2004年6月1日 VOL.11
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■書評
・『ニューヨークを読む』─ 後藤田 紘二
・『砂の文明 石の文明 泥の文明』─ 茅野 正子
■映画評
・『キル・ビルvol.2 〜ザ・ラブ・ストーリー〜』─ 中野 純子
【私の一言】『にほんごであそぼ』(NHK教育テレビ)岡本弘昭
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『ニューヨークを読む』 2004・2発行
著者:上岡伸雄 出版社:中公新書
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後藤田 紘二
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この書物は、ニューヨークの過去と現在について、そこで生まれた文学作品を通して、いろいろと紹介している労作である。著者は米国文学の研究者だが、ニューヨークの歴史と文化を 数多くの小説家と共にたどるという、大変ユニークな試みに、膨大なエネルギーを投入しており、その努力にまず敬意を表したくなる。
作家達の鋭い感受性と鮮やかな言葉を抜粋してこの都市の混沌とした様子や底深さを紹介すると同時に、結果的にはアメリカ研究の入門書の役割も果たしている。
ともあれ、近頃ニューヨークは、我々日本人にとっても、えらく身近に感じられるようになった。松井選手やイチローたちだけのせいではあるまいが、あらためてニューヨークってどんな所?というシンプルな疑問にこたえているばかりでなく、この書物を通して、多国籍移民の子孫達で構成するアメリカ人の物の見方、考え方の原点をも発見できるような気がする。
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『砂の文明 石の文明 泥の文明』
著者:松本健一 出版社:PHP新書
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茅野 正子
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あとがきには「歴史と現在を視野におさめながらの文明論的考察である」と書かれているが、まったくの素人読者でも導入部の文明論を超えてしまうと、とにかく面白い。
人間は様々な風土・環境に適応して進化し、独自の言葉をもつ民族にわかれてに生きている。著者は、人が生きる風土を、砂・石・泥の3つに分類。民族との関係を考察しつつ、イラク戦争の根源などへと、さながらミステリーのように文明論の世界に誘ってくれる。
◎不毛の大地をらくだと共に移動し続けなければならない『砂の風土』は、イスラム民族に情報、つまりネットワーク文明をひらかせる。
◎ 牧草しか育たぬ『石の風土』は、牧草を求めて先へ進む欧米民族のフロンティア精神、すなわち『外に進出する文明』を起こした。
◎そして豊かな自然を甘受できる『泥の風土』は、農耕・定着型の『内に蓄積する文明』を広くアジアに花ひらかせている。
地上で生をうけ地上に死にゆく同じ人間が、自己を自然に置き換えるとき、欧米では『迷える子羊』、日本では『民草』となった背景。そして、アメリカとイスラムの戦いの解説の後に、「泥の文明」であるアジア的思考こそは、力のヨーッロッパを超えるパワーが秘められている、と締めくくる。
著者の幅広い見識とユニークな発想にほれぼれしつつ、同時に、長引く戦争状況の終息を祈る気持ちがいっそう高まっている。
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『キル・ビルvol.2
〜ザ・ラブ・ストーリー〜』
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:ユマ・サーマン
2004.4.24全国松竹・東急系ロードショー
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中野 純子
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最近、やっとの思いで一本観ました。キル・ビルvol.2〜ラブストーリー〜です。vol.1の時は人殺しの場面が兎に角多くて、食べていたポップコーンが途中で戻しそうになった。
後日、知り合いと評論していたら、「劇場には外人が多く、外人は笑ってばかリいた。」と言う事でした。その話を聞いて、どこが可笑しいのか解からなかった。Vol.2で私の隣の席が外人のカップルでした。やはり、笑っていました。日本人は笑っていないのに。外人と日本人の感性の違いでしょうか?なんて思ったりして。
ストーリーはvol.2は1と比べて観易かったです。前半より後半がメインという感じで、一番面白かったのが、パイ・メイ師匠のキャラです。何かあるとすぐ長髭を触る。何度も触っているのでだんだん可笑しくなり、そのシーンがでてくる度に「クスッ」っと笑ってしまいました。
でも復讐する為に人を数え切れない程殺し、泥まみれ、血まみれになって、自分も返り討ちに遭い死にそうになってでも復讐する意味ってあるの?と思ってしまいました。憎しみこそあれ、死ぬ思いまでして復讐するのだったら、平凡でも普通に暮らすのが良いのでは?と思いました。まあ、そんなだったらストーリーとしては成り立たないですけど。
2時間半という長時間にしては、見応えはあったと思います。後半、ここでハッピーエンドかな、と思っていたらそうならず、違う場面で違う形で、ハッピーエンドでした。復讐が終わっても、ハンゾウさんの刀を車に積んでいるのは何故?
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