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2004年7月15日 VOL.14

■書評
・『「水」の安心生活術』─ さとうとしお
・『虚妄の成果主義 ― 日本型年功制復活のススメ』─ 堤 貞夫
・『松江人物ものがたり ― 近世・近代に生きた人たち』─ 矢野寛市

【私の一言】『風土と人間』 川井利久

 

 

『「水」の安心生活術』
著者:中臣昌広  出版社:集英社新書

さとうとしお 
 近年は空前の水ブームであり、水にこだわる人が少なくない。しかし「水の世界」はなかなかに奥深いものである。
 著者は上智大学化学科卒。現在、文京区の保健所勤務。環境衛生監視員として、水の専門家である。
 本書は、身近かなところから水と人、水と生活、水と健康などを解き明かす。飲み水の汚染への対応、おいしい水の条件、家を買うときの水まわりの注意、プールや風呂、温泉の話やダニ、カビ対策など、水の番人として豊富な経験をもとに、分かりやすい表現で説明してくれる。
 毎日の生活に欠かせない水に対する智慧は、是非多くの人に知ってもらいたいものである。




『虚妄の成果主義 ― 日本型年功制復活のススメ
著者:高橋伸夫  出版社:日経BP 2004.1

堤 貞夫 

 今話題のテーマであるが、知的好奇心を十分満足させる面白い本である。
高橋伸夫氏は、東大教授であられるが、このテーマについては1992年から考え、なぜ、成果主義がうまく行かないか、に確信を持った。
 それは、人間はなぜ働くのか、と言う根元的なテーマに対し、人は仕事の中に動機を求め、それを他人から認めてもらうとき、喜びを感ずるのであって、決して成果報酬のお金にではない、むしろ、お金を中間に媒介させることは、目的を変質させ、人のやる気を阻害するということに気づかれたことによる。
 
 私は、キャリア・カウンセラーと言う仕事をこの10年あまりやっていて、このことを全くの事実であると感じている。そして、転職の危機にさらされている人たちに「本当にやりたいことを、この際考えてみましょう。それこそ良い機会ではありませんか」と、本心で言っている。
 キャリア・カウンセラーの言葉で言うと、人は「外的なキャリア」たとえば地位のために働いているとしても、本当は「内的キャリア」やりがいのために働くものであり、この2つをどのような形で統合できるかの相談・指導が、キャリア・カウンセラーの仕事と言うことなのである。
 高橋教授はこの証明として、テイラーの科学的管理法の基礎ホーソン実験が、実は、科学的管理では説明できない失敗であったこと、むしろその中から本当の労働の動機づけが証明されたという、経営学の歴史を語っている。
成果主義人事制度の内容を説明する本ではないことに、注意して下さい。




『松江人物ものがたり ― 近世・近代に生きた人たち
監修:藤岡大拙/長野忠  出版社:山陰中央新報社

矢野 寛市 
 この本は、小学生のための副読本として書かれたもので、字は大きく、平易な文章で書 かれており、少しでも難しい漢字にはフリガナが振ってある。若槻礼次郎、岸清一、小泉 八雲・せつ、松平治郷、園山俊二といった人たちは、松江の人なら誰でも知っているが、津田晴一郎(マラソンでオリンピックに出場した人)小村茂重(薬用人参を栽培した人) 福田平治(福祉事業の草分け)福田与志(障害のある子供の学校を作った女性)等の人た ちは、松江で生まれ、育った筆者も残念ながら今まで知らなかった。特に、福田与志の話 には、深い感動を覚えた。
 彼女は、明治の終わり頃小学校の教師になるが、担任の耳の不自由な子供の教育に悩み、京都の盲唖学校で勉強したうえ、松江に全国で11番目の盲唖学校を作った。そして、 結婚もしないで生涯を障害のある子供たちのために捧げたのである。
 ともかく、郷里の子供たちがこの本を読んで、それぞれの夢を見つけてくれれば幸いである。





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『風土と人間』

川井 利久

 人それぞれに気質や性格が異なり、民族にもさまざまな特色があることは面白い。ユーラシア大陸の西端にインド・アーリア種族が展開して、それぞれの土地の風土に適応して、数万年をかけていろいろな個性豊かな民族に分化していった。そしてお互いに切磋琢磨して、現代の世界をリードするヨーロッパ文明を創った。アングロ・サクソンの実利、ゲルマンの勤勉、ラテンの情熱、北欧の瞑想、ケルトの感性、スラブの芸術性。それぞれ独特の持ち味を発揮して多彩で魅力溢れる近代文明を築き上げてきた。単一の起源から数多くの民族に枝分かれしていくには何が動因となるのだろうか?
 環境、気候、風土から時間をかけて遺伝子が微妙に変質していくのだろうか?気温、降水量、湿度、風、地質、水質、地形などによって、その土地への適応が遺伝子蛋白質内におこり、時間の経過と共に変質していくのだろうか?一般的に乾燥地帯の人間関係はドライだし、多湿地帯のそれはウェットであることはユーラシア大陸の東端アジアにおいても同一の傾向が見られる。極限の気候条件を除けば、気候によって世界的に民族特性に同一傾向が見られるように思う。
 高温・多湿地帯−明朗・多弁・狡猾、低温・乾燥地帯−根暗・寡黙・実直。この狭い日本でも関西人と東北人との比較で同じような傾向が見られる。これは生体を形作る蛋白質が気候や風土に対応して変化するからだろうか?動物や植物など他の生命体にも同じ傾向があるのだろうか?蛋白質分析や遺伝子解析の進歩によって生物の性質や行動が限りなく解明されて、70兆個あるという人間の細胞一個一個の働きや判断や行動の動因が解明されるようになれば、自然科学が社会科学を併合してしまう日が来るのだろうか?そんな日が来たとしても心の空しさはやはり消えないのではなかろうか。閑人妄言の至り。






 
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