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■2011年10月15日号 <vol.188>

書評 ─────────────

・書 評    石川勝敏 『あなたの癌はがんもどき』
            (近藤 誠著  梧桐書院)

・映画評    浅川博道 『一枚のハガキ』
            (監督:新藤兼人 主演:豊川悦司・大竹しのぶ)

・【私の一言】川井利久 『死後の世界』


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2011年10月15日 VOL.188


『あなたの癌はがんもどき』
 (近藤 誠著  梧桐書院)  

石川 勝敏   

著者 慶応大学医学部放射線科講師 慶応大学医学部卒
癌年代の我々には癌は脅威だ。癌の告知が普通となり、医師の説明に基づく患者の自己決定が大切な時代になりました。著者の意図は癌や治療に対する、患者の知識不足や誤解、不安や焦りを解消することにあります。
癌に関しては今転移しなくても明日転移するかも知れないという通念があり、そのため患者や家族は一刻も早く治療をと焦る。しかし、その通念こそが癌に対する誤解の最たるものだと著者は言う。

「全ての癌は発見された時点で、別の臓器に転移するものと転移しないもの、かのどちらかである。臓器転移がない癌は治療しないで放置しても転移しない。」そこで著者は転移しない癌をがんもどきと名付けた。これに対し転移する癌は治療しても治らないと言う意味で本当の癌と名付けた。
この考え方に従えば、もし臓器転移するのであれば治療してもあまり意味がないから最小限の治療(場合に依っては無治療)で十分であり、もし臓器転移がないのであれば今後も転移しないのだから、やはり最小限の治療で十分と言う事となる。癌が本物の癌とがんもどきに分かれる事を知ると、いろいろな判断に役立つ。

癌を思わせる症状がない場合に癌発見のための検査を受けるかどうか。
癌の初発病巣の治療を手術にするか放射線にするか。
原発病巣を治療する他に抗がん剤治療を受けるかどうか。
治療後の再発発見のための検査を受けるかどうか。等について明確な指針が得られる。
転移はいつ起こるのか。原発病巣が0.1ミリ大のあたりに転移時期のピークがあり、殆どの患者は病巣が1ミリ以下のとき転移がみられる。
がんもどきが発生する癌は胃、肺、大腸、前立腺、子宮などの固形癌である。白血病、悪性リンパ腫はがんもどきとは関係が薄く、また抗がん剤の効果が高い。
胃癌では進行癌でもすぐに亡くなることはない。体力的に手術できなかった人達のデータでは免疫療法や抗がん剤投与グループのほうが生存期間は短い。乳がんだけでは死なない。転移で死亡する。肺がんは入り口付近であれば呼吸不全で死亡する。肝癌は肝機能不全で、食道癌や胃癌は栄養失調で、膀胱癌や前立腺癌は排尿困難、腎不全で、子宮頚癌は周辺浸潤、尿路閉塞、腎不全で亡くなる。PSA検査で発見される癌の殆どはがんもどきである。
CTによる被ばく発癌が癌死を生む。CT1回で20ミリシーベルト×写真枚数であり危険である。胃レントゲン検診も胃がレントゲンに敏感なため危険である。
抗がん剤で治るのは急性白血病、悪性リンパ腫、こう丸癌、子宮絨毛癌の4つだけであり延命効果より縮命効果の方が大きい。

この著書は現在の医学界の大きな反論を呼ぶであろう。私はいろいろ勉強になりました。ご一読をお薦めします。

 

 

映画評『一枚のハガキ』
(監督:新藤兼人 主演:豊川悦司・大竹しのぶ)

浅川博道   


新藤監督は2011年4月、99歳の誕生日を迎えた。「一枚のハガキ」は、その映画人生をかけた最後の作品として話題を集めた。99歳まで生きること自体容易でない上に、映画監督という実にハードな仕事に挑み続ける力は、いったいどこにその源があるのであろうか。

この映画のパンフレットの中で、新藤監督は「私が見た戦争を映画にしてからじゃないと死ねないと思った」と語っている。太平洋戦争の末期に32歳で2度目の召集を受け、100人の部隊に配属される。100人は上官がクジを引いて決めたマニラなどの任地に赴任する。クジでたまたま宝塚に赴任した6人だけが終戦で生き残る。新藤監督はそのうちの一人。
戦後66年、自分が生き残り、映画の仕事を続けてこられたのは94人の犠牲のおかげという思いを、新藤監督はずっと背負ってきたことになる。このことに触れたくない気持ちと、いつか言わなくてはという気持ちの葛藤、戦争体験者だけが背負う重荷だろうが、今回の映画でその思いを果したことになる。

映画では、主人公(豊川)がフィリピンへの赴任が決まった兵士から一枚のハガキを手渡される。妻(大竹)から送られたハガキだが、宝塚に赴任する主人公がもし生き残ったら、このハガキを持って妻を訪ね、読んだことを伝えてほしいと頼む。ちなみにハガキの文面は、「今日はお祭りですが、あなたがいらっしゃらないので、なんの風情もありません。友子」
このハガキが、戦争ですべてを失った男と女を巡り合わせることになる。二人は新しい生活を目指して、土地を耕し、麦畑を切り拓いていく。豊川と大竹の圧倒的な存在感、入魂の演技を通して「生きているかぎり生きぬきたい
」という新藤監督の叫びが、観る者の心に強く迫ってくる。

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『 死後の世界』
 川井利久 



歳をとってきて、死後の世界はどうなっているのだろうかと考えることが多くなってきた。先祖や自分自身の今後はどうなのだろうか。お墓や戒名、葬式のやり方はどうすべきか、迷うことが多い。
人間は地球誕生46億年からみるとかなり最近になって、ある日偶然のように単細胞が生まれ、それが長い間の進化によって60兆個の細胞を持つ、複合生物に進化したらしい。
数十種類の元素からなるタンパク質を主成分とする生命体らしい。

いずれの御時にか、精神が宿り、いろいろ小難しいことを考え出しては自ら悩むようになったらしい。
生命への執着から、死後の世界を極楽と地獄に分類して、自分は極楽で楽しく暮らすのだと言う、脳天気な王様が現れて、原始宗教を創って良民を悩ませてきた。
その後、釈迦やキリスト、マホメットのような優れた宗教家が現れて、この地獄のような現世をいかに心豊かに送るかを説いてきた。来世についても肯定している。
しかし心肺停止し、箱に入れられた上、電気炉で数千度で焼却され、カルシュームのみとなり果てた物体に、どのような霊的な精神構造が残存しうるのだろうか?

ましてや、天国に飛んで行ったり,閻魔大王の前によろめきでることなどできるのだろうか?死にかけて三途の川を渡りかけて戻って来たと言う人もいるが,そういう体験が皆無の人間には信じがたい。釈迦は生き物は7回生まれ変わると説いているが、それなら節電をして、焼かずに防腐処理をして昔のように野山に土葬して,海ゆかば水漬く屍、山ゆかば草むす屍となって,草木の肥やしとなり転生を促進した方がエコである。
しかし生来、そそっかしくて失敗ばかりしてきたこの人生、うすっぺらな唯物論だけで 来世を無視して、あと数億年を地獄で生きる元気もなし、適当な処でお墓と戒名を値切ってなんとか極楽の端っこに置いてもらう算段でもしようかと考える昨今である。

 

 


高齢化社会の進展は、医療需要を増大させ、また、要介護老人等への社会的支援制度の拡充も必要とし、年金保険負担も大きい物があります。1970年の社会給付費の総額は、3兆5239億円であったが、2008年(平成20)では94兆0848億円と26.7倍になっていると伝えられています。日本の財政状況悪化の中で後世に大きな影響を及ぼす大きな要因になると思われます。これに関連して、
『客と白鷺は立ったが見事』という言葉と『朽木は雕(え)るべからず』という論語を思い出しました。

本号も、多面的なご寄稿をありがとうございました。(H.O)





 
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