このサイトでは書評、映画・演芸評から最近の出来事の批評まで幅広いジャンルのご意見をお届けしていきます。
読者の、筆者の活性化を目指す『評論の宝箱』
意見を交換し合いましょう!

 
       

 

 

■2009年9月15日号 <vol.138>

書評 ─────────────
 
・ 書評   前川 彬 『老年学に学ぶ サクセスフル・エイジングの秘密』
          山本思外里 著  角川学芸出版   
 
・ 書評   船渡尚男 『江戸の遺伝子』
          徳川恒考(18代)著 PHP

・【私の一言】川井利久 『恵まれた時代』





2009年9月15日 VOL.138


『老年学に学ぶ サクセスフル・エイジングの秘密』
著者山本思外里  出版社:角川学芸出版

前川 彬    
 本書は、読売新聞社をリタイアした著者が、70歳から本格的に「老年学」の勉強を始め5年以上をかけて得た成果をまとめた本である。著者は、「長い余生を健康で楽しく暮らしたい、そして最後までボケずに安らかに死にたい」という思いから学び始めたと言っているが、本書はもはや、学ぶ段階を通り越して研究の域にまで達している。
全5章から成り、第1章:寿命と老化〜「老い」の生物学的研究、第2章:「老い」の意味と価値〜「老い」の心理学的研究、第3章:老年期をどう過ごすか〜「老い」の人生哲学、第4章:現代養生訓〜「老い」の医学的研究、第5章:死をどう準備するか〜「死生学」の研究まで、「老い」を多角的に取りあげた構成となっている。内外の多くの文献から得た成果だけに内容は充実しており、マスコミ出身の人であるのでたいへん読みやすく書かれている。

 著者によれば、老年学(ジェロントロジー)は約100年前に導入され、20世紀の後半以降欧米で発達し、とくに1980年代からアメリカで学際的研究が進められているが、残念ながら日本ではまだ未成熟であるという。老年学は、人の生命を延ばすのを目的にしているのではなく、老人が肉体的にも精神的にも健康であり、人の寿命の中で生命力と活動力をできる限り長い期間保てるように研究し、その実現を図ることを目的としている。したがって、寝たきりなどにならないでいわゆる「PPK(ピンピンコロリ)」の老後を送りたいと願う高齢者には、本書をぜひ一読されることをお勧めしたい。おそらく「老い」を生きていくうえで多くの示唆を得られるであろう。

 私も、リタイア後「アンチ・エイジング」と「サクセスフル・エイジング」を心構えとして生活しているが、本書によって、自分の生活行動の理論的整理ができたのは大きな収穫であった。また、本書の読後、貝原益軒の『養生訓』(本書第4章の基本となっている)をはじめとする著作を読み返しているが、日本の老年学の先駆者ともいうべき彼の言葉はすばらしい。曰く
「二度と生まれてくる身ではないから、この世にある間は楽しんで生きなければならぬ」(慎思録)
「老後は、若き時より、月日の早きこと十倍なれば、一日を十日とし、十日を百日とし、一月を一年とし、喜楽して、あだに日を暮らすべからず。」(楽訓)


『江戸の遺伝子』
著者徳川恒考(18代)  出版社:PHP

船渡 尚男   

 明治以降の歴史教育、極端な天皇制賛美の風潮の中にあって、江戸時代が正当に評価されなくなったことについての穏やかな反論の書。
社会、経済、文化、制度などの事実を具体的に解説している。
2年前小生 江戸歴史検定に挑戦した。その時青山学院の全キャンパスを使い1万人が受験した。このことからわかるように、江戸時代を見直すことが大きな高まりとなっている。

 慶長時代の人口は1200万人、これが元禄時代になると3000万人に急増した。17世紀にこれだけ人口が増えたのは日本のみ。
これには街道、道路網の整備、新田の開発、裁判制度の適切な運営、などの効果が大であった。伊勢参りは人々の見聞を広めた。参勤交代の波及効果も大きかった。

 綱吉の「生類憐みの令」の関連のお触れは135回出されたが、処罰されたものは24年間で69件、死罪は13人に過ぎなかった。
神田上水、玉川上水などの上水道、さらに下水の処理も極めて巧みであった。
18世紀では世界1(?)であった、身分制度のもとで人々は豊かさを実感できるようになった。寺子屋などでの教育は、社会全体で子供を育てようとの雰囲気作り出した。独自の宗教観と相俟って 経済合理性と社会的価値を併存する国、これが江戸の遺伝子である。

清潔で安全な国という日本への信頼感をなんとしても維持して行きたい。

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『恵まれた時代』
川井 利久

 私の子供の頃は食べる物がなく、着るものなく、住む家がなく、読みたい本がなく生きるのに親子ともども必死であった。やっと手に入った1個の卵を6人の兄弟で分けて各自のご飯に等分にかけるには200回もかき回して,黄身と白味が完全に混じるまで交代でやって喜んで押し頂いたものだった。
野球をするにもグラブがなく、不器用な母親がボロ切れで作ってくれた 手袋で恥ずかしくやったものだった。しかしいつも腹を空かせており、辛くもあったが何か生きる喜びがあった。

 今の子供たちを見ていると、飯は残す、好き嫌いが多い、テレビやファミコンにかじり付いて集団で外で遊ぶことがない。顔色も生っちょろくて,元気がない。低学年から塾通いでくたびれている。
この恵まれた時代に何か狂っている。そして大人になっても閉塞感と競争社会が待っている。折角戦後の焼け野原から日本を甦らせて、やっと先進国の一隅に座ったのに、若者たちに未来への明るい展望が見あたらないとはどういう事か。
日本は資源がなく、領土も狭いなかで人材のみが頼りの国である。
さすれば命の綱は教育である。過去の傑物の人生を紐解くと多くの場合、幼少時の不幸乃至辛酸がある。しかるに現代の子育ては幼児期の甘やかしと思春期の放任で子供の育成が不全になっている場合が多い。“三つ子の魂、百まで”は真理である。そのころの幼児はかわいい。
つい甘やかしたくなる。ユダヤの家庭ではそのころの幼児を親が手から落とすそうである。そして親でも信用してはいけないと言う事を身をもって感じさせるそうである。

 教育立国しかない日本は、医学的心理学的教育学的分析を駆使して、人間の性格形成のタイミングとそこに与えるべき教育(しつけ)をボーリングしてあるべき幼児教育のバイブルを作る必要がある。保育園の拡充もその一つだ。その上に小学校〜大学教育の再構築を行い、日本人の人格の国際競争力をレベル・アップすることが大切である。
子や孫たちに明るい楽しい未来を歩んで行かせたいためには、家庭、学校、社会全体の緻密で統一のとれた、それでいて全体主義にならない教育体系が必要である。

 

 

 

 

 民主党政権がスタートしました。組織とか制度というのは、30年〜40年で疲弊するそうで、日本の諸制度の多くは見直しを必要としている時期と思われるだけに、新政権による変革が期待されます。
この中には、高齢化社会問題、教育問題、社会性等もあります。今号はこれらにも関係する書評、意見を掲載させていただきました。
ご寄稿有難う御座いました。(HO)

 

 




 
バックナンバー
2012/12/15
2012/12/01
2012/11/15
2012/11/01
2012/10/15
2012/10/01
2012/09/15
2012/09/01
2012/08/15
2012/08/01
2012/07/15
2012/07/01
2012/06/15
2012/06/01
2012/05/15
2012/05/01
2012/04/15
2012/04/01
2012/03/15
2012/03/01
2012/02/15
2012/02/01
2012/01/15
2012/01/01
2011/12/15
2011/12/01
2011/11/15
2011/11/01
2011/10/15
2011/10/01
2011/09/15
2011/09/01
2011/08/15
2011/08/01
2011/07/15
2011/07/01
2011/06/15
2011/06/01
2011/05/15
2011/05/01
2011/04/15
2011/04/01
2011/03/15

2005/03/01

2004/12/01

 
 
 
 
 
Copyright(c)2001-2009 H.I.S.U.I. Corp. All right reserved.
□動作確認はMac OS9.2 + IE5.1にて行ってます。
□当サイト内コンテンツおよび画像の無断転載・流用を禁じます。










SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送