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2005年2月1日 VOL.27

■書評
・『武士道』― 片山 恒雄
・『ゴッホの手紙』― 矢野 寛市
 
【私の一言】『民族の座標軸』 川井 利久

 

 

『武士道』
著者:新渡戸稲造  訳矢内原忠雄  出版社:岩波文庫  

片山 恒雄  
 日露戦争が終わって、米国のルーズベルト大統領の斡旋により、ポーツマスで講和会議が開かれることになった。当時元老であった伊藤博文は、大統領のハーバート大学時代の学友であった政治家金子堅太郎に講和会議の下交渉をさせるべく米国に派遣した。そのとき金子に土産として持たせたのが、日露戦争の始まる5年前に著わされた「武士道」であった。大統領はこれを読んで非常に感激し、ぜひ子供たちにも読ませたいといってあと5冊の追贈を頼んだという。
 日本の武士道は、古代からの日本神道の精神と儒教思想をとり入れ、封建時代に武士階級の間で遵守されてきた精神規範であるが、明治3年の廃刀令以後は次第に廃れてしまった。しかし、その精神は、日本人の誇るべき固有の道徳基盤から成り立っている。
 昨今の目を覆いたくなるような日本人の地に落ちた道徳観と精神の荒廃を見るにつけ、なんとかこれを回復するために残された途はないものかと考えていたとき、本書に出会った。義、勇、仁・惻隠の情、礼、名誉、忠義、克己など武士道精神の根幹をなす言葉にそれぞれ独立の章を充て、説かれた精神は単に武士階級の間でのみ通用したものではなく、広く日本人全階層にわたり浸透していた魂の根源ともいうべきものであり、現代においてこそ必要不可欠な倫理観、道徳観であると思う。 まさに、いまの日本人皆読の書だと思うが、残念ながら、昭和13年に矢内原忠雄氏(元東京大学総長)によって翻訳された(原著はなんと英語で書かれていた!)日本語がやや固すぎて、読みづらい。あえて新訳を期待する所以である。




『ゴッホの手紙』
  ◇上巻   ベルナール宛 エミル・ベルナール編
  ◇中、下巻 テオドル宛、J.V.ゴッホ−ボンゲル編

   訳:硲 伊之助  出版社:岩波書店

矢野 寛市 
ベルナールは、ゴッホが親しくしていた画家であり、また、テオドルは、ゴッホの弟である。
私が、特に印象深く思ったのは、次の諸点である。
(1)多少専門的になるが、ゴッホは、レンブラントの「調子」と、ドラクロワの「色彩」に関心を持っていたが、「調子」と「色彩」は、両立しないことが分かったので、ゴッホは、自分の好きな「色彩」に重点を置いた絵を描くようになった。
(2)ゴッホは、日本の浮世絵などに非常に関心を持ち、色々影響を受けたと思われる。
(3)ゴッホは、絵が売れないため、弟のテオに大変迷惑をかけたことを申し訳なく思っていたが、自分の絵には自信を持ち、将来必ず売れると確信を持っていた。
(4)ゴッホは、死の直前にも、名画の模写をしたりして、勉強を続けていた。
それにしても、大変な努力家であったゴッホが、若し、ピカソのように長寿であったら、どんな絵を描いたであろうかと思わずにはおられない。






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『民族の座標軸
川井 利久
年の暮れになると、猫も杓子もクリスマスと騒ぐ。キリスト教でもないのにケーキだ、プレゼントだと空騒ぎをする。
やれバレンタインだホワイトデーだと商店に押しかける。
年中何かにかこつけたコマーシャリズムに踊らされて一年が空しく過ぎて行く。意味や精神はどうなっているの?
この国民ほど煽動にのりやすい民族も少ないのではないか?
大きくは明治維新からの西洋かぶれや敗戦後のアメリカ一辺倒。多民族が乗り合わせたバスで日本人の乗客の耳元で皆さん降りられるそうですと囁くと見境なく降りるというジョークがあるそうである。小器用に時代の変化に乗って物質的な繁栄は得ているが、精神的なバックボーンはどうなっているのだろうか?ワッショイワッショイと御神輿は景気よく担ぐのは大好きだが、御神輿の行く先にはあまり考えない民族性であるようだ。昭和の初期からのファッシズムの台頭に安易に乗って、悲惨な戦争を引き起こした過ちについて、次世代への引き継ぎは充分出来ているのだろうか?
この民族を見ていると、また強力な煽動者が出てくれば、安易に見通しなく御神輿を担ぐ危険を感じる昨今である。




 
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