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■2010年6月15日号 <vol.156>

書評 ─────────────

・書評    浅川博道 『ダウンタウンに時は流れて』
             多田富雄著 集英社刊

       船渡尚男 『とう小平(ダン・シャオピン)秘録』
            伊藤 正著  産経新聞出版  

・【私の一言】幸前成隆 『五美を尊び四悪を屏ける』




2010年6月15日 VOL.156


『ダウンタウンに時は流れて』
(多田富雄著 集英社刊)

浅川 博道   


今年は国民読書年である。国から読書離れを指摘されているようで、正直とまどいがあるが、この本との出会いは、読書の醍醐味を改めて教えてくれる。珠玉の一冊、と評して過言ではない。

著者の多田富雄氏は、世界的な免疫学者。若き日、オリンピック景気に沸く日本を離れ、コロラド州デンバーの研究所に留学するところから物語は始まる。舞台は、著者が毎日のように通ったダウンタウンの場末のとあるバーである。

そこで繰り広げられる貧しい人たちとの豊かな出会い。「兄弟よ」と呼びかけてくる温かい友情。喧騒のフロアーに流れる名曲《ダウンタウン》や《テネシーワルツ》のメロディ。西の空にはるか連なるロッキー山脈の景観。回想の魔術が現出させる著者の「青春の黄金の時」である。

物語は移り、デンバーで出会った親友の死、叔母の死、義弟の死、母の死、小林秀雄の死、孤独な大免疫学者の死に直面する。著者自身も10年ほど前に脳梗塞で三日三晩死線をさまよい、声を失い、半身の動きを失う。


ここから死が主要テーマとなるが、著者は多くの死を、迫りつつある自らの死と重ねる。しかし、死地を脱し、書きつくせない悩み、苦しみの末に到達した心境は「死の中から生を発見した」ことである。この本は、失うことによって初めて得るものがある、という肯定の書でもある。

言葉がしゃべれなくても、半身が動かなくても、日々創造的な著作活動を続ける類稀れなる知性との出会いを、心から喜びたい。

『とう小平(ダン・シャオピン)秘録』
(伊藤 正著  産経新聞出版)

船渡 尚男   


著者は共同通信、産経新聞を通じて、香港、北京駐在が長く、76年および89年の天安門事件を現地取材した唯一の西側記者。
とう小平(ダン・シャオピン)は党中央から3度失脚そして復活を遂げた稀有の人物。毛沢東という絶対的な存在のもとでの社会主義保守路線と改革近代化路線との激しい対立と権力闘争の40年間が生々しくドキュメンタリータッチで記述されている。

これに比べると我が国の権力闘争は子供の争い見たいなものである。
毛沢東はとう小平(ダン・シャオピン)を中国の国家マネ―ジメントに不可欠の人材として終始評価していた。失脚はしても党籍を剥奪されなかったのそのためである。とう小平(ダン・シャオピン)は毛沢東の威光をバックにして「権威主義的政治(抑圧)と市場経済化」によって文化大革命などによってもたらされた深刻な事態を克服し、共産党独裁の正当性を再構築し政治統治の安定化を粘り強く推進した。

このプロセスにおいて永年の同志である胡よう邦そして趙紫陽を切り捨てざるをえなかった。今日に至る高い成長を成し遂げた最大の功労者である。
しかし、この路線の影の部分は決して小さなものでない。党および官僚の腐敗体質、貧富の格差の拡大社会および経済活動におけるモラルの著しい欠如 - 大気汚染、水質汚染、食品汚染など - がある。
中国の前途は楽観視できるとは思われない。
 

 

ご要望にお応えして、ジャンルを定めない自由評論コーナ ー【私の一言】を設けました。 評論の評論はもとより、社会評論等自由なご意見をお届けします。

五美を尊び四悪を屏ける
幸前成隆

「五美を尊び、四悪を屏ければ、もって政に従うべし」(論語・堯曰)。五つの美徳を行い、四つの悪行をしないようにしなさい。孔子が、子張に教えられた言葉である。

子張が、孔子に、いかにすれば政治に従事することができますか、と尋ねた。
孔子、答えて曰く、「五美を尊び、四悪を屏ければ、もって政に従うべし」。

五美とは何か。孔子曰く。「恵して費さず。労して怨みず。欲して貪らず。
泰にして驕らず。威ありて猛からず」。
一つは、恵して費さず。民の利とする所にそって利益を与えれば。恵して費やさずにすむ。二つは労して怨みず。労すべきことを選んで労働させれば、怨みは生じない。三つは、欲して貪らず。欲望を仁に向ければ、貪欲にならない。四つは泰にして驕らず。相手の衆寡大小にかかわらず、常に泰然としてあなどらない。五つは威ありて猛からず。衣冠をととのえ、儼然としておれば、自ずと畏敬する。この五つを、行いなさい。

四悪とは何か。孔子曰く。「教えずして殺す、これを虐と謂う。戒めずして成るを視る、これを暴と謂う。令を慢くして期を致す、これを賊と謂う。猶しく人に与うるに出納の吝なる、これを有司と謂う」。
教えもしないで殺すのを、虐といい、あらかじめ警告しないで成績をせまるのを、暴といい、命令をゆるくしておいて期限を厳しくするのを、賊といい、どうせ与えるのに出納をしぶるのを、有司(小役人根性)という。この四つを、してはいけません。

 

 

人間も動物である以上、上昇志向を持たねばならずこれを怠ると淘汰されます。つまり、適者生存です。このためには上昇志向をもつハングリー精神がいる。
しかし日本の現状は、「8位入賞!」「メダルは逃したが5位入賞!」……おめでとう、よくやった!と言うような記事がでるような状況にあります。このままでは日本は衰退化必死ではないでしょうか。政権交代をきっかけに、新政権には日本人が活力気力取り戻す施策を取って貰いたいと思っていますが。

今号も多面的なご寄稿有難う御座いました。(HO)




 
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