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2005年8月1日 VOL.39

■書評
・『お寺の経済学』― 後藤田 紘二
・『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』― 櫻田 薫
【私の一言】 『音楽日記(3)─ 誰もが浦島太郎』 風雅こまち

 

 

『お寺の経済学』 2005年3月発行
著者:中島隆信   出版社:東洋経済新報社 

後藤田 紘二  
 日本のお寺が抱えるもろもろの問題を、経済学的に分析しているユニークな書物である。
 著者は、慶応大学の若い先生で、宗教の専門家ではない。この書物を著すまでは、お寺なんぞは法事の時にお世話になるくらいで、仏教の事もあまり知らなかったと述べている点が面白い。従って、俗人の視点からお寺の事情を観察している為、堅苦しいところもなく、私等にとって大層読みやすくなっている。
 仏教界の一通りの説明など、簡潔で判り易い。
 江戸時代に檀家制度が出来上がり、戸籍制度として機能し、広く国民の中に定着し、明治時代になって政府の後ろ盾がなくなったものの、制度そのものは厳然として残った。今の多くのお寺は、その檀家制度の上に乗って安住している為に、保護産業のように活力を失ってしまった、というのが著者の言い分である。
 お寺と信者の関係を長期安定させる檀家制度が、寺経営の緊張感を失わせているのであって、これを撤廃しない限り、お寺の未来がないのではないか、という著者の主張を聞いて、現役の僧侶の方がたはどのように思われるであろうか。
 核家族化や少子化が、お寺の経営にどんな影響をもたらすかとか、宗教法人の課税優遇問題やらお墓とお寺の関係など、お寺にまつわる古くて新しい様々なテーマを取り上げている。若い学者が、新しい角度から学問的に、これらの問題に取り組んでいる姿に接して、何か新鮮なものを感ずる。





『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』
著者:山田真哉  出版社:光文社

櫻田 薫 

 タイトルの面白さと100万部を超える新書ベストセラーという宣伝文句に惹かれて紀伊國屋に出かけて本書を買って来た。長年会社勤めをしてきた人間として、経理や財務担当者を専門家として畏敬してきたので、この機会に会計(学)に近づいて数字コンプレックスがなくなるなら良い機会だと感じたこともある。なにせ700円と安いし、200ページあまりの新書だから熱心に読めば数時間で終わる。
 内容も極めて平易で、商売人や普通の会社員でも多少は経営の一部にでも頭を使った人間なら知っているはずの常識が紹介される。たとえばキャシュフローは大切だとか、リピーターを確保せよ、など。だから新しい情報は何もないと感じる読者はかなり多いのではないだろうか?『読む楽しさに圧倒される』などと誉めそやしている読者はどんな人間だろうと考えてしまう。「会計の重要なエッセンスを学ぶことができる」とカバー裏に書いてあるから、浅薄ながら会計学の本質を数時間で会得したと考えても良いのかもしれない。
 身近な事例が紹介される。仲間が集まる食事会でいつもまとめ役になってお金を集めて支払う人がいるが、彼の目的はクレジットカードで支払ってポイントを稼ぐことだけではない。集めたキャッシュを代金引落とし日までの最大45日運用する、それを毎回続けておれば絶えずキャッシュが手元に残るはずだ。「50人に1人が無料−キャッシュバック・キャンペーン」という広告がある。数字にセンスがある人はこれが平均2%の割引と同じであると見抜くだろうが、それでも消費者にはよりインパクトがある戦術だ、など。
 このような分かり易い事例が本書が売れる理由かもしれない。さおたけ屋・・のタイトルのうまさは確かに成功したが、さおたけ屋がつぶれない理由は、それほどびっくりする話ではなかった。





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音楽日記(3)── 誰もが浦島太郎』
風雅こまち

 お年寄りに起こる「お家に帰りたい病」は、自宅で暮らしている人にもあるそうだ。懐かしい母の顔、近所のおじちゃんやおばちゃんの顔がある、それが我が家なのだ。そこは、自分の居場所のあるコミュニティーなのだ。
この場合に、思い出になる音楽は、気持ちを癒すのに役立つ。
 次元が違うが、平成の大合併で「ふるさとを失くした人」が大量に発生した。浦島太郎の気持ちになった人は多い。私の出身の秋田県では県人口が115万人。首都圏に住まいする息子や娘達が100万人を越える。
 田舎の合併問題は、ふるさとの町の名前や学校、自分の居場所のあるコミュニティーであるふるさとの喪失感は、遠く都会に出て来た者の心に大きな穴を開けた。
 この影響か、音のタイムカプセルと言える「音マップ」を制作したが、今年のコンテストには閉校になる学校の応募が増えた。
 思い出は財産であり、たとえ学校や町が失くなっても、音から連想される思い出は、心の中に生き続け、記憶を呼び起こし、やる気を引き出す。
 ふるさとを喪失した浦島太郎に必要なものは、竜宮城の楽の音。皆と肩を組んだ歌。音楽と音楽療法で心を癒すのが明日の活力にもなります。








 
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