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■2011年7月15日号 <vol.182>

書評 ─────────────

・書  評     矢野 寛市 『放射線ホルミシスの話』      
               藤野 薫編著 せせらぎ出版
             
・書  評    石川 勝敏 『日本は世界第5位の農業大国』
               浅川 芳裕著 講談社新書

・【私の一言】 濱田 克郎  『アメリカ便り(22)ーありがとう総理大臣』


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2011年7月15日 VOL.182


『放射線ホルミシスの話』
 ( 藤野 薫編著 せせらぎ出版)  

矢野 寛市   



 1895年、ヴィルヘルム.レントゲンがX線を発見すると、X線が健康診断 のみでなく、色々な病気の治療にも盛んに用いられ、今から考えると行き過 ぎがみられる程であった。
 ところが、広島と長崎に原爆が投下されると一転して放射線が敵視される ことになった。1958年、国連の放射線の影響に関する科学委員会は、放射線 は幾ら小量であっても人体に有害であるとする「直線的無閾値仮説」
(しきい値無し直線仮説)を提言し、続いて翌年に国際放射線防護委員会が この仮説を採用してしまったのである。人が即死するような高放射線領域に おいてはともかく、低放射線領域においても人体に有害であるとの証明はな されていなかったのに、現在まで半世紀以上に亘って世界中がこの仮説に支 配されてしまった。
 1982年、アメリカの生命科学者ラッキー博士が米国保健物理学会誌に、 「人体に微量の放射線を当てると免疫力が強くなり、がんに掛かりにくくな る、幼少の頃から与えると他の人より背が伸びる、生殖力が強くなるなど生 体機能が活性化する」という論文を発表した。
 この説は一時は専門家から無視されたが、偶々ラッキー博士の論文を目に した電力中央研究所の初代原子力部長であった服部禎男博士の活躍により、 微量の放射線が健康に及ぼす影響をテーマとする国際会議、学術会議が毎年 開催されるようになった。更に服部博士は東大、京大、岡山大学など国内の 十以上の大学に働きかけて放射線による病気治療の研究を進めてもらい、既 にがんを始めとする多くの難病について顕著な成果を収めている。
 ラッキー博士は、自然放射線の100倍程度の放射線が健康にとって最適 値であるとし、自然放射線の1万倍までは人体に無害であるとしている。も ともとイランのラムサールとか中国の広東省など自然放射線量が他の地域に 比べて何倍も高いところは世界各地にあり、そのような高放射線地域ではが んの発生率が低いことが調査研究の結果判明している。わが国でもラジュウ ム温泉として名高い三朝温泉がある辺りの住民はがんに罹る率が低いそうで ある。
 「無閾値直線的仮説」に従って各国の政府が法律や基準を定めたため、放 射線に汚染された物質の廃棄費用が莫大な金額に上っただけでなく、放射線 に対する恐怖感が健康に及ぼしたマイナスの影響は計り知れないものがある。
ある生物学者はこの「無閾値直線的仮説」は20世紀最大の科学的スキャンダ ルであるとさえいっている。
 福島第一原発の事故のあと多数の人が避難し、各種の農産物が出荷停止の 命を受けたことによる有形、無形の損失は甚大である。このスキャンダルが
図らずも具現したといえようか。
 因みに「ホルミシス」とはギリシャ語が語源で”刺激する“という意味である。放射線に限らず、毒性のある物質は微量なら健康を増進する場合が多いことは昔から知られているところである。

『日本は世界第5位の農業大国』
(浅川 芳裕著 講談社新書)

石川 勝敏   



著者は月刊【農業経営者】副編集長、副題は「大嘘だらけの食糧自給率」。
著者は全編を通じて農林省の政策を強く批判している。いわく食糧自給率を 目的とする事の間違い、減反政策の間違い、農業個別補償制度の間違い、養 豚農家保護の間違い、事故米問題の本質、天下りの実態、等々である。そし て日本農業を発展させる8政策を提唱している。農業個別補償制度で政権交 代は実現したが、農家を票田にして、このままでは日本の農業に未来はない。
主張には大筋賛成である。農地問題に触れていないのは残念である。

カロリーベースの自給率40%を50%にすることが国の目標とされているが世 界の先進国で自給率を目標にしている国は日本以外にはない。付加価値生産 額こそ目標にされるべきだろう。自給率で言えばトヨタは国内自給100%を達成したら事業の成長を止めるだろうか。
輸出を増やし海外生産を拡大していくだろう。
農業も同じである。イタリアは小麦の輸入国1位であり、自国産より安い小麦 を加工してパスタやお菓子を輸出している。農業についても加工貿易をして いる国は多い。自国に有利な農業製品を輸出し不利な農産品を輸入するのが 農業大国でない先進国のパターンである。オランダ、フランス等。英国の食 糧自給率は1%だが問題にしていない。食糧安全保障とは何か、エネルギー 安全保障と同じで、食糧安全保養はリスクマネジメントの問題である。食糧 についても輸入規制は止め輸入先の多様化を図る方が先である。

日本のカロリーベースの自給率は世界12位だが日本の農業の国内生産額は8 兆円で世界第5位の農業大国である。農業人口減少は農業の生産性が上昇した からであり、先進国では殆ど農業人口は減少し続けている。日本では生活水 準の向上でカロリーの少ない野菜や果物生産が増え、大型農場を経営する農 家も増えている。カロリーベースの自給率と言う世界でただ一つの国家目標 を持つのは間違いである。

著者の言う農業8策とは
1.民間版レンタル農園の整備
2.作物別マーケテイング組織構築
3.科学ベースで国際競争に勝つため県別の農業試験場の知識の全国統一
4.輸出促進
5.検疫体制の整備
6.国際交渉に勝てる人材の育成
7.若手農家の海外研修制度の充実
8.海外農場の進出支援、の8項目である。
競争政策で農業を成長産業にするために有効であろう。

世界人口は増加中であり、農業は票田ではない、世界の成長部門である。
海外で農場を運営し成功している例もあり、世界の農地の20%は耕作放棄地 で、日本への技術支援を要請している国は多い。
休耕すれば金が入り、赤字作物を作れば補償される農業はモラルハザードを 生むだけである。農地法を変え農業委員会を変えないと根本的には改革出来 ないかもしれないが上記8策でも農業の活性化は図れるだろう。
著者は具体的にいろいろな問題点に触れているのでサンクチュアリ解明の楽 しい本である。
ご一読をお薦めする。

 

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『アメリカ便り(22)ーありがとう総理大臣』
 濱田 克郎 



それは最初から異様な雰囲気であった。記者会見を避けているはずの総理大
臣(以下首相と表記)から持ちかけられた記者会見だそうであり、官房長官
だけではなく首相補佐官も司会役もだれもそばには控えていない。
首相は次のような話で記者会見を始めた。“国内では私に対して退陣要求の声が上がっているようですが、海外からはむしろ、ありがとうとか、賞賛する意見が私宛にメールで寄せられている。国内分も含め今日はそのいくつかを披露したい。”

Oさん:今回の貴国が直面した大惨事に際して、貴国の方々の文化というか態度で強く私の印象に残ったことがあります。一つは、地震や津波の被災者の方々が整然と列を作り辛抱強く支援を待っている姿です。二つ目は、前首相が現首相と合意したとされていることを守らないということで、ペテン師と呼ばれたと報道されていることです。貴国では、特に政治家の間では口約束も立派な約束であり、契約書や署名の有無は関係ないのだと聞かされていただけに少し驚いた次第ではあります。しかし思い起こせば、トラストミーと私に言われながら信を裏切られた方もおりますし、貴国のかつての文化も変わりつつあるのかもしれません。今後の貴国との首脳会談にあたり心しておくべきことを教えていただいた首相にありがとうとお礼を申し上げたい。
ところで、あなたは退陣するとは言っていないのに貴国のメディアは勝手に解釈をつけて“首相退陣表明”と報道しました。どうすれば“事実”ではなく、あなたのシナリオに沿った報道をさせることができるのか時間があるときにコツをご伝授下さい。もう一つわからないことがあります。あなたの不信任案に反対した議員がなぜあなたの退任を迫っているのでしょうか。あなたが信じるに値しないと思っていたのであればどうして信任したのでしょうか。それとも私には計り知れない何かがあるのでしょうか。

K-1さん:先般あなたのたってのお申し出を受け、横浜でお会いすることができたことは私の国内だけでなく世界に対してメッセージを発信することができる貴重な機会となりました。尖閣諸島の件や我が国の貴国に対する態度等につき苦言を呈せられるのではないかとの思いから、私は必ずしも乗り気ではなかったのです。しかし、あなたがそういうことにいっさい触れないだけでなく、私の目を一度も見ようとなさらなかったことにより、非がどちらにあるかだけでなく主従の関係が言葉を使わずに世界に示されることになりました。今となっては本当に良い機会を作っていただいたと心から感謝しております。また、あなたが首相である限り貴国に対して何をしても恐れることはないという自信を強めることもできました。ぜひ、雑音に惑わされることなくできるだけ長くその座にとどまってください。それから、拿捕された船長をすぐに解放していただいたのはあなたのご尽力があったと報告を受けました。改めて心より御礼申し上げます。当初は官憲の判断と聞いていましたが、手柄を部下にあげるなどという態度はご立派なことでなかなかできないことです。

K-2さん:国民が困難に直面しているときに、その任を投げ出さず、国を挙げての退陣要求に毅然とした態度で立ち向かい、決してあきらめることのない粘り強い気持ちで首相の座を守っておられることに深い敬意を表します。国民やメディアは時間が経てばすぐに昔のことは忘れてしまいます。あなたの態度は私へのとても力強いエールになっています。誰に何と言われようとも、国民がいくら困ろうとも苦しい生活を強いられようとも、空軍の爆撃があろうとも、自分の手にした権力は絶対に手放さない。自分に都合の悪い人物は遠ざける。私はこれで40年以上政権を維持してきました。親衛隊や側近が一人もいなくなっても屈することなく自分一人になっても、国民が誰もいなくなっても私のこの信念は変わりません。あなたとは未だ直接お会いしたことはないですが、なにかしらとても親近感を覚えます。私は今このメールを地下壕で書いています。貴国の首相官邸にも同様の強固な設備があると聞いています。烏合の衆の攻撃に耐え、この騒ぎが治まった頃にお会いしたいものです。

匿名:最初の頃は、被災者に何もしてくれない、と思い本当に不満が溜まっていきました。原発の事故の情報や、放射線に関する情報も不足し、不安な気持ちも溜まっていきました。不満や不安から私たちのストレスは高まり、健康を害したり亡くなったりする方々が増えていきました。でも、私たちは間違っていました。
政府に何かを期待するからこそ、何もしてくれないと不満に思うのです。放射線に対する正しい知識が不足しているから不安になるのです。
たくさんのボランティアの方々の助けや、私たちの自助努力で少しづつではありますが何とかその日を暮らせるようになりつつあります。今まではあなたを始め政府に対し不満の固まりでしたが、あまりもの体たらくにはっとしました。ひょっとして、何もしてくれないのは、政府を頼らず自分たちでなんとかするように気づかせる為ではないのか、と。それからは自分たちで知恵を出し合ったり、知らないことを調べたり、ボランティアの方々の力を活用したり、いろいろな面で新しい局面が開けてきました。むやみに放射線に怯えることもなくなりました。
更には、政府に愛想を尽かした県、市町村が地域に根付いた政策を実施するようになりました。地方分権が叫ばれて久しいですが、これでずいぶん変わったような印象を受けました。
それもこれも、あなたがぐずぐずして何にもしてくれなかったことのお陰だと今では感謝できるようになりました。よく、リーダーがしっかりしないといけないと言われますが、しっかりした部下がいるときはリーダーがだらしない方がうまくいく時があります。リーダーがこんなでは、自分たちがよっぽどしっかりしないと駄目だと思って一生懸命に持てる力を発揮するからです。ある意味で反面教師とも言えます。ひょっとして、あなたは反面教師を演じておられたのではないでしょうか。今では、その思いもできるようになりました。この点では感謝したいと思いますが、そのあなたのお役目はもう充分に発揮されたと思います。
どうぞ安らかなお心でお遍路に旅立ってください。

おいおい、こんなことで良いのかと叫ぶ誰かの声がしたところで目が覚めた。
(この駄文はフィクションであり、事実に基づいたものではありません。)
引用終わり

 

 

電力不足のなかで暑い夏がきました。「心頭を滅却すれば火もまた涼し」の 境地で暮らしたいものですが、なかなかそうもいかず、緑のカーテンとか 扇風機等でなんとか暑さをしのいでいる昨今です。こういったなか、熱中症 は例年になく多く、夏風邪もバカにならないようです。
ご自愛の上ご活躍ください。
本号も、多面的なご寄稿をありがとうございました。(H.O)





 
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