の中国の本質を論じた学術書でもある。
 「帝国とは、単に大きな力をもって、外国や周辺地域を支配し影響を及ぼす存在というにとどまらない。帝国とは、つねに何らかの理念や価値、あるいは“大きな建前”をもっていなければならない」。「中国とは、その文明の基本において、またその歴史の構造において、日本とは全く異なる本質をもった存在であるかもしれない」との論に、まず耳を傾けたい。
 中華民国期の学者、李四光は、中国史には明確に800年の大きな周期があることを指摘し、中国における平和と戦乱の循環には偶然の範囲を超えた数々の周期性があることを強調しているという。
(1)秦による統一(BC221年)〜五胡十六国・魏・晋南北朝の末期までの800年、(2)隋の統一(589年)〜モンゴル=元の滅亡までの780年、(3)明の成立(1368年)〜現代までのおよそ600年の周期、各周期の最初は、短命だが軍事的に強大な力を持つ王朝が、長くつづいた「内戦期」を終結させ、新たに中国を統一する。その後400〜500年の平和な時代がつづくが、この時期をすぎると一度ないし二度、王朝は交代し、再び混乱が始まる。 その結果首都が北方から南方に移り、南北「二つの中国」の対立という局面に入る。 さらにその対立による大陸の混乱が進んで、それが一定の期間、限度に達したとき、異民族の全面的な侵入と征服王朝の支配の始まりによって、一つの周期に幕が下ろされる。そして中国の文明史は再び新しい循環のサイクルに入り、やがて強力な新体制によってしばし中国(中華)による統一が実現される、という前段は、思わず引き込まれる。
 中国の本質を把握したうえで、最終章で論じられている中国のダブルスタンダード外交、脱北者への処理で異なるアメリカ、韓国、日本への扱いなどを読むと、深くて重たい認識に到達する。含蓄に富む本である。



『定刻発車 ― 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?
著者:三戸裕子  出版社:新潮文庫

福島 和雄 

 この本によると日本の鉄道は世界の水準からみれば、信じられないほど正確に運行しているそうだ。私もアジア、ヨーロッパ、北米で鉄道に乗ったが運行ダイヤどうり正確だったのは、シンガポールぐらいで、それ以外は10分から15分くらいの遅れが多かった。JR東日本の統計(1999年)によると、新幹線の遅れは平均30秒、在来線が平均1分だそうだ。日本では1分以上の遅れは「遅れ」と数えられているそうだが、イタリアでは15分、イギリスでは10分以上が遅れになるそうだ。つまり外国では、10分や15分程度の遅れは当たり前で「遅れ」とはみなされないそうだ。つまり世界には鉄道は「1分違わず」正確に運転して当たり前の国と、「10分や15分程度の遅れ」は当たり前の国があるようだ。確かに日本の鉄道は3分程度の遅れでも車掌は「お急ぎのところ、列車が遅れて申しわけありませんでした」と車内放送で謝る。
 なぜ日本の鉄道が世界でも稀なダイヤどうりの正確な運行ができるかについて、著者は明治時代からの鉄道関係者の努力もあるが、ルーツは江戸時代の「時の鐘」つまり時報システムにあると言う。江戸時代の参勤交代という大規模移動プロジェクトを経験し、正確な運行の鉄道システムを生み出す下地ができていたのだそうだ。このたびのJR西日本の悲惨な事故の近因は運転手の急ブレーキによるものだが、遠因は運行ダイヤの遅れを取り戻そうとしたことにあると思う。10分程度遅れても当たり前の外国に比べ、日本の鉄道は何故正確な運行ができるのかの謎を、この本は詳しく説明してくれる。



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オージー便り(3)― シドニー雇用情勢』
相川 香

 オーストラリアに来て、主人と共にフリーランスのデザイナーとして活動を始めることにしました。
 主人は日本で7年間グラフィックデザイナーの経験があり、技術・デザイン共、どこに行っても通用する実力の持ち主(嫁バカ?)。しかし海外生活歴2ヶ月で英語は全くという程話せないため、それが壁となっているのが現状です。実際、履歴書と作品をシドニーの有名デザイン事務所に送り面接にこぎつけましたが、結局英語が原因で不採用となってしまいました。
 オーストラリアは日本ほど企業が閉鎖的ではなく、新参者を受け入れてくれやすいようです。仕事のほとんどは友人やネットワークで広がって行くのが通常で、成功するチャンスには恵まれていると言えるでしょう。例えば、オーストラリアで1番有名な日本人、アキラ イソガワというファッションデザイナーがいます。日本では無名ですが、マリークレールなどの女性誌の巻頭で特集を組まれる程有名なデザイナーで、彼の成功はシドニーのゲイのネットワークに助けられたことによると聞きました。
 日本人コミュニティはとても小さく、その分大手企業との仕事が日本よりも実現しやすいと言えます。ですがやはり小さいことに変わりない為、10年経っても定期的な仕事がもらえないというのも実情です。やはり、OZ企業にあたっていかなくては先は開けていかないようです。






 
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