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2005年4月1日 VOL.31

■書評
・『五重塔』― 板井 敬之
・『烏賀陽(ウガヤ)正弘氏の本を読んで〜 “痛快 アメリカン・ジョーク”
“ユダヤ人ならこう考える”』― 矢野 清一

【私の一言】 『不足と過剰』 川井 利久

 

 

『五重塔』
著者:幸田露伴  出版社:岩波文庫

板井 敬之  
“露伴の代表作”ということで、高校・大学時代に何回か読もうとしたが、文体が難しくいつも途中で放擲していた。
先日、何気なく手に取って読み始めたところ、映画のシナリオのようなテンポの書き振りで、ぐいぐいと引き込まれた。本【もと】はと言えば、新聞小説の由、「道理でこのテンポか」と納得した。
この小説には、典型的な職人タイプの二人が登場する。主人公の“のっそり十兵衛”は、「技量も仕事への情熱も、誰にも負けない」と自負している狷介な大工である。対する川越源太は、腕の良さは勿論、江戸っ子らしい気っ風と気働きの棟梁である。二人のようなタイプの日本人は、明治以降先の大戦までは当然のこと、戦後の高度成長期に至っても、なお存在していたように思う。
 この両人に向かうと、昨今、あらゆる分野で仕事への良心や誇り、更には意地までも失ったかの如き現代の日本人の仕事振りが、恥ずかしくなる。
書物というものは、読み手が年齢を重ね経験することが多くなるにつれて面白く読めるようになる、と実感した。但し、若い時は感激したが、最近読み返してみたら「然ほどでもなかった」という本も、良くある。
 書物との出会いは、読み手の相応の“人生経験”と、然るべき“タイミング”が必要ということであろうか。




『烏賀陽(ウガヤ)正弘氏の本を読んで〜』
 ・痛快 アメリカン・ジョーク(株式会社五月書房)
 ・ユダヤ人ならこう考える(PHP研究所)

著者:烏賀陽(ウガヤ)正弘 

矢野 清一 

 この2冊の著書は、評者が現役時代、永年携ってきた繊維業界の先輩でもあり、かつ、学校の先輩でもある、烏賀陽氏が、ご自分の現役時代に主としてビジネスを通じて深い関わりをもってこられた、アメリカ人、なかんずく、世界の各地で繊維業界を牛耳っているユダヤ人との付き合いの中で、学び取ってこられた事の一部を、纏められたものである。
 先輩であるからと言って、特に、「よいしょ」をするわけではないが、著者の永年にわたる海外駐在の経験、奥行きの深い高度な英語力、更に、その背景にある著者の学識の豊かさなどから、普段余り英語に接していない人達でも、すんなり入っていけるように、日本の諺なども持ち出して、分かりやすく書き下ろされている。この両書に書かれている英語の文章やフレーズを一度覚えておくと、将来、英語圏の人々と付き合っていく時に必ず役に立つと思われるので、是非多くの方に一読をお勧めしたい本である。
 前者は、ジョーク好きのアメリカ人と会話をする際の実地でのジョークが多く書かれており、ジョーク好きのアメリカ人と話をする際に、この本にあるジョークの一部でも話していけば、大いに喜ばれ、きっと会話に弾みがつくものと思われる。
 後者は、ここでは、厳選された100のユダヤ人の格言について書かれている。格言好きなユダヤ人は、大昔から苦難の生活を経験してきたが、格言の中にその苦難に打ち勝つ方法をちりばめており、その人生観がこれらの格言の中に凝縮されている。このような考え方は、日本の昔からの古い商家の伝統にも似通っているところが多多有り、著者は、その家訓なども随所に取り入れて、分かりやすく説明されている。又、これらの格言が、英語で書かれているところが、お役に立ちそうである。




 




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『不足と過剰
川井 利久
 この世の中に起こっているさまざまな問題の大きな部分が適度を逸した需要と供給のアンバランスから来ているようだ。
 大は世界の南北問題から人口過剰問題があるかと思えば、人口減少で悩む地域もある。飢えに苦しむ国があるかと思えば過食によって、肥満や糖尿などさまざまな病気に苦しむ国もある。今問題になっている引きこもり現象にも愛情の過剰によって、自立を妨げられた若者がそのまま中年になって、何とも陰惨な犯罪を犯してしまうケースが頻発している。
 苛烈な進学競争で肉体の発育阻害を受けたような一握りの勝ち組と称するエゴイスト達と挫折感で希望を失った大多数の負け組達。みんな幸せを求めて世に出て来たのに、なんと生きにくい世の中なのだろう。適度を保つ感覚とそれを守る力が何より大切で、これが住みやすい世の中を創る人間の一番大切な叡智ではなかろうか。英国の教育の中核にはそれがある。
 SENSE OF PROPORTIONの養成が英国のパブリックスクール教育の主要なテーマになっている。
 すべての人が幸せに暮らせる世の中を創ることが人類の最大のテーマのはずである。不足と過剰を解消するためには、人間の叡智と教育によって欲望の自己抑制が国にも個人にも求められるのだが、これが凡人にはむずかしい。これを解決できるのは宗教だろうか。これも断言できない。誰か教えて下さい。





 
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