著者 慶応大学医学部放射線科講師 慶応大学医学部卒
癌年代の我々には癌は脅威だ。癌の告知が普通となり、医師の説明に基づく患者の自己決定が大切な時代になりました。著者の意図は癌や治療に対する、患者の知識不足や誤解、不安や焦りを解消することにあります。
癌に関しては今転移しなくても明日転移するかも知れないという通念があり、そのため患者や家族は一刻も早く治療をと焦る。しかし、その通念こそが癌に対する誤解の最たるものだと著者は言う。
「全ての癌は発見された時点で、別の臓器に転移するものと転移しないもの、かのどちらかである。臓器転移がない癌は治療しないで放置しても転移しない。」そこで著者は転移しない癌をがんもどきと名付けた。これに対し転移する癌は治療しても治らないと言う意味で本当の癌と名付けた。
この考え方に従えば、もし臓器転移するのであれば治療してもあまり意味がないから最小限の治療(場合に依っては無治療)で十分であり、もし臓器転移がないのであれば今後も転移しないのだから、やはり最小限の治療で十分と言う事となる。癌が本物の癌とがんもどきに分かれる事を知ると、いろいろな判断に役立つ。
癌を思わせる症状がない場合に癌発見のための検査を受けるかどうか。
癌の初発病巣の治療を手術にするか放射線にするか。
原発病巣を治療する他に抗がん剤治療を受けるかどうか。
治療後の再発発見のための検査を受けるかどうか。等について明確な指針が得られる。
転移はいつ起こるのか。原発病巣が0.1ミリ大のあたりに転移時期のピークがあり、殆どの患者は病巣が1ミリ以下のとき転移がみられる。
がんもどきが発生する癌は胃、肺、大腸、前立腺、子宮などの固形癌である。白血病、悪性リンパ腫はがんもどきとは関係が薄く、また抗がん剤の効果が高い。
胃癌では進行癌でもすぐに亡くなることはない。体力的に手術できなかった人達のデータでは免疫療法や抗がん剤投与グループのほうが生存期間は短い。乳がんだけでは死なない。転移で死亡する。肺がんは入り口付近であれば呼吸不全で死亡する。肝癌は肝機能不全で、食道癌や胃癌は栄養失調で、膀胱癌や前立腺癌は排尿困難、腎不全で、子宮頚癌は周辺浸潤、尿路閉塞、腎不全で亡くなる。PSA検査で発見される癌の殆どはがんもどきである。
CTによる被ばく発癌が癌死を生む。CT1回で20ミリシーベルト×写真枚数であり危険である。胃レントゲン検診も胃がレントゲンに敏感なため危険である。
抗がん剤で治るのは急性白血病、悪性リンパ腫、こう丸癌、子宮絨毛癌の4つだけであり延命効果より縮命効果の方が大きい。
この著書は現在の医学界の大きな反論を呼ぶであろう。私はいろいろ勉強になりました。ご一読をお薦めします。