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■2010年3月15日号 <vol.150>

書評 ─────────────
 
・書評   矢野 清一  『日本の曖昧力』(呉 善花著 PHP新書)

・書評   植松 敏明  『始まっている未来 ― 新しい経済学は可能か』
                (宇沢弘文・内橋克人著 岩波書店)

・【私の一言】佐々木菜穂子 『21世紀は女性の時代!』


 

2010年3月15日 VOL.150


『日本の曖昧力』
著者:呉 善花    出版社:PHP新書
矢野 清一   
  昨年後半に、小生は、思いがけず脳梗塞におそわれ、一ヶ月近くの入院生活を余儀なくされたが、幸い病後の経過も順調で、大きな後遺症も無く、ほっとしている時に、何か気楽に読み進める本はないかと近くの書店に立ち寄った際に、この本を見つけてきた。読み進むうちに、どんどんと惹きつけられて一気に読み終えることが出来た。書評と言うより、読後感をご披露したいと思い立って書き進めている。

 本書の著者は、第二次大戦後の1956年生まれの韓国女性で、留学で来日し、日本の文化や歴史など、奥深く調査研究を続け、日本や日本人を良く理解してくれている文化人類学者である。現職は、拓殖大学国際学部教授で、本書は、同大学での学生への講義を基にして、一部、筆を加えて書かれたものである。

 著者は、「日本が嫌いな日本人へ」や、「日本の瀬戸際」などという著作もあり、我々日本人自身が今まで余り気付いていない視点で、日本のことや、日本人のことについて書いてきている。本書も、どちらかと言えば、日本人は、「優柔不断で、YES、NOが、はっきりしない」と言った、マイナス面からのみ評価されてきたような、日本人の、所謂「曖昧さ」を日本の歴史や、文化と結びつけて、寧ろ、好意的に、プラス面に評価するという、著者の日本人観が示されていて、成る程と大いに肯かされた次第である。

 通常、アジアの人達から見た日本観・日本人観は、過去に不幸な歴史があっただけに、どうしてもそれに左右され易い先入観があって、客観的な考え方が出てきにくい点が多々あるように思われるが、本書の著者は、明治初期に来日したアメリカの文化人類学者、エリザ・シドモア女史と同じような考え方で、日本・日本人について、積極的に受け止めてくれているように思われる。

 今、世界は西も東も無く、北や南も無く、お互いに理解しあい、助け合っていく時代になっているが、日本も、著者の言うように、決して自らを卑下することなく、世界に通用する『日本の文化・文明』を、世界中の人々に理解してもらうように大いに頑張って行けば良いのではないかと考える。
詳しい内容は、敢えてここでは紹介しないが、病後でも一気に読み終えられた非常に読みやすい本であり、一日本人として、読後に何か清涼感さへ感じさせられる著書であることを終わりに申し添えたい。

『始まっている未来』- 新しい経済学は可能か -』
著者:宇沢弘文・内橋克人    出版社:岩波書店

植松 敏明   


 ノーベル経済学賞に最も近い日本人と目されている宇沢弘文氏と辛口ジャーナリスト内橋克人氏による気合の入った対談集である。両氏は交々発言する。

 現在世界を覆っているアメリカ発の未曾有の経済危機を招いた原因は、パックスアメリカーナを根源にして、ミルトンフリードマンをリーダーとする「市場原理主義の跳梁を許したことにある。彼等の考えは儲けるためには何をやってもよいという思想であって経済学とは到底言えない代物である。


 パックスアメリカーナの体制に最も完璧に組み込まれてきたのは、日本であり、レーガン政権の頃から市場原理主義の毒水を飲まされ、日米時々の政権に都合の良い言説を流してきた日本の経済学者も同罪である。


 金融工学を悪用した各種金融商品は‘マネーの暴走・カジノ資本主義’となって社会への侵略・破壊の限りを尽くした。

 経済学は大いなる反省に立って、‘人々の幸せ追求の学問’という原点に立ち帰らねばならない。

 宇沢氏は「ケインズ=べヴァリッジの時代」の経済学(方向として正しい)の今日的展開として、「社会的共通資本」という概念を提唱する。教育、医療などの社会を支える根源分野は、儲けの対象としてはいけない「社会的共通資本」であり、それを安定、維持する仕組み、制度を作り上げていくことが‘新しい経済’の構築目標であり、それを支える‘新しい経済学’であるとされる。

 内橋氏も「共生セクターの強化、自給圏の形成」という言葉で同様の主張を展開している。

 もはや後戻り出来ないグローバル化した世界に身を置く今日、何を社会的共通資本として認知、合意するか、一概に定め得ない社会の選択を要することであろう。

 経済学、それに係わる経済学者は、象牙の塔に閉じ籠もることなく、多様な社会問題に対して積極的な発言を行うことが期待されている時であると思われる。

 アメリカではオバマ大統領が、日本でも民主党政権が、拡大しすぎた貧富の格差是正と雇用創出など社会の歪みを正し、「人間中心の社会」を取り戻すべく、一部‘規制の再構築’という社会的共通資本の取り組みに着手している。

 成果は除々であろうし、紆余曲折もあろう。しかし「解」はこれしかないのだ。

 本書と前後して読んだ2書、中谷巌著「資本主義はなぜ自壊したのか」、ジョセフ・ステイグリッツ著「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す」などは、本書で宇沢・内橋両氏が願っている新しい経済学の現れの一つではなかろうか。この2書にも拍手を送りたい。
 本音でぶつかる行動的学者・宇沢弘文氏への尊敬の念を更に深めた、一書であった 。

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『21世紀は女性の時代!』
佐々木菜穂子(風雅こまち)

 皆様お久しぶりです。
 ニュース等でお聞き及びと思いますが、首都圏では教師の大量退職に伴い新人を地方出身者に求めて見学のバスツアー を行うほどです。すでに職場の半数は20代という学校も増え、若手教師の出産も急増中。私も3年間で6校の産代を務めました。
この中で教育現場が次のように様変わりしていることを痛烈に感じました。

 1、集団行動が難しい男児の急増
 2、がんばらない、がんばらせない親子の急増
 3、昭和は歴史として学ぶもの
 このことは、もはや良い悪いと論じている場合ではなく、これが21世紀の日本の姿なのだと受け入れて、次のような対応を考えていくしかないというギリギリの気持ちで一杯です。
 1、学級の児童数を減らし家族的な居場所作りにシフトさせる。
 2、幼児教育の質の向上、義務教育の年齢の繰り下げにより親育てを充実させる。(コミュニティー・スクールの展開による地域の新しい仲間作り)
 3、親族、地域や会社による昭和型コミュニティーを平成版に進化させる。
(「ボランティア」「趣味」「修行」など精神性の高い活動、仲間作り)


 新しい命を産み出す、育てるには母性が必要になります。経済活動も命を繋ぐため。
 母性は女性だけのものではありませんが、競争や比較を重視してきた価値観が男性を重用してきたのに対して、いたわりや支え、スキンシップによる愛情表現などは女性が得意な分野です。今は、奪い合う戦争の時代から助け合う時代が求められています。

 すべての歴史がそうであるように、昭和から今に活かせる思考や行動を学び取れば良いのです。手がかかる男児も上手にあやす「母」の知恵。地域に根付く肝っ玉母さんこそが21世紀のヒーローです。

 地方自治には女性の視点を。
 財布の紐を締め省エネに徹し古い家を磨いて美しく暮らす。素直で元気な子供達を育てる。生きる喜びを分かち合うことが一番の価値。

 女性首長など当たり前。外交もコミュニケーション上手だが流されずに自分を主張できる女性が国際舞台でも期待されます。

 男女恊働により、女性が子育てに縛られずに能力を発揮させることで、21世紀は明るく暖かい時代になると信じています。

 

 

 “評論の宝箱”は、本号で第150号発行となりました。これも皆様のご支援のお陰と心から御礼申し上げます。
 何かといらだつことが多い最近の世の中ですが、”評論の宝箱“にご寄稿いただいて世の中に”物も申して"頂けたらと思っております。
 引き続いてのご指導・ご鞭撻を宜しくお願い申し上げます。
 なお、150号までの評論の宝箱のバックナンバー、及び、寄稿者・テーマの一覧を翡翠社ホームページ( http://www.d1.dion.ne.jp/~hisui/)に掲載いたしました。ご利用ください。
  今号も多面的なご寄稿有難う御座いました。(HO)




 
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