この本によると日本の鉄道は世界の水準からみれば、信じられないほど正確に運行しているそうだ。私もアジア、ヨーロッパ、北米で鉄道に乗ったが運行ダイヤどうり正確だったのは、シンガポールぐらいで、それ以外は10分から15分くらいの遅れが多かった。JR東日本の統計(1999年)によると、新幹線の遅れは平均30秒、在来線が平均1分だそうだ。日本では1分以上の遅れは「遅れ」と数えられているそうだが、イタリアでは15分、イギリスでは10分以上が遅れになるそうだ。つまり外国では、10分や15分程度の遅れは当たり前で「遅れ」とはみなされないそうだ。つまり世界には鉄道は「1分違わず」正確に運転して当たり前の国と、「10分や15分程度の遅れ」は当たり前の国があるようだ。確かに日本の鉄道は3分程度の遅れでも車掌は「お急ぎのところ、列車が遅れて申しわけありませんでした」と車内放送で謝る。
なぜ日本の鉄道が世界でも稀なダイヤどうりの正確な運行ができるかについて、著者は明治時代からの鉄道関係者の努力もあるが、ルーツは江戸時代の「時の鐘」つまり時報システムにあると言う。江戸時代の参勤交代という大規模移動プロジェクトを経験し、正確な運行の鉄道システムを生み出す下地ができていたのだそうだ。このたびのJR西日本の悲惨な事故の近因は運転手の急ブレーキによるものだが、遠因は運行ダイヤの遅れを取り戻そうとしたことにあると思う。10分程度遅れても当たり前の外国に比べ、日本の鉄道は何故正確な運行ができるのかの謎を、この本は詳しく説明してくれる。
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