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■2011年3月15日号 <vol.174>

書評 ─────────────

・書 評  石川 勝敏    『昭和金融恐慌史』
              高橋亀吉、森垣 淑著 講談社学術文庫

・書 評  丸川 晃     『肥満と飢餓』
              世界フード・ビジネスの不幸のシステム
              ラジ・パテル 著 佐久間 智子訳 作品社

・【私の一言】 伊藤友美  『つぶやき』


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2011年3月15日 VOL.174


『昭和金融恐慌史』
 (高橋亀吉、森垣淑著 講談社学術文庫)  

石川 勝敏    



著者 高橋亀吉は1891年生まれ 早大商科卒 拓殖大学教授 1977年没森垣淑は1925年生まれ 東大法学部卒 拓殖大学教授・駿河台大学教授アメリカの大恐慌についての著書は多いが日本の昭和金融大恐慌についての著書は少ないと聞く。私は銀行制度、制度運用の歴史についてあまり知識がなかった。この著書を通じて明治、大正、昭和初期の銀行の実態について一応の知識をえた。大正9年の恐慌から、昭和2年の銀行大恐慌に至るまでの救済措置と結果について、関東大震災による震災手形救済問題も含めて銀行名を挙げ一般企業名をあげ、大枠の数字も示しながら記述している。

第1次世界大戦で我が国経済は質量ともに大発展を遂げたが、大正9年に戦後の経済縮小期に入った。この時、不良企業の整理を行わず、過度の投機に走り、日銀も含めて金融は一時的弥縫策に終始した。当時の銀行は財閥、大手企業の資金調達部門的性格が強く明治以来の問題を抱えていた。台湾銀行や朝鮮銀行は国策遂行銀行でもあり、台湾銀行と鈴木商店との癒着、華族銀行と言われた十五銀行と松方政商グループとの癒着にも大きな問題があった。日銀はまだ力が弱く政府の指示に従うだけであった。 政党政治の争いも強烈であった。

大正12年に関東大震災が発生し我国産業に大打撃を与えたが、同時に円-ドル為替レートに国際的投機が発生(上海筋が大きい)し、為替は急激な乱高下を繰り返し、日本経済全般にダメージを与えた。
前時代的銀行制度の銀行経営は破たんの限界線に近ずいていた。こうした状況にあって、世界各国は金本位制に復帰しつつあり、わが国も金本位制復帰に意見が強くなった。しかしそのためには震災手形の整理が必要であった。
震災手形処理法案が国会に上程されると、政争の道具とされ、その実情が国民に衝撃を与え、片岡蔵相の失言を契機に銀行の取り付け騒ぎに発展した。

昭和2年3月。

当時の日本の銀行は産業発展に伴う資金需要のため設立されたのではなく、明治維新の秩禄公債の資金化のために設立されたものである。その銀行が事業を始め拡大したため、銀行が特定企業との癒着を断つには昭和金融大恐慌までの経過が必要であったと言える。
大正9年の銀行恐慌の時に、銀行制度を改め、不良債権と不良事業の整理をすれば、昭和金融恐慌は避け得たともいえるが、これは後知恵であろう。
3月の取り付けは収まったものの、台湾銀行が多くの震災手形を保有し経営が悪化していた。台銀はかねてより鈴木商店に多額に貸付をしており、鈴木商店の経営悪化で銀行の経営も悪化した。台湾銀行は3月27日に鈴木商店との絶縁を決意した。この報道が4月1日に報道され取り付け騒ぎが始まった。17日に台湾銀行、近江銀行、21日には十五銀行が休業した。若槻内閣総辞職、田中内閣は高橋是清を蔵相に任命し処理に当たらせた。高橋は3週間のモラトリアムの勅許を発令し銀行の支払いを停止し、現金供給に尽力した。モラトリアム前の4月22日、23日は全国の銀行が休業した。モラトリアム終了後取り付け騒ぎは収まった。
この後不良債権企業、不良債権整理のなかで中小の銀行が多数倒産、吸収合併され銀行界の近代化が進んでいく。
大正8年2069行あった銀行は昭和7年には663行になっている。

恐慌後の新銀行法には

1.最低資本金と法形態の制限
2..利潤の強制積立
3.銀行重役の兼業の原則禁止
4.当局の銀行検査の厳格化等の諸項目が含まれている。
明治維新後、政府は産業育成をいろいろ行なったが近代的な銀行は昭和になるまで成立しなかった。

昭和金融恐慌の実態、当時の銀行制度の実態を知る上で貴重な一冊である。ご一読をお薦めする。
追記 鈴木商店自身は売上がGNPの10%を超える総合商社でありこのときに清算されるが持ち株会社は60社の内健全であった企業はいまも産業界で活躍している。-
神戸製鋼、帝人、IHI、サッポロビール、豊年製油など。

 

『肥満と飢餓』
世界フード・ビジネスの不幸のシステム 
(ラジ・パテル著 佐久間智子訳 作品社)

丸川 晃   


本書は、『肥満と飢餓』("Stuffer and Starved")という主題名よりも、副題の『世界フードビジネスの不幸のシステム』("the Hidden Battle for the World Food System")の方が、その内容に相応しい題名だではないかというのが、読了後の印象である。
即ち本書は、主題名から推して、アグリ・ビジネスの主として『消費面』を巡る諸問題の分析では?、という期待で一読したところ、むしろこのビジネス全般にわたり、グローパル・スケールで悲惨ともいえる実態を網羅的に取上げた結果、議論の焦点がやや曖昧化している。

さて、イギリス生まれで、WTOや世界銀行に勤務した後、アメリカでジャーナリストとして活躍しているという著者によって、先ず世界のアグリ・ビジネスの構造は、『砂時計型』だという巧妙な表現が示される。即ち、砂時計の両端の膨らみは、無数の農業従事層およびその最終製品の消費者層に該当し、真中のクビレ部分が少数の食品加工・流通業者であるとする。
著者が前歴の経験や豊富な資料などを駆使して論じている内容は、先ず、砂時計の上部の膨らみに当る食糧供給分野で、インドやメキシコ、南アなどをケーススタディとして、土地所有の集中、借金付けや『緑の革命』の失敗などによる農村の疲弊、農民の自殺原因などを詳細に描写している。

次いで、砂時計のくびれ部分に当るフード・ビジネスの実態につき、例えば世界の小麦貿易の70%は6社、包装紅茶の98%は1社で支配されているなど寡占化が著しいこと、肥料、農薬、そして遺伝子組み換え種子の普及などの張本人である寡占的化学企業も、開発途上国の農業を危機に陥れているとして俎上に挙げている外、キューバの農業革命もほんの少し触れている。

そして次ぎに、突然、前後の脈略不明な形で、ブラジルの大豆ビジネスおよびアメリカのスーパーマーケットの歴史が登場する。恐らく前者は、フード・システムの独占的供給体制を巡る諸矛盾、土地所有構造の不平等性、農業労働者の奴隷的酷使、森林破壊による大気汚染などについての典型的なケース・スタディであろう。また後者も、フード・システムの最終流通面に関する問題を巡るケース・スタディであり、第一次世界大戦時に、アメリカで食料品価格高騰した結果として生まれたもので(当時、スーパーマーケットのシステムが特許になったというのは初耳)、『この結果、食べ物の生産者と消費者との接点は、商品に貼られたラベルのみになった』と筆者は嘆いている。

本書の結論として強調されているのは、世界的に見れば、飢餓も肥満も主として貧困層で増加しているため、現状のフード・システム改革に必要な取組みも、グローバル規模の社会改革を必要とするとして、理想的ではあるが、やや抽象的で、実現は難しいとみられる10項目の条件を挙げている。
しかし、今更ブラジルの大豆ビジネスを縮小しろとか、スーパーマーケットを禁止しろとかできる訳でもないので、われわれがやれることといったら、せいぜい食糧の生産者と消費者とが、共同の利益を目指して、何らかの形で手を結んでいくことぐらいではあるまいか。

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『つぶやき』
伊藤 友美



今の旬といえば小沢さんの政治とカネ問題。

毎日毎日、朝のワイドショーでこの問題で管さんの対応がどうだとか、管さんの小沢さんに対する処分に不服の議員が造反しただの、ずーっとやっている。

どうでもいいじゃないですか。

裁判所がそのうち白か黒かはっきりさせます。裁判所はそのためにあるんですから。有罪となったときに小沢さんは議員を辞めればいいんです。
そんなことより政治家の皆さんは自分の職責を果たしていただきたい。
すなわち立法府である国会で法律を成立させ、それを速やかに施行して国民の生活をまもるのがあなた達の仕事でしょ。
政党間で、または政党内で足を引っ張り合いまったく情けない醜態を繰り返していることに私たち国民は怒っています。
もう誰でもいいから、ちゃんとやってくれ!と叫びたい。
もうそういう事態じゃないんです。そんな下らない事に時間を費やしている暇はないんです。
今戦う相手は少子化が進んでパイの小さくなっていく国内ではなく外国です。一丸となってワールドカップを戦わなくちゃ。

グローバル化はどんどんスピードアップして民間企業はみんな外を向いています。きっと民間企業は厳しいビジネスの世界で生き残るため優秀な人材を集め頑張っているんだね。
新聞で外国で日本の企業が外国に進出したとか、外国の公共事業をコンペで勝ち取ったとかいう記事を読むと胸が熱くなる。
頑張ってる人たちを日の丸振って応援してあげなくっちゃ。
政治家の皆さんも全力で日本を外国に負けない強い国にするべく頑張る姿を見せてほしい。
そぉそぉ、マスコミも下らない事をさも重大そうに報道して、無知な国民を扇動するのはやめて、外国で頑張ってる日本人の業績をもっと称えたりしてほしい。
そもそもニュースは悪いことが多すぎる。新聞だけでなくテレビのニュースでも外国におけるビジネスの世界での日本の企業とか個人の勝利をもっと大々的に伝えたらいいのに(もちろん国内のいいことも報道してほしいけどね)。

 そうしたら一般の(知識階級だけでなく)国民の意識も上がって世の中が少しは明るくなる気がする。

サッカーの国際試合で日本が勝利したときの渋谷に集う若者の盛り上がりと同じようなことがきっと起きるよ。
何だかんだ言って、今の若者にも愛国心はあるんだから。
兎に角、みんな自分の仕事に矜持を持って全力でやろう。
特に政治家の皆さんは選挙で選ばれた国民の代表なんだから、皆のお手本になるべく立派な人でいて欲しい。
ほんと、もうこれ以上ガッカリしたくないよ。

でも、立派な人っていうのは、清廉潔白な人ってことじゃないよ。よく、政治家や官僚や企業の社長さんが女性問題などでスキャンダルになって失脚させられているけど、まったく下らないよね。
オフィシャルとプライベートは別に考えるべきだよ。
例えばとっても優秀で仕事が飛びぬけてできるけど、既婚者なのに女性が大好きでいつもガールフレンドがいる男と真面目一本やりの仕事のできない人がいたとする。善悪は場面により変わるけど、どちらが世の為、人の為になるだろう。
何でも同じどんぶりに入れて判断しないで、評価すべきところを評価したほうが得だよ。

とにかく社会人は社会人としての能力を最重視しよう。
優秀な人に社会貢献してもらえなくなるなんて損失でしょ。
そもそも女性スキャンダルなんて、大多数の男性陣は羨ましいとは思っても大罪だなんて決して思ってないと思う。
女性だって所詮ヒトゴトだし、そんなに深刻に憤慨してるなんて私は聞いたことがない。だからこの手のスキャンダルというのはマスコミの金儲けのためだけって感じがする。
小粒でみんな平等で平凡より、欠点があってもピカッと光ってるほうが男として魅力的だし、そういう人は当然モテルから「スキャンダルは男の勲章だ、何が悪い」と記者会見で言ってしまえば結構みんな受けて、そりゃそうだ!(拍手)となるかも。

まだまだ言いたいことは沢山あるけど、取り合えず
「日本人として矜持をもって生きる」なう

 

 

取り急ぎ大地震のお見舞いを申し上げます。
皆様のご無事を祈念申し上げます。
指桑罵槐(しそうばかい)という言葉があります。これは「桑を指して槐をののしる」という意味ですが、具体的には本当に批判したいのは槐ですが、それがためらわれる場合にあえて桑を批判し、槐の間接的批判とするということです。外交戦略として使っている国もあるという指摘もあり有名になりました。
この言葉は、中国の歴史に基づく様々な計略である兵法36計の 併戦の計に記されています。この兵法36計は、人間心理を巧みに利用した戦略が多く記載されており、現代の複雑化した社会におい ても役に立つことが多いといわれています。我々日本人も改めてこの兵法を勉強し世界に伍していくことが必要な時代のようです。
 本号も時宜を得た、多面的なご寄稿をありがとうございました。(H.O)






 
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