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■2009年4月15日号 <vol.128>
書評 ─────────────

・書評   石川勝敏  『国富論』 
             原 丈人著  平凡社  
             
・書評   福島和雄  『時価会計不況』
             田中 弘著 新潮新書

・【私の一言】 南魚  『八つ当たり抄』






2009年4月15日 VOL.128


 

『国富論』
著者原 丈人    出版社:平凡社

石川 勝敏    

 著者は慶應義塾大学法学部、スタンフオード大学経営大学院、国連フエローを経て同大学工学部大学院を終了、29歳で創業した光フアイバーのデイスプレー メーカーを売却後シリコンバレーを中心に情報通信技術分野で新技術を創出するベンチャー企業の育成と経営に注力し、十数社を成功に導いた著名なベンチャーキヤピタリストである。財務省参与、数社の社外取締役他公職もある。

 著者は現在 事業持株会社(ベンチャーキャピタル)デフタ パートナーズ グループの会長として、ポスト コンピユータ時代の新産業を先導すべく数社の技術開発会社を育てている。

 先進国における製造業の発展を見ると、繊維産業から始まり鉄鋼、エレクトロニクスそしてコンピユータを中心とするIT産業という形で成長してきている。コンピユータを中軸にするIT産業も成熟した。IT産業の次にどんな新しい技術で新しい産業をつくっていくべきか、そのための技術や資本主義のルールについて著者は卓見を述べている。一部を紹介する。ROEなど数字による経営は、手段と目的を取り違えている。数字にもとずく経営の合理化もフアイナンス テクニックによるものは邪道である。内部留保は長期経営、新技術開発に不可欠である。M&Aで潰れた業界もある。時価会計、減損会計は景気の振幅を激しくする。企業は株主だけのものという考え方は誤りであり、公開企業のストックオプションは廃止すべきである。ヘッジフアンドも規制の対象にすべきである。企業は良い製品良いサービスで社会に貢献し、従業員の雇用や地域社会やその他関係者に責任を負うべきである。アメリカで行き詰まりを見せている考え方や手法をなぜ日本は取り入れるのか、違和感を抱いている人も多い。

 日本の工業品製造能力と新技術のソフトを結び付け、日本はIT産業後の新産業の担い手となるべきである。 


 

『時価会計不況』
著者田中 弘    出版社:新潮新書

福島 和雄  

 昨年9月アメリカ発の金融危機は、たちまち世界を経済不況に巻き込んだ。その原因の一つに時価会計制度がある。今回欧州は凍結し、アメリカに続き日本も暫く凍結することになった。

 この数年「国際会計基準」という言葉をよく耳にするようになった。正式の名称は「国際財務報告基準」という。日本における会計改革は2000年から始まった。当時は橋本内閣の時であり、改革の2本柱は、一つは「規制緩和」もう一つは「自己責任」であった。

 従来日本の企業は決算期末近くになり、その年度の利益が少ないとわかった時や、予想外の損失が発生した時には、買った時よりも値上がりした株を売却して利益を出した。これが「含み経営」であったが、時価会計はこの貯金箱を空けて、カラにするというものである。本当に時価会計にすることが、企業の実態を正しく映すものだろうか?実際に期末に有価証券を売らなくても、期末時点の時価で売ったことにして計算する。時価会計は企業の「貯金箱」を勝手に使えないようにして、カラにしてしまうのである。時価会計は評価益を計上しながら、実は含み損をつくる会計なのである。

 著者がこの本を発刊した時点(2003年4月)において、人件費削減のため工場を海外へ移転したり、派遣社員の増加、海外移転に伴う国内産業の空洞化になって、長期的には収益悪化の原因になると予言していた。著者が言うように「時価会計」は現代の錬金術である。その錬金術に頼ったアメリカはエンロンやワールドコムが破綻した。

 著者は「原価会計」の研究者であり、そして「時価会計」という会計はないと考えている。1930年頃までは欧米各国では時価会計が採用されていたそうだ。しかし当時の世界大恐慌を機に、処分価値(時価)で作ったバランス・シートでは、企業の収益力は読めないという批判が高まり、原価に基づく損益計算書を重視する原価会計に移行した。この本は6年前に発刊されたが的確に現在の経済状況を予測していた。私はサラリーマン人生の大半は経理担当であったが、この本を読んで大変勉強になった。

著者は1943年北海道で生まれ、早稲田大学大学院卒で、現在神奈川大学教授である。主な著書は「会計学の座標軸」「管理職のための新会計学」などがある。





ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『八つ当たり抄』
南魚

○エスカレーターの右空け(東京の場合)愚行は何時から始まったのでしょうか。満員電車が到着してホームが人で溢れている時、エスカレーターの左側に対して長い列、右側には誰も居ない様子を見ると、呆れ、怒りを通り越して笑い出したくなります。

余談ですが、大阪では左側が空いています。なぜ東京とは逆なのか分かりませんが、私はそこに坂田三吉ではないが大阪の心意気を感じます。しかし、大阪にはこの心意気を経済面にもっとぶつけて貰いたいものです。

○ここ数年キャリーバッグなるものが横行しています。人が前を通り過ぎたなと思って前に進もうとすると、キャリーバッグの伏兵が待っていてつんのめりそうになった経験を皆さんもお持ちでしょう。そもそも自分の倍の面積を占有して人ごみの中を縦横無尽に歩き回る態度が気に喰わないのです。

○この頃は合理化のおかげで対面営業の場所が非常に少なくなり、やむを得ず問合せの電話を掛けることが多くなりました。ところが大抵はつながらず、「ただいま電話が大変混み合っております。恐れ入りますがこのままお待ち頂くがお掛け直し願います」というコールが流れてきます。普通は何度掛け直しても余程運がよくなければなかなか担当者に通じません。

行って見たわけではありませんが、多分これは客がそれ程混みあっているのではなく単にオペレーターが少ないからではないかと邪推しています。
○JRに乗って(東京の場合)最近よく聞くのは、どこかの駅で線路に人が立ち入ったためこの電車も一時運転を取りやめますという車内アナウンスです。線路に人が立ち入ったという場面は見たことがありませんが、以前のようにホームに駅員がいたらこんなことは起こる筈がありません。今の駅員さんは、皆さんもっぱらエキナカのお仕事に汗を流しているからではないかと私は思っています。

○いろいろな施設のオープン式典をテレビで見ていると、おじさんたちがなぜか白手袋をはめてテープを細切れにする儀式が見られます。いつも思うのですが、施設は使うためにあるのです。昔の人はえらかった。橋の渡り初めは(代官様ではなく)三代揃った市井の夫婦が行ったというではありませんか。






 イソップ物語に「蟻とキリギリス」があります。 働き者の蟻は、暑い夏中せっせと食糧を集めて、寒い冬に備えていましたが、キリギリスは、蟻が働くのを横目で見つつ、その間中大好きなバイオリンを弾き続け、とうとう着の身着のままで、冬を迎えました。 キリギリスは食べ物も無くお腹が空いて虫の仲間の家を訪ね無心して回りましたが、どの虫からも余裕がないと断られました。 そこではキリギリスは、止むに止まれず、蟻の家に無心に行き、蟻の好意で、やっと食べ物にありついたと言う話です。ただこの結末には色々あるようです。

 戦後(1945年)〜1997年4月に出版されたイソップ寓話107冊のうちアリがキリギリスに食べ物を分けてやらない話 (65冊)食べ物を分けてやる話 (31冊)食べ物をやったかどうか判らないい話 (11冊)だそうです。

 最近のサブプライムローンに発する社会事象には、このイソップ物語の寓意のように色々考えさせられます。

 ご寄稿有難う御座いました。(HO) 








 
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