タイトルの面白さと100万部を超える新書ベストセラーという宣伝文句に惹かれて紀伊國屋に出かけて本書を買って来た。長年会社勤めをしてきた人間として、経理や財務担当者を専門家として畏敬してきたので、この機会に会計(学)に近づいて数字コンプレックスがなくなるなら良い機会だと感じたこともある。なにせ700円と安いし、200ページあまりの新書だから熱心に読めば数時間で終わる。
内容も極めて平易で、商売人や普通の会社員でも多少は経営の一部にでも頭を使った人間なら知っているはずの常識が紹介される。たとえばキャシュフローは大切だとか、リピーターを確保せよ、など。だから新しい情報は何もないと感じる読者はかなり多いのではないだろうか?『読む楽しさに圧倒される』などと誉めそやしている読者はどんな人間だろうと考えてしまう。「会計の重要なエッセンスを学ぶことができる」とカバー裏に書いてあるから、浅薄ながら会計学の本質を数時間で会得したと考えても良いのかもしれない。
身近な事例が紹介される。仲間が集まる食事会でいつもまとめ役になってお金を集めて支払う人がいるが、彼の目的はクレジットカードで支払ってポイントを稼ぐことだけではない。集めたキャッシュを代金引落とし日までの最大45日運用する、それを毎回続けておれば絶えずキャッシュが手元に残るはずだ。「50人に1人が無料−キャッシュバック・キャンペーン」という広告がある。数字にセンスがある人はこれが平均2%の割引と同じであると見抜くだろうが、それでも消費者にはよりインパクトがある戦術だ、など。
このような分かり易い事例が本書が売れる理由かもしれない。さおたけ屋・・のタイトルのうまさは確かに成功したが、さおたけ屋がつぶれない理由は、それほどびっくりする話ではなかった。
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