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2005年5月1日 VOL.33

■書評
・『ためらいの倫理学』― 岩瀬 登
・『美は時を超える― 千住博の美術の授業2』― 矢野 寛市
【私の一言】 『音楽日記(1)― 歌の効用』 風雅こまち

 

 

『ためらいの倫理学』
著者:内田樹(たつる)   出版社:角川文庫

岩瀬 登  
 月刊「論座」の4月号に金子勝、宮崎哲也、斉藤環の3人が『情緒頼みの「右」とホンネを語らぬ「左」』というタイトルで鼎談している。このなかで、新聞、雑誌等の紙メディア以外の存在が大きくなってきていることが指摘されている。なかには有料メルマガで飯が喰えるようになった評論家もいるという。
 この本の著者内田樹氏は、ある作家のブログ日記の中で紹介されていた。この本「ためらいの倫理学」の大半の文章は、著者が「あとがきー解題とともに」で書いているようにHP(ホームページ)で日記として、誰宛とも意識せずに書いたものがウェブサイトで反響を呼び、それがある編集者の眼にとまり、活字として出版されるに至ったもの。著者(1950年生まれ)の商業出版としてのデビュー作。
 この著作以降、著者は活字メディアにかなり頻繁に登場するようになる。それは「批評性の硬直」した状況のなかで、「ふつうの人の、ふつうの生活実感」に基礎づけられた平明な批評の語法が評価されたからだといわれている。
 この本のおもしろさは、「とほほ主義とは何か」「古だぬきは戦争について語らない」「『男らしさ』の呪府」「『女が語ること』のトラウマ」「わかりにくく書くことの『愉悦』について」「現代思想のセントバーナード犬」などのユニークな表題からも推察されるだろう。女子大学の教員として、毎日学生と直に接している「現代若者論」もおもしろい。
 「自分の正しさを雄弁に主張できる知性よりも、自分の愚かさを吟味できる知性のほうが、私は好きだ」という著者はスーザン・ソンタグから、「自由主義史観」に至るまで左右の硬直した原理主義の問題点を指摘している。他方、大岡昇平のレイテ戦記と加藤典洋「敗戦後論」のなかの『ねじれ』論を評価している。今さら「右」も「左」もないと思うが「正しい日本のおじさんの道」(これもエッセイの表題)を模索したいと思う人にはお薦めの著作である。
 著者は神戸女学院大学文学部教授、専門はフランス現代思想、映画論、武道論(合気道有段者)。




『美は時を超える― 千住博の美術の授業2』
著者:千住博  出版社:光文社新書

矢野 寛市

 この本は、日本画家である著者が、著者の画業を通しての体験と勉強とから、絵とは、美とは、芸術とはという難しい命題に、大胆で明快な答えを出しており、写実的な絵を描くことに何となく不安を感じていた私も共感するところが多々ありました。
 A 著者は、サワラ砂漠を遊牧民の案内人と旅をした体験や、ニューヨークに住んで色々な人種の人達と接した経験から、人間は皆同じと強く感じる。美しいものは、皆美しいと感じる筈である。
 アルタミラの洞窟の天井に、最初は神への祈りで動物を描いていた人達が、その内に描く楽しみ、見る楽しみ、見せる喜びを知ったのではないか。アリストテレスも「似せる喜び」も「見る喜び」も人間の本能と言っている。
 B 著者は中国の昔の絵を見て圧倒され、絵に対する考え方を変える。日本の美を詩歌論から学び、「余白」の意味を知る。更に、鎧兜の祈りに通ずる美しさに触れ、圧倒的な美は、宗教、思想を超え、同時に何百年という時を超えると考える。
 C 19世紀末から20世紀にかけて科学万能の時代に入り、神は死ぬ。モネは日本庭園を作り、「虚」の絵を描く。アンディ・ウオーホルは,大量消費社会を象徴する絵を描く。これはやり切れない虚無感を表したミニマルアートに迄行き着く。
 D 同時テロ発生と共に、これらの虚無的な現代美術は人々から見向きされなくなり、美術家は、再び人々に感動を与え、生きる力を与えるような創作活動をはじめている。著者は、人の心や痛みを思いやるイマジネーション豊かな創造の世界を通して、美がすべてを超える大切なメッセージを発信し続けていることを改めて感じる。また、この辺りに21世紀の美術の活路があるのではないかと考えている。







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『音楽日記(1)─ 歌の効用
風雅こまち

 私は、「音あそび教室」を主宰し、音楽療法を中心に教育活動をしております。
 最近感じることは、会話の男女の声域がずいぶん変わったということです。女性のような高い声の男性、女性は低くなる傾向です。女性が高い声を出す 時は、表情筋を用います。目をカッと見開き眉を上に上げ、頭声的発声と言われる額に響かせる方法が一般的です。昔のお母さんの「ハイ、もしもし〜」とちょっときどった電話の声です。しかし最近は、女性の社会的地位の向上との関わりで落ち着いたトーンが好まれるためか、女性は顔の表情も乏しくなる一方、声はトーンダウンしていると感じます。この原因のひとつは、家庭や職場に笑顔が少ないことと関係が深いと思います。笑顔は、表情筋を使いそれを活性化するからです。
 一方、最近の子どもや若者は、低い声で「オッス」と言うことができません。おへそに力を入れて〜という指示も通じません。これは、腹筋の弱いことが原因のひとつです。
 声を出し、歌を歌うことは、腹筋を鍛え、表情を豊かにします。勿論笑顔もふえ皆が明るくなります。
 激しい運動は難しい方でも腹式呼吸を行い、あわせて、リズム運動やストレッチも手軽に取り組めます。また、民謡や童謡を通じて、3世代交流も出来ますし、情操を育み日本の文化理解にもなり、声を掛け合う明るい町作りにもつながります。
 音楽は人間の素晴らしい友達であり メンタルヘルスやダイエットに音楽を活用する需要は今後どんどん高まることと思います。
 歌を歌って、心と身体の健康作りを御一緒にやろうではありませんか。






 
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