久しぶりに長編ものを根気よく読破した。400字詰原稿用紙1650枚分という力作なのである。ストーリーは次のようなものだ。
北朝鮮の反乱軍と称するわずか9名の武装戦闘員が、突如、日本の北九州の小島に上陸し、乗客にまぎれてフェリーで福岡市にやってきて、プロ野球開幕戦最中の福岡ドームに押し入り、武力を誇示して制圧し、まもなく後続の反乱軍500名の特殊部隊が空路福岡市に乗り込み、福岡市を占領する。日本国政府は、危機管理センターを立ち上げるが、人質をとられている為、何の対策も打てないまま、モタモタする。やがて暴走族の手を借りた命知らずの不良若者グループが、この北朝鮮特殊部隊に対して立ち上がり、爆弾を仕掛けて、北朝鮮特殊部隊を全滅させる。こんなストーリーになっている。
あらすじは風刺漫画のようなのであるが、文体が読みやすく、話の運び方が巧みで、かつ情景描写が精緻な為、思わず読者はストーリーの中に引き込まれてしまう。フィクションであると分かっていながら迫真力のある筆の運びに、思わず現実の世界との境を失ってしまうほどである。作者が北朝鮮兵士のことやらを、よく下調べをしてあるからだと思う。
真顔で日本の危機管理を考える立場の人にとっては、ヒントも多く、単なるフィクションといって笑ってもいられないかもしれない。
拉致問題、イラク問題やら憲法論議が盛んになってきた昨今、著作としてはタイムリーであり、また、スリラー物として、お盆シーズンにも向いている本のようだ。
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