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2006年8月15日 VOL.64

 

 

『私の履歴書 三つの出会い』 
著者:松原治   出版社:日本経済新聞社

稲田 優 

著者は89才になる紀伊国屋書店の現役の会長兼CEOだ。日経新聞の「私の履歴書」に2年前に連載されたものを第一部、第二部はノンフィクション作家の佐野眞一、文芸春秋社の前社長の白石勝、演劇評論家の矢野誠一との対談で構成されている。
第一部の「私の履歴書」は普通の人の履歴書の記述と異なる。著者の綴る「私」は常に客観化された自分だ。「私」を取り巻く周辺の人たちについても余計な説明が一切省かれていてルポルタージュ風でさえある。
「私」の周囲にいる人たちはもちろん、起こった事件・事象すらもみだりに「私」の感情で決め付けてしまわないような配慮が行き届いている。お茶席で亭主に接待されているような静謐さがある。
第一部の前半4割くらいまでは紀伊国屋書店に入社する前の話で、大阪の旧制中学、旧制高校から東大法学部に進み、満鉄に入社、召集令状、新京の陸軍経理学校を経て見習い士官として北支那方面軍で実戦に参加、陸軍経理大尉として復員、日本塩業の創業まで、一大スペクタクルのような迫力がある。
国民党軍を共産党軍から守った敗戦後の日本陸軍残留部隊、蒋介石軍との接収交渉はすごい。
第一部の後半は紀伊国屋書店に入社してから今日まで、創業者の故田辺茂一との得も言われぬ二人の関係に心打たれる。稀代の文化人として今に名の残る田辺茂一が著者に寄せた絶大の信頼と、田辺茂一に対する著者の敬愛の念が行間に漂う。
第二部は対談形式で、そこでは著者のきらりと光る名言がある。
「心理学者に言わせると本はいかに精読しても10%しか記憶に残らない。
しかし、人の話を普通の心をもってきけば60%は残るという。
・・しかし、本を読むということは考えることです。
・・昔の人は“知識は忘れた頃に知恵になる”と言った」。
味わい深い本である。




 
『私の生活流儀』
著者:本多静六   出版社:実業之日本社 
今村 該吉 

本には、季節の移り変わりや人との交わりを通じて、生きることの喜びを感じさせる本と、努力、鍛錬の大切さを説いて、人を元気にさせる本とがあるが、この本は後者である。しかしいわゆる処世訓の書にあるような偽善やお説教ではなく、時にはユーモアを交え、本音で語っているところがいい。
いままで本多静六という名前は知っていた。東大の教授であり、しかも金儲けの天才である、という程度の知識で、何か胡散臭い感じを持っていた。この度、実業之日本社が昭和26年に刊行された本を再刊した。読み出すと、これがとても面白い。私の先入観は吹き飛んでしまった。俗物どころではない。正直で、合理主義で、しかも大変な、超といっていい努力家である。
彼の長寿の基本、健康法は専ら歩くことであった。60過ぎから77まで毎日必ず、たとえ雨の日でも2時間の散歩を欠かさなかった。また耄碌防止のために80歳から英語の勉強に挑戦している。
この本を著した86歳のときの「私の1日」を公開しているが、5時半起床、6時にラジオ英語、朝食と30分の休みの後、読書あるいは執筆、12時に中食、12時半から4時まで畑仕事と散歩、5時に夕食、6時にまたラジオ英語、その後12時半あるいは1時まで執筆、そして就寝。凡人から見れば、超人的である。
まさに彼の言う、人生即努力、努力即幸福を実践貫いた人だった。この本を読むと元気になること請け合いである。




 


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私の子育て日記 その1』
相川 香
1歳9ヶ月になる息子は、最近「機関車トーマス」の大ファン。デパートのおもちゃ売り場では、常時1〜5歳くらいの子供達が5〜10人ほど機関車で遊べるコーナーがあり、お気に入りの場所になっています。
一見ただ遊んでいるようですが、彼らの中には一人っ子らしい我儘放題の子や、人気の機関車をゆずってくれる子供やら様々なタイプの子供達がおり、そこでは様々なドラマがあるようです。
最近息子は、他の子供に「どうじょ(どうぞ)」と貸し、「かちて(貸して)」と借り、「ありがとう」が言えないかわりにおじぎをするという行為ができるようになってきました。
 先日いつものようにおもちゃ売り場に行くと、2〜3人の子供達が遊んでおり、その中に4歳位の男の子がいました。息子が遊んでいると、彼は近くの機関車を指さして「それとって!」と大きな声で息子に話しかけました。年上の男の子が大好きな息子は、うれしそうに「どうじょ」と笑顔で渡しましたが、彼は他の機関車が欲しかったようで「ちがう!そっち!」と怒鳴ってきます。息子はどうしていいのかわからずビックリした表情で、他の機関車を手渡しました。
 すると今度は、息子のお気に入りの機関車を「貸して!」と駄々っ子状態。彼は一人っ子なのかもしれません。息子は、ためらいながらも貸してあげ、その後は半べそ状態になっていました。
 その時、別の4歳位の男の子が現れ、息子と目が合いました。その瞬間、彼は隠れ、息子は機関車を投げ出して追いかけ始めました。言葉を交わした訳でも、ルールもないのに、逃げたり追ったり、2人はとても気が合ったようです。他の子供が仲間に加わろうとしましたが、もう2人の世界で売り場中を駆け回り(本当は注意しなくてはならないのでしょうが。。。)本当に楽しそうでした。
 無理に気の合わない人に親切にし、ストレスが残ることもあれば、会った瞬間に気が合い仲良くなれるという関係もある。子供の遊ぶ姿を見ながら、友達とは無理に関係を作るものでなく、本能で選ぶものなのだ、と人間の性質を感じました。子供ですが、大人の人間関係に通ずる部分も多々あり、それをかわしたり、打ちのめされたりを見ることが興味深く、勉強にもなる今日このごろです。
 このおもちゃ売り場で息子はたくましくなっていくことでしょう。




 

 
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