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2007年2月15日 VOL.76

 

 

『インテリジェンス 武器なき戦争』 
著者:手嶋龍一・佐藤優    出版社:冬幻舎

後藤田 紘二 

 最近までNHKワシントン支局長として活躍していた手嶋氏と外務省職員で現在起訴休職中の佐藤氏の両氏は、それぞれジャーナリスト、外交官として、有名な人物である。本書では、両氏がこれまでそれぞれの立場で活躍し、習得した職務上の豊富な経験を披露しつつ、今日のわが国における外交上の情報収集の体制や仕組について、他国と比較しながら、その貧弱さを痛烈に指摘している。
 ここで言うインテリジェンスという言葉は、われわれにはなじみが薄いが、要は、良いにつけ悪いにつけわが国では、スパイ活動に対応できる人材が不足しており、組織体制があまりにもお粗末過ぎるというわけである。
最近の外務省には語学力に秀でたものがいない故、情報収集体制確立の前提となる人材の確保にこれから5年はかかるであろうと言う佐藤氏の指摘が、的外れでないとしたら愕然とせざるを得ない。
 ただ本書で述べられているほど諜報活動の強化が、国運を左右するほど重要なことかどうか、私としては若干の疑問が残る。
 莫大な予算を投じて諜報活動に力を注いでも、例のイラク大量破壊兵器に関するCIA情報の使われ方などを見ていると虚しさを感じざるを得ない。
情報の選択力とそれに対する適切な判断力こそが為政者に求められるところであろう。
 “公開されている情報を再整理することで 秘密情報の98%が得られる”とも認める佐藤氏と、ドキュメンタリー風小説“ウルトラダラー”で実績を上げた手嶋氏の対談形式の本書は、とにかく週刊誌的手軽さで読めるものである。蛇足ながら、冬幻舎新書創刊の一翼として、商業的意義は十分果たしている。




『生命の暗号』(1997)
『遺伝子オンで生きる』(2004)

著者:村上和雄    出版社:サンマーク出版

堤 貞夫 

村上和雄先生は、バイオテクノロジーの世界的権威で、京都大学農学部博士課程修了。筑波大学名誉教授。高血圧の発病に関係する酵素「レニン」の遺伝子暗号を世界に先駆けて解読に成功、1996年日本学士院賞受賞され、ノーベル賞にもっとも近い方といわれている。
以前、「遺伝子オンに生きる」を読んで、実に興味深い本と思っていたが、最近、この考え方を最初に提唱された「生命の暗号」を読んで、細胞と遺伝子のメカニズム、人間の活動が遺伝子の
ON,OFFに支配されていること、をはじめとする、村上先生の基礎とされている考え方を理解することが出来た。人間の生命とは何か、を考えさせるまことに意味深い本である。
二つの本から、先生の提唱されている内容を3つ、ご紹介する。
1)地球上にいるあらゆる生物には細胞があり、遺伝子はその核の部分にDNAと呼ばれる物質として存在している。
遺伝子は細胞を分裂させたり、親の形質を子に伝えるだけでなく、人の活動のすべてを遺伝子のON,OFFで指示しているのである。例えば、ガンには発ガン遺伝子と、ガン抑制遺伝子があって、両者のバランスが崩れたときに発病する。悪い環境も受け取り方次第なので、心の問題が大きい。したがってその秘訣は、物事を良いほうに考えること、すなわち「プラス発想」にある。
2)生物の基本構造はすべての生物、単細胞から60兆個の細胞の集合体である人間にいたるまで共通である。ということは、人間の場合も、それぞれの細胞にすべての遺伝情報が刷り込まれている。分裂を繰り返す過程でそれぞれの役割分担が決められてゆくので、その役割以外の遺伝子はOFFの状態にある。人間の場合、5%から10%しか稼動していないと思われる。
 したがって、心を入れ替え、遺伝子を活性化することで人には無限の可能性がある。
環境を変えること、情報交換をすること、が人生を変える。こうあって欲しいと望むことはほぼ100%可能性の範囲内にあるといってよい。
3)このような精巧な生命の設計図を書いたのはいったい誰だろうか。
まさに奇蹟というしかなく、人間業をはるかに超えている。そういう存在をサムシング・グレートと
呼ぶ。科学者は生命についていろいろ知るようになったが、それでもわずか細胞1個の大腸菌すら作ることは出来ない。
 人間の能力は、OFFになっている遺伝子を考えると無限大のようだが、それを抑える阻害因子は自然の法則に合致するものではないかと思う。そこで大切なことは「志を高く」「感謝して生きる」こと、「つつしみ」の心を持ち、何か大きな存在を感じることが人間の成長には必要である。



 

 

 

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『時の変化』
吉田 龍一
 人間の社会は、個人であれ、組織であれ、大小の時の変化或いは波に適切に対応することが、安定と発展の基本課題である。この変化ないしは波の動きには必ず「兆し」があり、これを読み対策を講ずることになる。
例えば、労働災害事例において、ハインリッヒの法則は、1件の重大事故の背景に、29件の軽傷事故と300件のヒヤッとする事態があるといい、この軽傷事故なりヒヤッとする事態が「兆し」である。
この「兆し」を察知するためには、個人であれ組織であれ、社会であれ、耳目が泥(なず)まないようにし、無色透明な情報を吸収することが課題となる。
このために、個人でいえば、私利私欲をなくすとか、組織で言えば、位を世襲しない、人材は下から登用する、抜擢するといった事が不可欠である。
 ひるがえって現在の日本の社会では、私利私欲がからんだ話も後を絶たず、位を世襲するといったことが拍車をかけているのが現実である。この結果、あらゆる分野で情報の流れは泥み、親子間、家族間、企業組織、政党等でいろいろな事件、事態が生じている。
 これらの社会現象を改善するためには、まず情報の流れをよくし洞察力を高めことが求められる。
最近起こっているテレビの情報捏造事件とか、国会での審議拒否といった情報の流れに泥ませるような行為は、自ら時の変化の兆しを読むことを拒否している事態ともいえよう。
このままでは、わが国の社会は、兆しも読めず突然不測の事態に陥る可能性がある。
現に、福知山線の事故等突然に起こったようにみえるが、後で考えれば前兆はあった。
時の変化に対応するために、日本人全体が、改めて現在の社会を戒めるべき時期が来ているのではないか。




 

 
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