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2005年5月15日 VOL.34

■書評
・『日本の将来を考える』― 堤 貞夫
・『歳月』― 鷲 太郎
【私の一言】『親の再教育』 岡本 弘昭

 

 

『日本の将来を考える会』
監修猪木正道   2005.3.3刊

堤 貞夫  
 畏友、石川光俊さんから、本が送られて来た。
石川さんは、大学の同級生で、創文社、中央公論で編集者を長年勤めた人である。猪木ゼミらしい一見識ある人で、今は専ら全国の名山を一人で歩いている。
 この本は京都大学法学部猪木正道教授のゼミナール卒業生を中心に2年間にわたって研究会がおこなわれたものを、代表の岸本氏、出版に詳しい石川さんでまとめたものである。
 猪木先生がテレビの報道を見ながら、来訪した木村汎、岸本新兵衛両氏に「僕は憂国の士になってしもうた」といわれたことから研究会が発足し、この提言集となった。
 内容は政治、産業・経営、教育・文化にわたる11の論文からなっているが、私には、岸本新兵衛「中央集権の終焉と自然な生活の復活」
佐瀬俊一郎「今こそ『脱少子化』に向け、国を挙げて抜本的対策を」
大前繁雄「戦後教育の問題点と改善策」、石川光俊「出版の危機を考える」などが、人材・教育に関わるものとして大変参考になった。
 「脱少子化」が、地方分権と自然とともに生きる生活の中で実現し、みんなでホタエたり、伝記を読んだりしながら、知育、徳育、体育がバランス良く実現する社会を望みたいものです。
 この他、木村汎「わが国のあるべき対ロ戦略、中村正志「日本の技術戦略」松村武彦「新しい時代の企業統治について」などがある。
各20〜30ページではあるが、相当に読みでのあるものである。
ご関心のある方は下記にご連絡してください。
   岸本新兵衛 Eメール:sinbei@msf.biglobe.ne.jp





『歳月』
著者:司馬遼太郎   出版社:講談社文庫

鷲 太郎

 この本は、昭和43年に書かれた司馬遼太郎による江藤新平伝である。
 京都河原町通りの長州藩邸前で「もし」と一声高く叫んだのが文久2年の夏で、江藤新平が数えで35才の時である。佐賀藩の下級武士がにわかに人臭い世の中に忽然と現われた最初である。
 その後、39才の時には司法卿に任ぜられ、正四位に叙せられ廃藩置県などの大事業をやってのけたが、41才には佐賀の乱の主犯として大久保利道に「梟首の刑」に処せられ、生涯を終わった。
 これほど短い歳月に栄達と転落の生涯を送った人物は少なく、作者はそこに興味を持ったと思われる。江藤新平は時勢に乗って活躍したが、当人は時勢に乗っているという意識はなく、また時勢のおそろしさということにも気づかなかった。
 作者はその原因を江藤新平は政治界に住んでいながら、政治のもっている寒暖がどうあるか解らなかった。彼には異常な俗務の才はあったが、安全を願って時勢をうかがう欲心はなかったことにあるとしている。本書では大久保利道を登場させ、この点をより明確にしているといえる。
 「薩人智なけれども勇あり 長人智あれども狡猾」と評じた江藤新平だが、当人は情報収集力もなく動きらしい動きもしない「智あって力なし 智あってうかつ」ということであろうか。
 時代の変革期には種々な人物が活躍するが、結局は「智あって力なし」という人間が歴史を差配することは難しいということであろう!






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『親の再教育
岡本 弘昭

 “梨やリンゴの皮を剥くことができない子供たちが高校生を含めて増えているそうである。これは、日常生活に必要なごく当たり前のことができないことを意味する。しかし、本人にはそのこと自体をよくない状態だとの認識がなく、また、できるようになろうと挑戦する姿勢もない。原因は、普段、やらない、やらせないからである。これは、親が剥いたリンゴが眼前に現れるという現実があり、子どもから家事を奪うからではないか。家事は、文字通り「家の事」と書き、家のことは、家の構成員である以上、父親も子どもと一緒に家事をすればそこから自然に会話が生まれ、共通の理解が発生する。そして、共通の理解は、他の社会的事象、果ては倫理観、世界観等にも広がることになる。「おやじ」は、家事も分担し、子どもと正面から向き合うことで子供もリンゴの皮をむく興味をもち挑戦するのではないか。”という指摘がある。
  一方、“靴のかかとを踏み潰し、或いは電車内でも平気で化粧する、所かまわず座り込むという現代の若者の一連の行動、さらに引きこもり現象には、一貫した原理があるとする見解もある。これは、最近の若者は、母子密着型の子供中心主義の家庭で育った結果、私の世界だけに生きようとする「家の中」主義であり、公的状況へ出ることの拒絶、成熟した大人になることの拒絶ということが原因である。
 人間は、涙ぐましい努力を経て、「家の外(家族の外側、つまり社会)」で生活つまり、社会性を持つことを特質としているが、現在の日本では、「家の中」主義が、想像を超えて加速的に蔓延化しており、まさに憂慮される状態にある。この対策には、家族のあり方、しつけ、教育等に遡って考え直す必要がある。”という指摘もある
いずれの指摘も、現代の日本では親、特におやじの再教育が重要課題ということであろう。私も同感である。






 
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