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■2012年7月1日号 <vol.205>

書評 ─────────────


・ 書 評  桜田 薫 『陰謀史観』 
            (秦 郁彦著 新潮新書)

・ 書 評  石川勝敏 『保守の使命』
            (杉原誠四郎著 自由社)      
     
・【私の一言】  矢野寛市 『三つの緊急提言』


 

 


2012年7月1日 VOL.205

『陰謀史観』
(秦 郁彦著 新潮新書) 

桜田 薫    


 日本の近代史における諸問題について、意見の異なる学者や有識者の間 で論争は絶えない。

私は、最近の中西輝政「大東和戦争の読み方(正論)」や藤原正彦「日本 人の誇り(文春新書)」を読んで少なからず洗脳されているが、この両氏 を含む一般にナショナリストと呼ばれる著名人の主張には共通の歴史観が ある。著者の秦は、各人それぞれの言説を支える陰謀史観を見出し、論点 の誤りを実証的詳細に指摘する。

陰謀論の中でも以下の逸話は、真偽は別として少なからぬ数の裏づけ文書 がある。それは「米国は日本の真珠湾攻撃が迫っていることを知っていた が、日本を敵視していたルーズベルト大統領は現地司令官に知らせず日本 をワナにかけて戦争に引き込んだ。コミンテルンの指示を受けた大統領側 近が仕掛けたものだ。(真珠湾謀略説には別のバージョンもある)日中戦 争につながる張作霖の爆殺は関東軍の河本大佐が行ったのではなくコミン テルンの指令を受けたソ連人工作員の仕業で、戦争の発端になった盧溝橋 事件は中国共産党の謀略だった」とする説だ。

これを事実と信ずれば、二つの戦争はいずれも相手の挑発によるもので、 日本は自衛のために止むを得ず戦争に巻き込まれたと主張してもよい。戦 犯になった日本の指導者を裁いた東京裁判の「邪悪な日本人の侵略戦争」 史観は間違いで、その後の米国による占領政策のなかで形成された日本人 の常識も修正されなければならない。

本書は、このような立場の論客として右翼的といわれる江藤淳、中西輝政、 小堀圭一郎、渡部昇一、西尾幹二、藤原正彦、それにやや過激な田母神前 航空幕僚長などをあげるが、多くは本職の歴史家ではない。各人それぞれ の論点も同じではないが、敗戦後の自虐史観を脱して日本 人の誇りを回復しようとしている意図は共通している。秦は米国の諸史料 などを分析し、これら『東京裁判史観』批判者たちの言論を「国際的に通 用しない自慰的で、証拠に乏しい」と切り捨てる。
秦に槍玉にあげられたナショナリスト学者たちは、その著述に多少の事実 誤認があるかもしれないが、それぞれ相応の論拠もあって故意に事実を歪 曲しているわけではない(もっとも田母神は思い込みが強すぎて間違いが 多いように思う)。

政策論として戦後の教育の中で日本人の失われた精神的復興を願う目的は 明らかで、歴史的真実の裏づけが弱い点があるとしても全体の主張を変え る必要はないだろう。事実は一つで変えようがないが、誰であっても主張 の論拠とする文書や記録はすべて本物とは限らないし、引用する資料の量 と質にも限界がある。特に個人の著作には思い違いや意図的なウソもあり えるから、それに依存した論考を信じるかどうかは結局のところ好みの問 題になる。

本書は2,300万部売れたと帯にあるが、歴史と陰謀論はそれほど国民の関心 を集めるテーマということだろう。米国人が書いた真珠湾謀略本がこれほ ど多数あるとは驚きだ。

本書には根拠の薄い陰謀論を排除する目的があるが、私には現代史の勉強 になって面白かった。

 


『保守の使命』
(杉原 誠四郎  自由社)

石川 勝敏    
著者 東大修士卒 城西大学、武蔵野大学、帝京平成大学教授、「新しい 歴史教科書をつくる会」会長

著者は平成23年8月に「新しい歴史教科書をつくる会」(以下つくる会と 略称する)の会長に就任した。就任にあたり「つくる会」の社会的使命 と現状を解説したものがこの図書である。要点を記載します。

保守とリベラリズム、市民運動、左翼との対立点は何か。保守が国家社会 に対する責任感を持って発想するのに対し、リベラリズム、市民運動、左 翼にはその様な責任感は見当たらない。保守自体は何かを主張するもので はない。イデオロギーの危険を説くに過ぎない。

平成8年に中学生の教科書大手5社歴史教科書に揃って、従軍慰安婦問題が 記載され、論争が始まった。これに対抗して活動をはじめた「つくる会 」が話題になったのは平成9年であった。当時「つくる会の教科書は出 来たが、実際に学校で採択されたのは極わずかであった。「つくる会」 の努力は継続された。

平成18年に、教育基本法が改正され、「国を愛する心」や「公共の精神」 が強調されたにも拘わらず教科書大手5社の公民教科書は、愛国心や公共 精神について何も記載されなかった。また、大手5社の公民教科書には外 国人の参政権は差別の問題だと記載されている。 

「つくる会」の作成した公民教科書は愛国心や公共の精神の大切さを説 いたが、公立学校での採択はゼロで、私立を含めての採択率は0.07%と いう結果であった。

教科書市場は左翼独占の場になり、まさに日教組状態になっている。こ の様な状況では、次世代の国民教育に大きな問題を残す事となる。
中国は1985年(昭和60年)に侵華日軍南京大屠殺遇難同胞記念館を建て 反日教育を続けている。南京事件は捏造である事が判明しているのに何 故非難を続けるのか問題である。国家資本主義の矛盾を転嫁せざるを得 ない国内事情に依るものであろうが、共産主義にのみ責任を追及するの は不十分でそれ以上に中国の古代から引き継いだ「易姓革命」の政治理 念に帰して考えるべきであろう。

吉田茂を大宰相と評価する人は多いが、真珠湾の騙し討ちの原因を作っ た2人の外交官をともに外務次官として処遇し、1人を戦後初めて天皇が マッカーサーに面会した時に通訳として立ち会わせ、もう一人をサンフ ランシスコ平和条約締結時に随員として立ち会わせた事は歴史を曲げ、 外務省の責任を隠蔽し、真珠湾の騙し討ちの事実を隠蔽した事になろう。
終戦時の総理として果たした責任は多とするがアメリカからの再軍備要 請を警察予備隊として処理した事や講和条約締結後の日本国民としての 戦争総括をしなかった事が議論の対象となるだろう。

教科書問題と中国の反日教育は今後の重大問題で皆様にもご一読の上お考え頂きたい。

 

 

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『三つの緊急提言』
矢野寛市 

  
 一つ目の緊急提言は放射線に関するものである。
福島第一原発の事故が起きた後、政府は放射線の許容量を当初年間20ミリ シーベルト以下と定めたが、その後世論に押されたのか年間1ミリシーベ ルト以下と変更したため色々な問題が起きて容ならざる事態になっている。
政府はICRP(国際放射線防護委員会)が決めた基準に従って決めてい るというであろうが、ICRPが出している指針を正確に理解していない 事から来るミス判断である。

 50年前にICRPが採択したLNT仮説(無閾値直線的仮説)は、“ど んな微量の放射線でも人体に危害を加える”というものであったが、その 後における遺伝子学者などの研究により”人体には二重の遺伝子修復作用 があり、少なくとも自然放射線の一万倍までは人体に無害であり、自然 放射線の100倍程度の放射線はむしろ健康を増進する“ということが判明 してきている。

 そのためICRPも現時点では"平常時においては年間1ミリシーベル ト以下とするが、緊急時においては年間20ミリシーベルト以上100ミリ シーベルト以下の範囲内で各国で決めるように“といっている。政府は 速やかに放射線の許容線量について再検討すべきである。

 二つ目の緊急提言は健康と医療に関するものである。
日本人の平均寿命は計算上は世界一となっているが、実情は病人大国と いってよく、医療費も36兆円と税収に匹敵するほどに膨らみ、財政の 一大悪化要因となっている。

 病気の大半はガン、脳疾患、心臓疾患などのいわゆる生活習慣病であ る。これらの病気は食生活、運動、ストレスなどの生活習慣が原因であ るので、西洋医学の対症療法では限界があり、いたずらに医療費を浪費 している感がある。

 高齢になっても生活習慣を改めることにより体質改善は可能であるが、 やる気と実行力がネックとなっている。ここでは国民皆保険制度も裏目 に出ている可能性がある。

国民一人一人の自覚を促し、やる気を引き出すためには、生活習慣病に ついては健康保険の適用を外すとか、医師を全員国家公務員にするなど の荒療治が必要かも知れない。

 三つ目の緊急提言は、農業の問題である。

 ビタミンやミネラルなど人体にとっての必須栄養素は専ら野菜から摂 取するわけであるが、化学肥料を使うようになってから、土壌が変質し てビタミンやミネラルの含有量が少なくなっている。50年前に比べ半 減しているとする説もある。また、野菜の種子も輸入したものではなく、 在来種を使うべきだといっている医師もいる。

 要するに野菜を食べているつもりでも、十分に栄養を摂取しておらず、 これも近年病気になる人が増えた一因であるとされている。最近、スー パーにも有機野菜のコーナーが出来ているが、未だ種類は少ない。ビタ ミンやミネラルの含有量を考えれば有機野菜は決して割高ではない。政 府は自然農法による農業を推進するために化学肥料と農薬の使用を禁止 するなどの思い切った手を打つ必要があるのではないか。

 

 

 
過日の日経朝刊に「育英報国の精神を」という記事がありました。
内容は、「昔は、根津嘉一郎が「社会国家の為に尽す偉大なる人物を養
成する理想的な学校を」という理念の下で、7年制高等学校を作り、数
多くの逸材を生んだ等という歴史もある。しかし、昨今は大規模に利益
を社会に還元しようとする事業家はそう多くないのではないか。

海外の事業家は成功者の証として慈善事業を手掛ける伝統が今でも生き
ているが。」といったことで、もっと、育英報国の精神を持つべきであ
るという主張だと思いました。

日本が今後とも安定的に発展していくためには、人材の育成が不可避で
あり、育英報国の精神をもっと高める必要があることは同感であり、
また教育の在り方を考え直すべき時期とも思います。

今号も貴重なご寄稿をいただきありがとうございました。(H.O)


 





 
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