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■2009年1月1日号 <vol.121>
書評 ─────────────

・書評   板井敬之 『飯田龍太自選自解句集』飯田龍太著 講談社
・書評   河西孝紀 『見知らぬ場所』ジュンパ・ラヒリ著 新潮社 

・【私の一言】  岡田桂典 『シンガポール便り』






2009年1月1日 VOL.121


『飯田龍太自選自解句集』
著者飯田龍太   出版社:講談社
 

板井 敬之  

 この本は、嘗ての職場の上司から「俳句を始めてみよ」とのお薦めとともに頂戴したもの。ご子息の書いた「石田波郷伝」や「露伴の俳話」等を読んだことはあるが、句集なるものを読むのは初めてである。自選自解だから句の出来た事情等は分かり易い。

 総数二百句のうち、かすかに記憶にあったのは「山河はや冬かがやきて位につけり」と「大寒の一戸もかくれなき故郷」の二句。以前「折々のうた」等で取り上げられ、印象に残っていたためであろう。句集を鑑賞しての印象は、句の端正さと甲州の気候や山河の厳しさである。著者が人から「甲州はいつ旅するのが良いか」と聞かれ、「即座に『三月にしなさい』と答えた」とあるくらいだから、昭和を含めそれ以前の寒さは尋常でなかったと思われる。

 新宿を起点とする甲州街道やJR中央本線があって、甲州は首都圏在住者には馴染みが深い。歴史上も信玄公と武田軍団にまつわるいくつかのエピソードや新撰組の末期における係わり等があり、身近に感じられる。
 嘗て桃の花の盛りに甲州を訪ねたことがあった。高台に登ると、手近な山々は全てピンク色に染まっているという忘れがたい光景に出会った。
 句集を読了したが、俳句どころか甲州についてあれこれ思いを巡らせ、予期せぬひと時を過ごした。句作までは到底たどりつけない。



『見知らぬ場所』
著者ジュンパ・ラヒリ  出版社:新潮社
 

河西 孝紀  

 第一部は五つの短編小説、第二部は三つの短編からなるが連続した物語になっている。いずれも主人公はベンガル地方からアメリカに移住したインド人を両親に持つ人達である。

 第一部は、さりげない何処にでもある平凡な日常生活をテーマにしている。
人が生きていく上で避けて通れない愛や哀しみの物語を淡々とした文章でつづりながら、最後に見事な結末をつけて、それぞれの短編にスパイスをきかせ余韻を残す処が心憎い。
 表題にもなっている「見知らぬ場所」では妻を亡くした父親が娘に内緒にして付き合っている女性に出すつもりの葉書を紛失し、父親が旅立ってから偶然娘がそれを見つけて投函するくだりがあるが、妻に先立たれ一人後に残された父親の寂しさや、新しい女性のいる後ろめたさ、また、娘の父親に対する暖かい目線をさりげなく描いている。

 第二部の「ヘーマとカウシク」は幼い男女の出会いに始まり、離別を経て、運命的な再開を果たした後、最後に悲劇的な結末を迎える物語となっている。
癌の症状を持つ母親をかかえたカウシクの三人の家族をそれとは知らずに,一時的に同居人として受け入れるヘーマの家族とその人間模様を描くことから始まる。
「一生に一度」「年の暮れ」「陸地へ」の三章の短編が連続した物語になっており、さながら長編小説の様相を呈している。
根底は一部と同様「人間の営み」の哀しさがテーマとなっており静謐な文章でつづられている。
 特に最終章はヘーマとカウシクが再開した後、どの様な結末を見せてくれるのか大きな期待を持たせながら最後まで一気に読み進ませてくれる魅力を持っている。

著者の紹介
1967年ロンドン生まれ 両親ともカルカッタ出身のベンガル人
代表作 「病気の通訳」「停電の夜に」「見知らぬ場所」等
0・ヘンリー賞、ヘミングウエイ賞、フランク・オコナー賞などを受賞





ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『シンガポール便り(18)- 民主国日本』
岡田 桂典

 私が住むシンガポールの政府は極めて清潔、有能で、昨年一人当たりのGDPは日本を追い越しました。ところが欧米のマスコミは、この国は“民主的でない”と、ずっと非難して来ました。彼等は民主主義こそが経済成長をもたらすと主張したいようですが、この国の政権党PAPは国会の80議席を長年に亘りほぼ独占し、独立以来43年間に首相は3人しかいない、いわば一党独裁の国だからです。

 最近、この民主主義信仰は急に揺らいできたようです。共産党独裁だ,人権無視とあれだけ罵倒した中国が現況の世界大不況を克服する救世主と崇められ出したからです。

 シンガポールも中国も一党独裁ですが、考えてみると“統治の責任は政権党にある”と極めて明確です。古代からの王朝も近代の独裁国も最後は国民の支持を失って倒れていますから、非民主国の指導者のほうが却って真剣に政治運営を行っているのではないかと考えるようになりまた。

 又、両国とも国家運営は極めて能率的です。決定は党の上層部が行い、官僚には“省益”なぞないようです。中国では約6〜7%が共産党員で、その内の超優秀な人々が北京に集められ、世界の政治経済の動きを徹底調査・研究し政策原案を作ります。内部の議論は自由だそうで、彼等の原案を基に国家の政策は上部が決定し、全国の共産党員が国民を指導するのだそうです。

 我が民主国日本。バブル破裂以降、18年間に14人の首相がいました。これではまともな、責任ある国の運営が出来るはずがありません。日本の政治の劣化、国民の政治不信が嵩じていますが誰の責任でしょうか。独裁国ではリーダー達(中国は通常トップの任期は5〜10年)の責任とはっきりしています。ところが日本ではマスコミ、評論家方、“政治家は国民自らが選んだのだ”、“政治を変えるには選挙である”と、我が民主国ではすべからく“政治の責任は国民にある”という事になってしまいます。

 麻生首相の人気急落と、こちらの新聞にも出ています。朝の散歩の中間の1人が言いました“来月日本へ行くので空港に今誰が首相か名前を書いといてよ”、民主主義の有り難味は分かりますがやり切れませんね。
 馬齢を重ね、老後が心配になるばかりです。一党独裁でも良いから年金,医療、介護、[死ぬまで安心]させてもらいたいと願いたいのですが、投票に行けば解決するのでしょうか。






明けましておめでとうございます。
本年も引き続き、ご愛読、ご寄稿のほど、宜しくお願い申し上げます。

 さて、人間の体は、8という数字に縁が深いそうです。例えば、8の4倍の32が一分間の呼吸数であり、その倍の64が一分間の脈拍数、さらにその倍の128が血圧という具合です。これは、月の引力による潮の満ちひきが一分間に16回ということに関連があるそうです。
 さらに、最近読んだ記事によると心臓の鼓動は、0.8秒に一回だそうで、またもっともおいしいと考えられる塩分濃度は0.8%だそうです。
本年は2009年で平成では21年で、8には関係のない年ですが、健康面を含めて8という数字に注目して活動したいと思います。

 本年の皆様方のご健勝とご活躍を心から祈念申し上げます。

 新年早々から貴重な書評、ご意見を頂き有難うございました。(HO)








 
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