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■2007年10月1日号 <vol.91>
書評 ─────────────


・書評  板井 敬之  『「失敗学」事件簿』
・書評  矢野 寛市  『画商の思い出』

【私の一言】岡田 桂典 『シンガポール便り(13)──シンガポールは元気です』

 


2007年10月1日 VOL.91


『「失敗学」事件簿』
著者:畑村洋太郎    出版社:小学館文庫
    

板井 敬之  


  著者の畑村洋太郎氏は、東大工学部機械工学科の教授を経て現在工学院大学教授。96年頃から“失敗学”を提唱、NPO法人「失敗学会」を発足させ初代会長を務め、失敗学関連の著書も数多く出している人である。
 失敗学とは、「失敗を直視して積極的に学べば不必要な失敗を重ねることなく、創造につなげられる」というもの。この本は06年に出された単行本を文庫化したもので、失敗学のアウトラインや組織の持つ“業(ごう)”のようなものについて、コンパクトに書かれている。
 JR西日本の福知山線脱線事故、みずほ証券の誤注文事故、東電の原子力トラブル隠蔽事件、三菱重工長崎造船所火災事故等々多数のケースを取り上げ、その原因を明らかにし、本書の執筆時点で明らかになっていることや、著者の考え方を追加するという手法を採っている。たとえばJR西日本の事故について、マスコミ報道では「同社の企業体質(利益重視・安全軽視)による」としているが、実は信楽高原鉄道事故を総括できていないこと(同社は責任なしとして、遺族との係争が長引いた→03年敗訴)が大きいとしている。 
 一方、JR東日本は1962年の三河島事故を教訓に、“事故の展示館”を設け、毎年の新入社員全員に事故に遭った時にどう判断・行動するかを体験させている由。後半部分で「失敗学のまとめ」と称する要約も記載してあり、大変参考になる。  
以上

 
『画商の思い出』           
著者:
A.ボラール 小山敬三 解説:瀬木慎一 
出版社:美術公論社
 
矢野 寛市 


  セザンヌなどの肖像画のモデルとして知られているアンブロワール・ボラールは、実は印象派の画家達にとって大恩人ともいうべき人であった。
 ボラールは幼少の折から繊細でシャープな色彩感覚を持っており、早くから印象派の絵に興味を持ち、画商になってからも印象派の絵しか扱わなかった。ボラール以前にも印象派の絵を扱った画商はいたが、
1、世人に最も疎んじられていたセザンヌとゴッホの初めての個展を手がけ、困窮していたゴーギャンの絵の販売を一手に引き受けたこと
2、ボラールが扱った画家は70人にも及ぶこと
3、ボナール、セザンヌ、ルドンなどに石版画を描かせ、詩人や作家の本の挿絵として出版したこと
4、セザンヌ、ルノワール、ドガなど孤独な画家と親密な関係を続け、これらの画家について本を書いたこと
5、晩年はヨーロッパ、アメリカなどで印象派の画家について講演を行ったこと
6、セザンヌやルノワールの肖像画のモデルになったこと
など、印象派の画家に最大の貢献をしたといってよいであろう。
 一方、当初数フランとか数十フランで買えた絵がボラールの晩年には百萬フランにも達したので、ボラール自身も莫大な財産を築いた。ボラールは居眠りしている間に客が勝手に値を吊上げたと言っていたが、セザンヌのモデルをしていた時居眠りして椅子から転げ落ち、セザンヌに“仕様がない人だな。林檎は動きますかね。”と言われた話は有名になっている。500ページもあるこの本にはこのような逸話がぎっしり詰まっている。
以上

 
 
 
  

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

『シンガポール便り(13)──シンガポールは元気です』
岡田 桂典

  シンガポールは元気です。世界一の大展望観覧車が来年3月完成します。
来年秋には市内中央部でF1のカーレースを開催します。また、カジノを含
む5−6千億円の大観光エンターテインメント設備を2箇所に建設中です。

 ここの政府はたいへん利口です。F1も大観光設備も外国の投資です。来年から、現在一千万人の外国人観光客はますますあふれかえり、自国のおカネは使わなくても、政府も国民も大儲けするのです。

 さて日本、人口が減り続け,地価は下がりっぱなしの地方の疲弊が心配です。国におカネはないのですから、自分で“儲かり、稼がなければ”なりません。発想を変えるのです。お客(人口)が減ったのなら外国から呼ぶ、お金がなければ外国に投資させる、金儲けの知恵と能力はあまりないでしょうから、経営は外国のプロにやらせれば良いのです。大繁盛は請け合いです。

 何をやるか、まずカジノを含む大観光設備がお勧めです。明るく優雅なホテル、緑に包まれたスポーツ施設群、優雅な曲が流れるバー,世界中の料理が楽しめるレストラン、世界一流の芸人が演じるショウ、これはまさに大人の「憩いの場所」なのです。四季があり、自然が豊か、メシも上手い日本で“人生を楽しめる”とあれば内外からお客が殺到します。

 考えてみてください。日本には本当の“大人の遊び場”がありません。中国、東南アジアのお金持ち連中にとっても、時間を越えてを楽しめる“おカネの使い場”がないのです。カジノと聞くとすぐ“反対”とエセ道学者どもが騒ぎますが、世界のカジノの入場者の八割は中国人で、若い連中はこういうところにはまず来ませんから心配はありません。

 福岡市は韓国ソウルから飛行機で一時間、釜山からスピード船で3時間、去年は港経由だけで20万人の韓国人がやってきました。温泉大好き、買い物はデパートで日本人の4倍は使う大切なお客なのです。

 市内にヤフードーム、隣接して1000室のホテルがあり、ここでもアジアの客が毎年20%増えています。私の話が信憑性をおびてきますね。ところがこのドーム・ホテルの一帯をシンガポールの政府の投資機関がこの春1000億円で買い取りました。目の付け所、頭の中身が違うのでしょう。


∴∴∴∴《編集後記》∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴

 相変わらず暑い日が続いておりますが、お元気でしょうか。
 新藤兼人監督は95歳の現役ですが、働くことが元気の秘訣だそうです。特にいろいろ考えることが若さの保持に不可欠であるとか。最近の日本人は、成熟しすぎて考えなくなっているということでしょうか。「評論の宝箱」のご寄稿で元気をぜひ保持していただきたいと思っております。
 今号のご寄稿の方は、いずれも10回以上ご寄稿を頂いております。ご多忙のところ本当に有難う御座いました。

 所で、最近、システムの不具合により「評論の宝箱」の自動配信が上手くいっていないケースがあります。皆様、毎月1日及び15日に記事が自動配信されているでしょうか。
 自動配信されてない場合、ご希望があれば自動配信される手続きを代行いたしますのでご連絡ください。
 なお、翡翠社のホームペイジの「評論の宝箱」から直接自動配信の登録をおこなうこともできますのでご案内申し上げます。(HO)








 
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